そして、いま熊本や鹿児島を襲っている大雨も、雨雲から降下したものですが、もとは南太平洋の海水が暖められて雲となり、低気圧となり、それらが北上して温帯の日本で降雨をもたらしているものです。
大本は、すでにかなり深層まで温められてしまった「過熱海水」の蒸発が、本質的な原因となっている。
つまり、コロナに限らず21世紀に襲いかかってくるパンデミックと風水害は、同じ「地球環境変動」という共通原因が生み出した「鬼子の兄弟」のようなものなのです。
そして今後、複合被災による最大被害が発生するだろうと予測されているものにほかなりません。
予想される「ヒューストン壊滅」リスク
ハリケーン+コロナのダブル打撃
私たち、グローバルAIコンソーシアムのタスクフォースが最も懸念している複合災害は、実は日本ではなく、米国にあります。
上記と同様、深層海水まで十分温められてしまった海水が風水害をもたらしている最大規模の被害は、米国フロリダ湾の温かい海の水によってもたらされるテキサス州やルイジアナ州など米中西南部諸州を襲うハリケーンによるものです。
例えば「ヒューストン大洪水」として知られる2017年の「ハリケーン・ハービー」は全米で死者107人、被害総額1250億ドル(約13.5兆円)という途轍もないダメージをもたらしました。
そして、発足半年のドナルド・トランプ政権に最初の大きな挫きを与えました。
さて、2020年7月4日時点でのテキサス州の新型コロナウイルス被害は
確認感染者:18.4万人、死者:2575人(人口2900万人)
ルイジアナ州
確認感染者:6.3万人、死者:3170人(人口460万人)
日本全国の感染者数が2万弱、死者1000人程度とは桁が明らかに違い、そこにハリケーンが直撃する可能性が、ほぼ間違いなく懸念されます。
このため、様々な対策のビッグデータ解析、シミュレーションが進められています。
新型コロナと大雨洪水、土砂崩れなどの風水害は決して独立でなく、また「不幸にして両方やって来る」のでもありません。
たとえて言えば、アブと蜂とがワンセット、組になってやって来るようなことがほぼ構造的に明らかなのです。
「複合災害」としてシステマティックに対応しないとどうしようもないことが、あらかじめ予想されているのです。
下手をすると「ヒューストン」という都市は、今年壊滅的な打撃を受ける可能性もある。全く大げさな話でなはく、対策が検討されています。
日本国政府に、こうした準備がどの程度あるか、定かに確認していませんが、各自治体には十分な準備はないことが懸念されます。
東京大学のグループは、適切な対処を国際協力のもとで検討、準備しています。
台風の通り道とコロナ複合災害
上記のテキサスやルイジアナとは規模は異なりますが、日本の「台風の通り道」についても、ポテンシャル・リスク評価の参考値を挙げておきます。
九州北部での最大のコロナ被害は福岡県で発生しており、
確定感染者数862、死者33、と、今回被災した熊本、鹿児島とコロナ被災は1桁違います。
昨年、風水害に起因する停電や断水によって壊滅的打撃を被った千葉県は、確定感染者数983、死者45でした。
福岡と同じオーダー、実際にはやや上回る数字が出ています。
やはり昨年、荒川が氾濫した埼玉県は、確定感染者数1088、死者65、千曲川大氾濫のあった長野県は、確定感染者数77、死者0と、鹿児島と同様の状況と考えられます。
今回の鹿児島ないし熊本の被災を詳細に検討し、先行被災例に学ぶ対策を講じる必要があるでしょう。
もともと水都で低地が多い大阪府は木津川氾濫など記憶も新しいところですが、確定感染者数1862、死者86。
大阪と隣接し、何かと議論もありますが、そもそも平成21年の台風9号で壊滅的な被害が発生した兵庫県は、確定感染者数709、死者45。
東京だって決して例外ではありません。やや古い話になりますが、私の地元国立からほど近い武蔵野線「新小平」駅は半地下に設置されていますが、1991年10月台風21号による豪雨で「水没」、付近住民も避難する大水害を経験しています。
東京都が発表している、確定感染者数6523、死者325は、検査数を増やせば相当多くの潜在的な感染者がいると考えられ、そこに風水害などの複合災害が重なることで、予想外の影響も発生すると考えられます。
この季節、大雨は仕方がない、何とか過ぎ去ってもらって被害は少ない「だろう」という「だろう行政」では、対策になりません。
これらの複合災害の根本原因が、グローバル気候変動という同一のものである可能性が高く、いずれも第2波、第3波と、繰り返し押し寄せることが、高い確率で予測されることから、統合的な対策は必須不可欠と考えられます。
最悪の状況を仮定した「かもしれない対策」を、行政に強く求める必要があります。
同時に、そこでは根拠に基づく政策(Evidence-based policy)の施行が絶対条件となります。
素人の思い付きでマスクを配るような対策未満は、間違っても二度と繰り返さないことを、注文しておく必要があります。