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進次郎失速」は斎藤知事効果? 大手町の片隅から 乾正人
自民党総裁選に騎虎の勢いで出馬を表明し、他候補をリードしているとみられていた小泉進次郎が失速気味だという。
党員票で2人に離される
読売新聞が、投票権を持つ自民党員・党友を対象に調査(14~15日実施)したところ、トップを石破茂、高市早苗が争い、小泉はかなり離された3位にとどまった。私も総裁選の告示前後から自民党に所属している地方議員十数人に「誰に投票するのか」と聞いたが、積極的に「進次郎に入れる」と答えた議員はいなかった。やはり高市、石破の2人に支持が集まり、半数近くは「今いろいろと考えている」と悩んでいた。
1回目の投票で自民党の党員・党友票のウエートは大きく、国会議員票と同じ367票ある。議員票では、前首相・菅義偉の全面支援を得ている小泉が、トップに立っているとみられるものの、党員・党友票で2人にこれ以上、引き離されると決選投票にも残れなくなる。
地方に選挙応援に行けば、たちまち黒山の人だかりができ、名古屋で9候補が揃(そろ)い踏みした街頭演説会では、小泉の出番が終わると会場を立ち去る聴衆が続出したというのに、なぜなのか。
一つには、公約の柱に「夫婦別姓の導入」を掲げたことに、自民党員の多数を占める「保守層」が反発したことが挙げられる。熱心な夫婦別姓推進派である野田聖子らの支援を得たいがため、という見方が出ているのもマイナス材料だ。
しかし、最大の要因は、小泉の武器であるはずの43歳という「若さ」が、「斎藤効果」によって最大の弱点になってしまったことにある。
「兵庫県の恥」「おねだり知事」など、数々の不名誉なレッテルを貼られ、県議会が不信任案を全会一致で可決した兵庫県知事・斎藤元彦が知事になったのが43歳のとき。
彼は前知事が推薦した官僚出身候補(斎藤もそうだが)を大差で破った。県民は5期20年続いた井戸敏三県政に飽き飽きし、「刷新感」を求めたのである。確かに彼は「井戸県政」を全否定し、県庁建て替え計画をストップさせた。人事もこれまでの慣例を破ったが、左遷された県庁幹部が告発文書をメディアなどに出し、副知事(当時)の執拗(しつよう)な追及もあって告発者が自殺してしまった。
43歳で大統領になった男
一介のお役人に過ぎなかった彼が、知事就任後3年足らずで、告発文書を「怪文書」扱いにするなど自らへの批判を許さない「モンスター」化したのも権力の恐ろしさだ。
連日のように日本海へミサイルをぶっ放している北朝鮮の金正恩が同世代なのも足を引っ張っている。
小泉は、共同記者会見で「首相になれば、トップ同士同世代なわけだから、今までのアプローチにとらわれず、前提条件なく向き合う」と述べたが、同世代だから解決できるほど拉致問題は甘くない。
前出の地方議員の一人は「43歳で総理大臣になるのは早すぎる。もう少し経験を積んでから」と言う。
ケネディは43歳で米大統領になったが、進次郎は「日本のケネディ」になれるか。逆転するには、歴代の総裁が誰もなし得なかった憲法改正を愚直に訴えるしかない。=敬称略(コラムニスト)
=次回は10月4日掲載予定
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