米輸入制限の「日本除外」陳情は無用

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田村秀男

米輸入制限の「日本除外」陳情は無用

日本製品制限で困るのは米産業界、ほうっておけばよい

 
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米国の対中貿易赤字
 トランプ米大統領が中国、日本などを対象に鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置を発動すると、中国の習近平政権は4月1日、米国産の豚肉やワインなど計128品目に最大25%の関税を上乗せすると発表した。日本はどうするのか。(夕刊フジ)
 
 河野太郎外相は、今月後半に米フロリダ州でトランプ氏と会談する安倍晋三首相が自由貿易の考え方を伝えることになるという。世耕弘成経済産業相は、鉄鋼・アルミ輸入制限からの日本除外を安倍首相の口から言わせるつもりだ。トランプ氏の意気込みからみて、通商問題が日米首脳会談の主要議題になるのは不可避だとしても、河野、世耕氏の発言は軽すぎる。
 
 まず、鉄鋼・アルミ問題。高品質の日本製品を制限して困るのは米産業界なのだ。ほうっておけばよい。どうしても制限対象から日本を外してくれ、と安倍首相が頼み込むなら、トランプ氏は待ってましたとばかり、為替条項付きの日米貿易協定の交渉開始を言い出すに決まっている。
 
 日本の円安政策に歯止めをかけ、日本車の輸出攻勢をかわしたい。そればかりではない。円安に頼るアベノミクスは制約を受ける。日本は米国との利害が共通する分野に議題を合わせる。中国の鉄鋼などの過剰生産を厳しく批判して、トランプ氏に同調すればよい。
 
 河野外相が強調する世界貿易機関(WTO)を軸とする「自由貿易体制の堅持」はもっともらしく聞こえるが、むなしい。WTOは中国の過剰生産・安値輸出、知的財産権侵害、外資に対する技術移転の強制などに無力だ。被害国はトランプ氏の米国に限らず、日本、欧州など広範囲に及ぶ。日米欧の産業界が知的財産権侵害や技術移転に半ば泣き寝入りしているのは、巨大市場中国からの報復を恐れているからなのだ。
 
 トランプ政権が知財権問題などで対中制裁するなら、日本も共闘すると安倍首相は言えばよい。なのに「自由貿易体制を守れ」とトランプ氏に説教するなら、愛想をつかされるだろう
 
 米国は対中通商関係で圧倒的優位とは言いがたい。米国の消費者が買う衣料品の4割超、履物の7割超は中国製だ。米国の大豆などの農家は対中輸出頼みだ。アップルなどハイテク企業もGMなど自動車ビッグ3も成長する中国市場に傾斜している。おまけに北京は北朝鮮カードをちらつかせる。
 対中強硬策を掲げて政権の座についたトランプ氏は1年前、対中制裁関税適用を棚上げした。中国側はそれに乗じて対米貿易黒字を膨張させてきた(グラフ参照)。中国は情報技術(IT)、人工知能(AI)を米企業などから奪取し、反対勢力を制圧する習政権の強権と統制力を強化するばかりでなく、軍事技術を飛躍させている。中国の横暴を許すなら、米国の凋落は免れない。
 トランプ政権が中国との通商問題を安全保障に結びつけるのは当然だ。それは日本の正念場でもある。再来週の日米首脳会談には対中戦略すり合わせという重大な意味があるのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
 
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