米英は大陸覇権国家が海に出ようとすると必ず押さえ込んできた

宮崎正弘の国際ニュース・早読み(通巻4400号記念特大号)

特別対談 宮崎正弘 vs 渡邊惣樹(カナダ在住ノンフィクション作家)
 酷似する歴史パターン。排日から排華へ傾斜するカナダ
  海洋国家同士の覇権争いが環太平洋の戦争の歴史でもあった

・・・イギリスとアメリカは大陸覇権国家が海に出ようとすると必ず押さえ込むというDNAを持っています。それはこの二国が海洋覇権を牛耳ることで世界に君臨してきたからです。

現代の大陸覇権国家中国の南シナ海および東シナ海進出は、アメリカの持つDNAを強く刺激しています。必ず抑え込みに来ます。アメリカは、かつてロシアの 太平洋への進出を日本を使って抑えこんだように日本、アセアン諸国あるいはEUとの関係などあらゆる外交手段を使って中国の海洋進出に対抗するでしょう。 問題はオバマ大統領が、あのセオドア・ルーズベルトがみせたような外交手腕を持っているか、どうかでしょう。・・・

TPPは上記に述べた中国の海洋覇権国家たらんとする欲望を抑えるという重要な側面があります。アメリカは自由貿易などにまったく興味がありません。彼らが理屈をこねくり回して自国の自動車産業を徹底的に保護しようとしている態度でそれがわかります・・・・

狙いはアメリカ企業の持つ知的財産をこれ以上中国に簒奪されてたまるかということです。・・・

米国のTPP促進勢力の中心は現在の米国の国力の源泉ともいえるコンピューター・ソフトウェアや薬品あるいは高度精密機械工業などの知的財産集約産業のロビー団体です。・・・

 

アメリカの動きを理解するには、表に出ている事件つまりメディアが扱う事件をみていると理解しにくくなることが多々あります。オバマ政権の外交は、アメリカ共和党の中に自然発生的に出てきたティーパーティー運動との関連で捉える必要があります・・・

ルーズベルト外交がアメリカを世界の警察官に変貌させました。911テロ事件では、世界の警察官になることがアメリカ国民にとっていかに危険であるかを気づかせました。

さらにこの事件で政府機関は焼け太った。その典型が国土安全保障省の創設でした。さらに防衛産業も潤った。イラクにアメリカが作り上げた大使館の建設コストは七億五千万ドルもかかっている。
これで潤ったのはハリバートンなどのアメリカ軍需産業です。
911テロ事件は大きな政府をますます大きくしました。アメリカ国民はそれにはっきりと気づいた。もういいかげんにしてくれということで、小さな政府回帰運動が起こった。私はこのうねりはもっと大きくなると思っています。・・・・

アメリカの小さな政府運動のパワーをオバマ政権は感じています。世界の警察官のままでいたい既得権益層と、もう余計な外交をするなという小さな政府回帰層とのせめぎあいの中でオバマ外交は揺れ動いています。
オバマ大統領も国務省も、どこに向かっていったらよいかわからない。ですから表面的に出てくるオバマ政権の外交はいきあたりばったりで、論理立てて解釈することは難しくなると思います・・・

小さな政府回帰運動が「孤立主義」で連想されるようなアメリカ一国主義になるとは思いません。戦略的パートナーを選択した外交に移行して、アメリカの安全保障に直結する国だけは徹底的に守る。漠然とした世界の警察官外交はもうしないということです。・・・

アメリカの安全保障に直結しない地域で自国民が血を流すことを、アメリカ国民はもはや許さない。そういう空気ができています・・・

アメリカは海洋覇権国家であり、太平洋はアメリカの湖です。私は太平洋覇権の重要性は、小さな政府を支持する人々であっても気づいていると信じています・・・

国防省を中心として太平洋を守るというDNAは綿々と伝わっています。アメリカは日本を失ったら太平洋方面で孤立します。私は有事となれば必ず米軍は自衛隊と協力すると読んでいます。中国はそのことがわかっている
だから南京事件や韓国慰安婦(売春婦)問題を使って日本は守る価値のない国であるとの世論工作キャンペーンを執拗にしかけるのです・・・

 

FRBがお金を大量に供給してリーマンショックから回復を見せましたが、ティーパーティー支持者は、FRBこそが大きな政府を生み出す悪の根源だと考えています。・・・

彼らはお金を刷る行為が中立的ではなく、一部の既得権益者にひどく有利であることに気づいているのです。ばらまかれたお金はまたぞろゾンビのように利益を 求めて徘徊します。日本では、株価回復と浮かれていますが、アメリカでは、特に大学生を中心とした若い知識層の間で、ケインズ経済学の限界を理解するもの が多くなってきました。彼らは必ず次のリーマンショックがあることを確信しています。こうした層がティーパーティー支持者のコアになっています・・・・

私は、アベノミクスの第三の矢は失敗するだろうと悲観的です。
理由は簡単です。アメリカでもそれは成功していないからです。
残念ながら日本のメディアに登場する評論家はこのあたりをほとんど理解していません。いつやってくるかわからない地震と同じで次の「リーマンショック」に備え賢明な企業経営あるいは投資戦略がいまほど重要になっている時はないのです。

 

 

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