どうして、ソマリアの漁民が海賊になったのだろうか

加瀬英明
護衛艦がようやくソマリア沖に
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日本はどの国よりも、この海域に依存している。毎年、二千隻以上の日本関係の船がここを通っている。

ソマリアは紅海の出口にあるアデン湾に面する、「アフリカの角」の大部分を占めている。ソマリアの東にはインド洋がひろがる。西がエチオピア、ケニア、ジブチの三つの国と接している。イスラム国家で人口は八百万人あまり、面積は日本の一・七倍ある。

どうして二十一世紀だというのに、ソマリアが海賊を生んだのだろうか? 海賊は漁船に乗って、自動小銃、ロケット砲などで武装している。昨年はこの海域を通る百十一隻の石油タンカーなどの船が襲撃され、四十二隻が乗っ取られ、身代金を支払った後に船と船員が解放されている。

最近では、アメリカ向けの石油を満載したサウジアラビア船籍のスーパータンカー『シリウス・スター』が乗っ取られ、一月九日に解放された。

ソマリアは一九九一年に内戦に陥ってから、無政府状態が続いている。名ばかりの政府があるが、首都モガディシオのごく一部しか支配しておらず、議会は小さな隣国のジブチで開かれ、二月に新大統領がジブチで就任式を行っている。

ソマリアの漁民にとって海賊ビジネスは、大きな収入源となっている。日本の海運会社が運航する船も被害にあっているが、二〇〇七年にはケミカルタンカー『ゴールデン・ノリ』が乗っ取られ、百万米ドルの身代金を払った。昨年は貨物船『ステラ・マリス』が二百万ドル、『アイリーン』が百五十万ドル、ケミカルタンカー『ストールド・バロール』が二百五十万ドルで解放された。

どうして、ソマリアの漁民が海賊になったのだろうか? ソマリアが無政府状態に陥ってから、外国の密漁船を取り締まれなくなったために、沿岸の豊かな漁場に台湾、スペイン、フランスなどの漁船が侵して、魚を乱獲するようになった。

そのために漁民が収入を失って、海賊ビジネスに転じた。日本は外国漁船が獲った魚を大量に輸入しているから、きっとこれらの密漁船の魚を、回転寿司のタネとして使っているにちがいない。

これまで海賊側が諸国の海軍と交戦して死んだことはあるが、被害にあった船の乗組員が殺された例はない。金儲けのための人質を傷つけては商売にならないから、大切に扱っている。身代金も保険会社が支払っているから、船主の懐が大きく痛むわけではない。

たしかに、ソマリアの貧しかった漁民にとっては、数百万ドル(数億円)を手にできるから夢のような収入だが、アメリカのニューヨークのウォール街のレーマン・ブラザーズをはじめとする金融会社が怪しげな金融商品を売って、顧客から巻きあげた金額と較べたら微々たるものだ。
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