【ここまで進んだ最新治療】保険適用となった! 光でがん細胞だけを破壊する「がん光免疫療法」

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【ここまで進んだ最新治療】保険適用となった! 光でがん細胞だけを破壊する「がん光免疫療法」

米国立衛生研究所(NIH)の主任研究員である小林久隆医師が考案した「がん光免疫療法」が、世界に先駆けて日本で承認され、昨年11月に保険適用になった。外科治療、抗がん剤治療、放射線治療、免疫治療薬に続く、「第5のがん治療法」として注目されている。

 今年から臨床現場での実施がスタートする見込みだが、どんな治療法で、どの程度の効果があるのか。国内の臨床試験を担当してきた国立がん研究センター東病院・頭頸部内科の田原信科長が説明する。

 「まず患者さんに『アキャルックス』という薬剤を点滴投与します。すると薬剤は、がん細胞だけに結合します。そして、24時間後に専用機器を使って、がんの部分に近赤外線を照射すると化学反応を起こして、がん細胞だけが破壊されるのです。治療効果は速く、30分後にはがん細胞は壊死し、1週間後くらいには死滅したがんの塊がはがれ落ちます」

 アキャルックスは、「抗体」と「光感受性物質」の複合体。抗体の作用によって、がん細胞表面に出現している「EGFR」というタンパク質(抗原)と結合する。そして、近赤外線に反応して、がん細胞を破壊するのは光感受性物質の作用だ。

 近赤外線はテレビのリモコンなどに使われている光で、手をかざしても熱くもなく、人体には無害。この光を体の表面にあるがんには外部から照射し、体の深部にあるがんには光ファイバーを差し込んで照射する。照射時間は5分ほどだ。

 

 今回の保険適用の対象は「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん」。頭頸部がんは、鼻、口、のど、あご、耳などにできるがんで、6割がステージIII以上の進行がんで見つかる。治療して治っても約半数が3年以内に局所再発するという。

 「光免疫療法は頸動脈にがんが浸潤している場合は禁忌ですが、正常細胞は反応しないので副作用や全身への影響が少ないのが大きな利点です。米国の30人を対象とした臨床試験の成績では、がんが完全消失したのが4人、縮小が9人で奏効率は44・8%です。80%以上はがんの進行が止まっています」

 光感受性物質の破壊によってがん細胞に穴が開くと、放出された物質の情報を免疫細胞がキャッチして、免疫が活性化し、残ったがん細胞にも攻撃を加えるという二段構えの効果も期待されている。そのため「光+免疫」という名前が付いている。しかし、免疫による全身的な効果は、人ではまだ確認されていないという。

 機器を取り扱う医師のトレーニングも必要なので、最初は臨床試験に参加してきた全国10施設ほどから開始するとみられている。1回の治療費用は600万円弱で、高額療養費制度を使うと自己負担は最大で30万円弱になる。現在、「胃がん」「食道がん」に対しても臨床試験が進められている。(新井貴)

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