池田信夫:電波の私物化を許すべからず

池田信夫:電波の私物化を許すべからず

現時点でまだおよそ7000万台あり、来年7月の停波時点でも恐らく5000万台ものアナログテレビが無用の長物となるような乱暴な措置を、なぜ政府や放送局は強行しようとするのだろうか。

放送局と行政と族議員、そしてなぜか通信事業者までを巻き込んだ、まさに「電波利権」の名にふさわしい国民不在の利権争いだった

地上波放送局が現在のアナログ放送で使用している周波数帯を明け渡し、それをNTTなどの通信事業者が利用することを認めることで、地デジの中継局設置コストの1800億円を通信事業者に負担させるというバーター

問題の核心は、電波が私物化されている実態を当事者のメディアが全くといっていいほど報じないため、国民のほとんどが、自分たちがどれだけの不利益を得ているかを知らされていないことなのである

アナログ放送がデジタル放送になっても広告料は増えず、一方で中継設備は改めるために、1兆円近くかかってしまうからです。つまり、アナログ放送からデジタル放送への移行は、「収入増はゼロ、コストは1兆円」

郵政省の官僚は、携帯電話の「電波利用料」を流用しようと考えました。利用者はなかなか気付きませんが、携帯電話を使っていると、毎年1台につき500円ほどの電波利用料を取られています。現在、携帯電話は国内で1億台ほど普及しているので、大変な額になるんです。

アナログ放送が終了すること自体は、国民の大きな利益になり得ます。簡単に言えば、アナログ放送は、日本の携帯電話にして1億台以上をカバーできる電波を占有しています。それがデジタル放送になることで、200MHZ(携帯電話産業が使っている電波が約250 MHZ)の空きが生まれ、無線LANやモバイル通信を含め、原則として他の事業者もその電波を使うことができるようになる。つまり、理屈としては、携帯電話産業と同規模の10兆円産業が、もう一つできる可能性が生じるのです。

地方民放は、自民党・田中派の系列が半分くらい。田中角栄が郵政大臣の当時に、一挙に43もの地方テレビ局に免許を下ろしました。要するに、電波利権は田中角栄の金城湯池なのです。地方局は今でも、夕方のニュースで週に一回くらいは政治家の「お国入り」を取り上げますが、紹介されるのは自民党の先生ばかり。これが積み重なると、宣伝として大きな効果があります。民主党はこれを苦々しく思っており、電波利権に切り込もうという意識は強いと考えられます
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