欧米批判、露に理解…白々しい朝日 

【新聞に喝!】欧米批判、露に理解…白々しい朝日 イスラム思想研究者・麗澤大学客員教授 飯山陽

ロシアのウクライナ侵攻から1年が経過した2月24日付朝刊で、朝日新聞は「ウクライナ侵攻1年 戦争の理不尽 許さぬ知恵を」という社説を掲載した。

社説は、戦争は悪だ、理不尽だと否定する。奇妙なのはその先に、「そもそも戦争を始めさせてはならない」と続けているところだ。

前提にあるのは、ロシアが「戦争を始めた」のではなく、第三者がロシアに「戦争を始めさせた」という認識である。第三者として具体的に挙げられているのが欧米と日本、いわゆる「西側」だ。

欧米が2014年のロシアによるクリミア占領に目をつむったことや、日本が北方領土問題の解決を期待してロシアへの経済協力に突き進んだことを指摘しつつ、突如、「冷戦勝利に浮かれた西側の傲慢(ごうまん)がロシア国内に反発を醸成したのではないか」と論理を飛躍させる。「人権弾圧を見過ごし、強権的なプーチン統治をゆるしたのではないか」と続くが、いずれも主語は「西側」だ。

朝日はその「西側」に対し、「先進国が振りかざす『正義』」は「冷ややかな視線を浴びている事実に真摯(しんし)に向き合う必要がある」等々と反省を促す。この文脈においてロシアは、加害者ではなくむしろ被害者の立場にもあるとする。「ロシア軍の死傷者は最大で20万にのぼる」「ロシアは未来を失ったのだ」とロシアの損失が強調される一方、「戦争の被害者はウクライナだけではない」とウクライナの被害は相対化される。

皮肉なことに、朝日の北京支局が同日のウェブサイトに出稿した「中国、ウクライナ侵攻1年で『対話と停戦』提案 米欧へ批判と配慮も」という記事は、中国政府が発表した文書について、欧米を批判し、ロシア側に理解を示し、対話を促したものの、「対話や和平の実現に向けた具体策」には触れなかったと解説している。

朝日の社説の姿勢は、まさにこの中国政府の姿勢そのものだ。「法の支配」で国連加盟国が結集し、国際社会の一致した対応を促せ、「武力による一方的な国境変更は認めない」という法規範を掲げれば大多数の国が同調できるはずだ、と提言する。これを朝日が「戦争の理不尽 許さぬ知恵」と自認しているなら、失笑するしかない。

規範を掲げさえすれば秩序や平和が維持されるなら、人類の歴史がこれほど戦禍に満ちているはずがない。それを守らない主体があるからこそ今も戦争が起こっているという圧倒的現実の前に、朝日の説教の白々しさが際立つ。

【プロフィル】飯山陽

 

いいやま・あかり 昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。麗澤大学客員教授。著書に『中東問題再考』など。

 

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