東京オリンピックの裏で、ダイナマイトで爆破され続ける「神の山」

地元出身のギタリストが 問題提起しています

笹久保 伸

東京オリンピックの裏で、ダイナマイトで爆破され続ける「神の山」

二度と戻らない風景がある 

秩父の人にとって「いつもそこにいる親」

武甲山は奥秩父山塊への入口に位置し、古来から現代まで秩父地域における神の山とされてきた。日本三大曳山(ひきやま)祭り※1に数えられる秩父夜祭(2016年にユネスコ無形文化遺産)も、武甲山信仰が土台にある。

春には、武甲山の伏流水が湧き出る今宮神社へ秩父神社の神官がお水(水幣)をもらいに行く水分神事に続き、秩父神社では今年の豊作を祈る御田植祭が行なわれる。秋の収穫が終わると秩父夜祭(秩父神社冬季例大祭)があり、一年の感謝を込めて祈り、龍神(大蛇)を武甲山に返す。この再生・循環の思想が、秩父谷の信仰の源だ。

だが、そんな神の山は、日々ダイナマイトで爆破され続けている

毎日12:30に聞こえてくる爆破音は、昼休みのチャイム代わりだった。恐ろしいもので、地域のシンボルである神の山が爆破されるという行為さえ、日常になれば何とも思わなくなるのだ

「聖域」も「絶滅危惧種」も爆破された

町のシンボルである神の山の頂を爆破するというこの行為は「神殺し」であり、その地域を侵略するに等しい行為ではないだろうか。山の上部を破壊したことにより、一時は水位2メートルを誇った武甲山の聖域・大蛇窪(湿地帯)の湧水は枯れた。山の神(=大蛇)が籠ると言われてきた聖域の水はセメント採掘のために失われた

採掘企業の説明によれば、武甲山から採れる石灰岩は、現在も関東の需要の約50%、日本全体の需要の5%を担っているとのこと。秩父ではいまだに「武甲山が東京のビル群を作った」などと誇らしげに言われる

セメント産業に依存しすぎた秩父市や横瀬町には、自発的に新たな(それを超えるほどの)産業を興そうという意欲はなく活気も能力もないのが実情

この地域にとって、セメントは、楽に手に入る金のなる木だった。企業に採掘させておけばお金が入ってくるため、環境を、そして、神の山を破壊するとわかっていてもやめられなかった

神を破壊すれば祟りが起きる。昔から言われてきたことだ。その祟りはおそらく、山の崩落や地滑り、落盤、地域精神や信仰の崩壊といったさまざまな形で今後さらに露呈してくることだろう。

ひどく破壊され、もはやそこに神がいるのかどうかすらもわからない姿になってしまったこの山を秩父の人々は今も拝み、祭りを行っている。それが今、東京オリンピックの裏側で起きている。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 韓国の閉塞感... 香港人は中国... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。