日本はドイツを真似てはいけない

宮崎正弘の書評

反原発をいちはやく推進したドイツでは何が起きたか
  電気代が急騰し、地球温暖化の元凶を刺戟して庶民は悲鳴を挙げた

川口マーン惠美『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)


 来日する度に川口さんは発電所の取材に出かけていた。ドイツでも原発問題が騒がれ、エネルギー問題に首をつっこまれていることは知っていたが、こうした大作に挑んでいたことは知らなかった。
  評者(宮崎)の関心はと言えば、日本で原発がいきなり全部止まって、原油輸入代金とガスの支払いが激増し、日本の貿易収支が赤字に転化したこと。それも消 費税の値上げどころではない。日本が貿易赤字に苦しむ主因が、この原発停止にあることは誰もが知っているのに、反原発の世論を前にして誰も大きな声で言わ ないのは不思議だった。
 もう一つが地球温暖化による異常気象である。
 二酸化炭素の排出量が激増したため(火力発電により)、大気の変化が大雨、大雪、突然の雷、ヒョウ、落雷。。。。これも主因は原発停止ではないのか。

 そしてドイツは原発をやめると言った。
なにか日本のお手本のようにマスコミがはしゃいだ。しかしドイツでは面妖な事態が進んでいたのだ。
 とりわけ巨大な矛盾が露呈していた。エネルギー再利用と「クリーンエネルギーの罠」とでも言うべきだろう。
 川口さんの報告に拠ると「再エネ関連は、すでに一大産業に発展している。11年の再エネ関連の売上高は370億ユーロで、雇用が38万人。風力はそれぞれ43億ユーロで10万人、太陽光が160億で11万人といわれている」
 その結果、電力は余剰となったが、電気代があがった
 「電気はあまっていても何の役にも立たない」どころか、「思わぬ不都合がたくさん起こる」のである。
 しかし「反原発を主張している人たちは、それを絶対に言わない。だから誤解を招く」のである。
 ドイツは17基の原発のうち、まだ9基は稼働している。日本は突然50基全部をとめてしまった。火力発電を増設した結果、二酸化炭素の輩出が激増し、「CO2の温室効果は地球温暖化の最大原因とみられることは、いまや小学生でも知っている」と川口さんは言う。
 そしてCO2は、海でも海水に溶けて、生態系を壊す。
 つまり、原発を止めて、地球温暖化は異常気象をもたらし、海の生態系を異様に破壊し、それでも情緒的な反原発運動はとまらない。
もし日本がドイツのように反原発政策を推進するとなれば、命取りになる、と川口さんは強く警告を発する。
日本はドイツを真似てはいけない」と。 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 中山恭子 女... 助ければ助け... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。