独ショルツ首相が企業団引き連れ「中国詣で」…習近平総書記3選のお祝いに「ハンブルグ港」を献上か

ドイツは、一方的な技術移転や取引条件の不公平など、問題は多々あっても、最終的に互いに儲かればOKと割り切りっている

 

独ショルツ首相が企業団引き連れ「中国詣で」…習近平総書記3選のお祝いに「ハンブルグ港」を献上か(川口 マーン 惠美) @gendai_biz

 

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独ショルツ首相が企業団引き連れ「中国詣で」…習近平総書記3選のお祝いに「ハンブルグ港」を献上か - ライブドアニュース

中国の買収に対する警戒心

現在のドイツの政権は、社民党、緑の党、自民党の3党連立で、社民党と緑の党は左派で、自民党は保守リベラル。だから、「社民党+緑の党vs.自民党」の対立は想像に難くないが、不仲は実はそこだけではない。社民党と緑の党もしっくりは行っていないし、緑の党に至っては党内部でも内輪揉めが多い。要するに、極めて不安定。

直近の政府の揉め事はというと、中国企業COSCOによるハンブルク港への出資問題。ハンブルク港は、オランダのロッテルダム、ベルギーのアントワープに次ぐEU第3の規模を誇る港で、見渡す限り積み上がっているコンテナの山は、壮大な眺めだ。そして、そのコンテナのターミナルを運営する会社が4社ある。

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10月の終わり、その中の一社の株式が35%、まもなく中国の手に渡るというニュースが、突然、流れた。ドイツ国民にしてみれば、寝耳に水だった。

 

EUでは、EUの加盟国以外の国が、重要なインフラへの出資、あるいは買収を試みた場合、政府は審査の上、安全保障上などで問題があると見れば、それを阻止することができる。

港湾施設は重要なインフラの一つなので、今回、政府内の関連省庁が審査していたらしく、10月末、ベアボック外相(緑の党)を含む6人の大臣、つまり6つの省が、中国の出資は問題ありという結論に達した。自民党ももちろん強く反対。さらにEU委員会と、ドイツの諜報機関である連邦情報局も反対だった。

ところが、ショルツ首相は賛成で、25日、首相権限でこれを押し切った。その際に氏が妥協案として出したのが、中国に譲渡する株の比率を35%から24.9%に下げること。これなら人事など重要な決定にそれほど力を発揮できないという理由だが、どうだか?

2015年、ハイテク・ロボット産業のKUKA社が中国の美的集団に売却した株式はたった5.43%だった。しかし、今ではすでに95%が中国のものだ

KUKAは、日本のファナックに匹敵するような、いわば中国に売ってはいけない会社だった。その結果、今、中国ではKUKAのロボットが、黙々とメルセデスを組み立てている。もっとも、メルセデスの株の約2割も今では中国が持っている。

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いずれにせよ、中国資本のKUKA参入後、ドイツでは、中国の買収に対する警戒心にスイッチが入ったと言われていたが、どうもショルツ氏は別らしい。

ただ、港に関して言えば、中国はすでに、フランス、ベルギー、スペイン、イタリアの港湾施設にも出資しているし、ギリシャ最大のピレウス港は100%中国のものだ。今さらドイツが中国資本を拒否したところで何の意味もないどころか、損するだけとショルツ氏は思っているのだろう。

 

中国無しにドイツの繁栄はない?

ドイツでは、メルケル前首相が極端な親中派で、彼女の16年の施政中にドイツと中国は蜜月を享受し、大いに繁栄した

それを受け継いだショルツ首相が、中国依存をそう簡単に修正できるわけもないし、元々、親中派である社民党のこと、修正する気もないのだろう。そもそも中国とドイツの仲の良さは、前々世紀以来のことだ。

しかも、確かに、中国のハンブルク港への出資を阻止しても、中国はロッテルダムやアントワープに荷を移動させるに違いなく、結局、他国を喜ばせるだけだ。一方、中国船が来なくなったハンブルク港は収入激減で、閑古鳥が鳴くだろう。

つまり、「中国無しにドイツの繁栄はない」というのが社民党の基本的な考え。ドイツは基本的に重商主義である。

さらに極め付きは11月4日のショルツ氏の訪中。これがあるからこそ、ショルツ氏はどうしてもハンブルク港を習近平氏へのお土産の一つにしたかった。こんなことさえ纏められないようでは、自分の統率能力に傷がつくと危惧したのだろう。

しかし、ショルツ首相の統率能力は、実際にはすでに地に落ちている。というのも11月1日、ウズベキスタンを外遊中のベアボック独外相が、首都タシケントでの記者会見の席上、公然と驚くべきことを言い放ったのだ。

「私は、我々が連立協定で共に取り決めたことを、ここ中央アジアではっきりと示した。首相も、今こそ私と同じように、中国に対してそれを明確に示すべき時だ」

「それ」というのは、人権、民主主義、平和の大切さと、その実現のための努力。さらには、対中国政策の変更である。なぜなら、中国が変容しているから、対中国政策はこれまでのままではいけない、とベアボック氏は朗々と説いた。

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もちろん、その主張は正しいが、しかしながら、新前の外相が外遊先から、自国にいる首相に向かってほとんど命令口調のコメントを発するとは、かなり異常な出来事だ。これは、ショルツ首相が内閣を統率できていない証拠であり、また、ショルツ氏の今回の無理な首相決定が、いかに政権内で問題視されているかということでもある。

なぜ今わざわざ訪中するのか

そういえば、ショルツ氏はついこの間も、原発の処遇をめぐる緑の党と自民党の喧嘩に、やはり首相権限を持ち出して、陳腐な妥協案でケリをつけた。こんなにしょっちゅう伝家の宝刀を抜いていたら、あっという間に錆び付いて役に立たなくなるだろう。

 

しかも、今回のショルツ氏の訪中は、あまりにも時期が悪すぎる。先日の中国の共産党大会で、習近平氏が独裁への道を歩み始めたことが世界中に明らかになり、それにより今では多くの国が、台湾侵攻の可能性のみならず、ウイグルの人権侵害にまで注目し始めた。

つまり、各国は対中政策を練り直しているところなのに、ショルツ氏は早々と、いつも通り経済界のボスたちを何十人も引き連れて北京入りするわけだ。商売の拡大のために一番乗り? それとも友好の証明?

11月15日、16日はバリ島でG20が開催されるので、ショルツ氏はここでどのみち習近平氏と顔を合わせるが、その前にわざわざ訪中するのは、経済界の意向も大きいのだろう。バリ島には企業団を連れてはいけない。

ただ、このままでは、ショルツ氏が直々、習近平氏に祝辞(あるいは恭順の意?)を述べにいったと受け取られても仕方がない。しかも、ショルツ氏の訪中には、政府も、議会も、国内の世論もまるで付いてきていないことを、ベアボック外相の過激な言葉が余すことなく示している。

それどころかEU議会の方からも、ショルツ氏の政治家としての能力に疑問を呈する声が聞こえてくる。こうなると、今回の訪中はショルツ氏にとって、EUにおける信用を失う旅になる危険さえある。

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これを見ていて彷彿とするのは、天安門事件の後、西側諸国が対中制裁を取っていた最中、イの一番で北京に飛んだ日本の姿だ。

当時の日本は対中制裁に加わっていたにもかかわらず、世界で孤立していた中国に歩み寄った。日本が独自の考えで単独行動に踏みったとは思えないので、中国以外にも何らかの外圧があったことは確かだろう。ひょっとすると、今回のショルツ氏の訪中にも、それがあるかもしれない。

 

日本はドイツと立ち位置が違う

さて、日本だが、独中が首脳会談をするからといって、岸田首相は安易に中国に歩み寄るべきではない。ドイツと日本は根本的に対中国の立ち位置が違う。

ドイツは中国に経済的に依存しているが、国境に迫られたり、軍事的に脅されたりしているわけではない。しかも中国は、今のところは極めて親独だ。

だからドイツは、一方的な技術移転や取引条件の不公平など、問題は多々あっても、最終的に互いに儲かればOKと割り切りっている。人権問題は、少なくともメルケル政権では、必ず一応は言うだけの紋切り型に過ぎなかったし、ショルツ氏もそれを踏襲しようとしている。

しかし、日本の場合は違う。日本は中国にとっての仮想敵国で、中国は反日。しかも、日本を見下しているが、日本の政治家の中には、中国を仰ぎ見ている人がたくさんいるという歪な関係だ。

日本における中国の影響力は伸張するばかりで、そのうち主権を脅かされるようになっても不思議ではない。要するに、ドイツと一緒にはできない。

昨年12月に発足したショルツ政権は、エネルギー危機、インフレ、不況という未曾有の困難に襲われ、内輪揉めの雑音を発しながらも頑張っている。後期メルケル政権は、社民党との連立だったので、何の議論も起こらなかったことを思えば、今は侃侃諤諤で、政治の場がイキイキとしてきたとも言える。

ただ問題は、出口が全く見えないことだ。とりわけ今回のショルツ首相の訪中は、完全な迷走に思える。

いずれにせよショルツ氏は、ウクライナ戦争が勃発して以来、初めて訪中する西側首脳だ。11月4日の独中首脳会談は、政治家としての氏にとっての分水嶺になるような気がする。しっかりと観察したい。

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