「ピロリ菌=悪玉菌」は証明されたか?

「ピロリ菌=悪玉菌」は証明されたか?いま本当に分かっていること

「除菌」は必要に応じて行うべきだ 

マイクロバイオームとは、人間の身体の表面や中(とくに胃腸の中など)やくぼみに棲む何兆ものさまざまな種類の微生物の群衆――腸内細菌や皮膚の常在菌など――のことだ。人間一人分のマイクロバイオームの総重量は1.5キロという。これはだいたい人間の脳の重さと同じくらい

ピロリ菌を持っている人ほど胃がんになる確率が高いとされている。ただし、全員がそうなるわけではなく、大多数はピロリ菌と共存していて何も症状がない。その一方、胃がんとは逆に、ピロリ菌を持っている人ほど発症しない傾向のある病気が見つかっている。もっとも有名なのは、いわゆる胸焼け(胃食道逆流症)と、胃酸で食道が傷つくことによって起きる食道腺がん

ピロリ菌が胃に棲み着くと慢性胃炎のような状態になって胃酸が減少し、制酸剤を飲んだのと同じで胸焼けが生じにくくなり、食道への刺激が減る防御効果

ピロリ菌は胃の強酸性の環境に適応して他の細菌と生存競争しなくてすむ一方、人間は胃酸が出過ぎないよう調整の一部をピロリ菌にゆだねるウィン・ウィンの関係ともいえる(もちろん、胃潰瘍という悪い面もある)。

ピロリ菌は6万年以上の昔から人間と共存してマイクロバイオームの一部となってきた細菌で、ピロリ菌と人間は共進化してきた。

ピロリ菌の保有率は、全世界では約50%とされるが地域差は大きく、インドやラテンアメリカでは70%、その一方で先進工業国では低く20%を切ることもある。日本は先進国のなかでは高く40%程度とされる。数十年のタイムスパンで見れば、ピロリ菌は除菌するまでもなく急激に減少している。先進国の子どもでは保有している率は5%以下らしい。

上下水道の普及で衛生状態が改善したことと、風邪や下痢に対して子どものときから抗生物質を服用することが、その理由だ。

わずか数世代で6万年前の「昔からの幼なじみ」が消え去る劇的変化が人間の身体にどういう影響を与えるのか、誰にもわかっていない

胃食道逆流症や食道腺がんの他にも、ピロリ菌を持っていない人ほど発症しやすい傾向のある病気が存在することだ。下血や下痢を起こす潰瘍性大腸炎やクローン病、そしてセリアック病(いわゆるグルテン不耐症)である。さらに、消化器とは関係ないが、ぜんそくとも関係している

ぜんそくに関しては遺伝子レベルでの研究が進んで、ピロリ菌と呼吸器の炎症との関係を示す証拠が集まりつつある

いつの日にか私たちはピロリ菌を『失われた菌』として子どもたちに戻すために投与することになるかもしれない

胃がんとピロリ菌除去に関するエビデンス

ピロリ菌に対する抗生物質使用は、胃がんの予防に小さな利点があることが判明した(胃がん発症は、治療を受けた3294人の内51人(1.6%)、無治療ないし偽薬の3203人の内76人(2.4%)

 

 

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