朝ドラ「らんまん」で浜辺美波が演じる牧野富太郎の妻って本当はどんな人?

 

朝ドラ「らんまん」で浜辺美波が演じる牧野富太郎の妻って本当はどんな人?(@DIME) - Yahoo!ニュース

菓子屋の店先きに、時々美しい娘が座っていた

東京は飯田町の小川小路の道すじに、小沢という小さな菓子屋があった。明治二十一年頃のことで、その頃私は、麹町三番町の若藤宗則という、同郷人の家の二階を借りて住んでいた。

私はこの下宿から人力車に乗って九段の坂を下り、今川小路を通って本郷の植物学教室へ通っていた。そのとき、いつもこの菓子屋の前を通った。
この小さな菓子屋の店先きに、時々美しい娘が座っていた

 

結婚した時、寿衛子はまだ14歳だった!

ドラマの中では、寿衛子の母親は柳橋芸者で、士族である父親の妾だったという設定になっている。だが実際は、寿衛子の父親は元彦根藩士で維新後は陸軍に勤めており、寿衛子は父が亡くなるまでは飯田橋の広大な屋敷に住んでいた。

父亡きあとに屋敷は人手に渡り、京都生まれの気丈な母親が女手ひとつで菓子屋を営み、寿衛ら姉妹を育てていた

もともとは寿衛子も牧野同様、贅沢な子供時代を過ごしていた。

牧野には、もう一人の妻がいた!?

まだ実家暮らしをしていた1884年(明治17年)、牧野は2歳年下の従妹の猶と祝言を挙げ、その後、猶は本家岸屋の若女将となっている。

祖母の死後は祖母の遺言を守り、猶が牧野に資金援助を続けていた事実から、この祝言が実効性の高いものだった

お猶さんは頭もよく、人柄もしっかりしている。しかし残念ながら美人ではない」
「お猶さんはやさしいところもあるひとなのに、残念なことに肉体的に骨格がいかめしすぎた」

明治24年(結婚の翌年)、ついに実家の岸屋が経済的に破綻すると牧野は、猶と番頭を結婚させ、店の後始末を託している

 

13回も出産、そのうち無事に成人したのは6人

寿衛子は結婚後、毎年のように妊娠している。妊娠回数が13回で、そのうち成人したのは半分以下の6人、ほかは幼くして亡くしている。

最初に授かった長女の園子が風邪をこじらせて4歳で亡くなった時、牧野は1年間も家を留守にしていた。寿衛子はまだ十代でありながら、臨月の身で2人の乳飲み子を育てつつ、10日ごとに来る借金取りをなだめて追い返し、やりくりをして生計も支えなければならなかった。

しかも当時の手紙を見ると、そんな状態でありながら、牧野の親戚の病人まで預かっている。

壮絶なまでのワンオペだが牧野への手紙で、「(子供の死の)すべての非は自分にある」とひたすら牧野に謝罪している。母親としての泣きごとはひとつもなく、ましてや牧野の不在を責める言葉も書かれていなかったそうで、気丈な性格だっただけでなく、武士の娘としての矜持がそうさせたのかもしれない

 

この苦境の中に、大勢の子どもたちに、ひもじい思いをさせないで、とにかく学者の子として育てあげることは全く並大抵の苦労ではなかったろうと思い、これを思うと今でも妻が可哀そうでならない。
私は、この苦労をよそに、研究に没頭していた

子育てばかりか、借金取りの対応もワンオペ

伝記小説や自叙伝、ネット上での記事などをいろいろ読んでだが、私がどうしてももうひとつわからないことがある。それはアカデミックな教養を備えていなかった寿衛子がなぜ、まったくの無名時代から、牧野の研究の真価を見抜くことができていたのか、ということだ。

最初の妻の猶は実家が裕福だったので、高等師範を卒業した才媛だった。だから牧野の研究の重要性を理解できたのかもしれない。

だが寿衛子は父を早くに亡くしているので、家事見習い程度の教育しか受けていない。結婚して最初に牧野に送った手紙も字の間違いが多い上に内容も拙く、それを読んだ牧野ががっかりしたというエピソードさえ残っている。

そんな寿衛子が、東京大学の精鋭たちでさえ当時は気づけなかった牧野の研究の真価を見抜いていたのである。そこが不思議でならない。

不思議といえば、人生の後半で寿衛子は、誰もがあっと驚く転身を遂げる(ドラマのネタバレになるかもしれないので割愛する)。

ドラマもいよいよ東京大学編に突入して、寿衛子との結婚も近そうだ。これから彼女に襲い掛かる生活苦を思うとめまいがするが、私の疑問にドラマがどんな答えを出してくれるのか、そこが楽しみでもある。


2023年3月9日に出版された「草を褥に 小説牧野富太郎 (P+D BOOKS)」(大原富枝/小学館)には、寿衛子が牧野に宛てた何通かの手紙が収録されており、そこから2人の生活や関係性が浮かび上がってくる貴重な資料となっている

文/桑原恵美子

 

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