ロシアの言いぶん

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和四年(2022)4月9日(土曜日)
       通巻第7293号   

 

(読者の声2)話題のオリバー・ストーン監督、「ウクライナ・オン・ファイア」を視聴、以下感想です。
この監督は広島・長崎への原爆投下を批判したかと思うと沖縄を訪れて反基地運動家に同調したり、日本は大戦中の過ちを中国に謝罪すべき、とのたまったり、あまり勉強せずに高所からモノ申すタイプのようです。(奥さんが韓国人というのが引っかかる)
同監督の映画は二本くらいしか見ていないが、通底するのは国家権力に翻弄される庶民の理不尽な苦しみを描くところか。
この映画も一般ウクライナ市民の苦しみの源泉は奈辺にあるか? の視点から描かれているようで、歴史的な考察は知らなかった事ばかりで参考になった。


特に大戦中、西部ウクライナでドイツと組んでユダヤ人を虐殺した勢力が戦後に処罰されずに存続、反対に米国CIAが冷戦下、対ソ工作にこの残党を積極的に利用した、それが今に続いてネオナチ勢力を形成しているという指摘には驚愕した。


 またソ連崩壊後、ウクライナで2004年と2014年、二度起きた革命に、アメリカが深く係わって騒動を拡大、親西欧政権を打ち立てた裏側の解説も勉強になった。マケインやヌーランドといったネオコン(戦争屋)の大物が隠すことなく堂々とウクライナを訪れては現地メディアで演説、親露派を糾弾する姿は噴飯モノで内政干渉どころではない。


 クリミアはもともとロシア領であり、当然住民もロシア系だったが、ソ連時代ウクライナ出身のフルシチョフがここをクリミアに編入してしまった。ロシアがここを奪回したいのは黒海の軍事的要衝であれば当然のことだったが、

加えてウクライナの西欧傀儡政権はロシア語を公用語から外し、クリミア住民の憤激を買った。こうして住民投票によってクリミアはロシアに戻ったが、欧米のメディアはロシアによる侵略だと騒ぎ立てる。


 そんな親露派地域の弾圧に乗り出したのがネオナチ軍団、ロシア系住民を残虐な手段で殺害してゆく。これ全てウクライナ政府公認の軍事行動である。


 プーチンが住民救出で軍隊を出せば、欧米メディアがプーチンを悪鬼とののしるのは、このネオナチ軍団を指導・訓練したのが英米軍だったからに他ならない。


 このたびのウクライナ戦争ではロシア軍によるとされる住民虐殺の映像が流され、義憤に駆られた我が国民も多くがプーチン罵倒の大合唱だ。現代の戦争を支配するのはメディアやネットを使った情報戦であるなら、一方的なロシア非難報道には冷静に対処したい。プロパガンダに躍起なのはロシアもウクライナも同じなのだ。


 ほとんど無実のサダム・フセインに言いがかりをつけてアメリカがイラクに攻め入ったとき、世界中で米軍への賞賛・応援が鳴りやまなかった。 だがアメリカの主張する大量破壊兵器はどこにも見つからず、それでもフセインは吊るされた。すべてメディアを巧妙に使った情報戦であり、実態はイラクの石油利権をアメリカが奪った戦争に過ぎない。イラクはサダム時代より危険になり、国民は貧乏で不幸になったがアメリカも世界も無頓着だ。


 中東、東欧のいわゆる「カラー革命」のほとんどはネオコンが作り出したものであり、いっときの革命の興奮が終わってみれば、当該国の国民は以前より不幸になった自分たちに絶望するのが常である


 ウクライナにおけるマイダン革命やゼレンスキーの登場もこうした「ヤラセ革命」の最新版と考えればウクライナ国民の福祉や幸福には資することはないどころか、すでに多くのウクライナ人が亡くなっている。

今回アメリカは武器の援助をするだけ、その目的はウクライナとロシアの資源を奪取し、プーチンを倒すことである。もとよりウクライナ人が何人死のうが知った事ではない。


 これを見て顔も真っ赤にプーチンのみを非難する人達のなんとナイーブなことか。そんな「床屋政談」がオールドメディアはもとよりネットでも花盛りではないか

もちろんプーチンは非難されるべきである。だが私はもっと非難されるべきはプーチンを挑発し続けたアメリカ、具体的には「ワシントンの悪い人達」すなわちヒラリー、オバマ、バイデン、ブッシュ親子等だろうと考える。


 ナイーブな人達はプーチンが打倒・駆逐されれば留飲が下がるのか? プーチンが居なくなれば目出度くロシアが民主化されるとでも言うのか?
 そうではなくロシアもウクライナも石油メジャー、武器メジャー、穀物メジャーに蹂躙 され、ネオコンがまたぞろ次の戦争を画策し、その舞台が日本であるかもしれな い、とは考えないのだろうか・・・


 大東亜戦争も、その後の戦争も、朝鮮戦争以外はほとんどアメリカが人工的に作り出した戦争だという認識は今や日本の保守論壇では支配的のようだが、プーチンのみを非難する人はウクライナ戦争もその文脈で分析して欲しい。


 「ウクライナ・オン・ファイア」はゼレンスキー登場前に作られたもので、このたびの戦争やゼレンスキーの背後関係などは出てこない。それでも私的会話のようなプーチンへの珍しいインタビューや、ヤヌコビッチの回想は一見の価値がある。 
決して親露派のプロパガンダ映画ではなく、とかく欧米メディアの報道のみに傾きがちな世論に「ロシアの言いぶん」という両論併記をもって判断は鑑賞者にゆだねる良作と思った。
ストーン監督にはぜひ続編を作って頂きたいものである。
   (Stratocaster )


(宮崎正弘のコメント)毀誉褒貶が激しく、またオリバー自身が政治的には右左にスタンスを変えてカメレオンとも言われているようです。この監督もまたユダヤ人。バイデン政権のユダヤ人脈や、ジョージ・ソロスらウクライナ支援のユダヤ人とは明確に立場を異にする微妙な立ち位置ですね。
 ユダヤ人は団結を切らし、全員一致ならやめちまえ、ですから現ベネット政権は8つの少数政党の連立です。

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