「トルコ系ドイツ人」プロサッカー選手、メスト・エジル氏の憂鬱

「コーランが焼かれ、モスクが閉鎖され、人々が収容所に入れられている」として、「兄弟たち」への支援を訴えた

これを よってたかって たたくなんて ドイツは おかしい

日本も ひどい 

よりによって その犯罪者を 国賓として迎える??

 

川口 マーン 惠美

「トルコ系ドイツ人」プロサッカー選手、メスト・エジル氏の憂鬱

だからこそ「移民問題」は難しい 

W杯敗退のスケープゴートに

たちまち、サッカー協会の重鎮たち、一部の政治家、そしてファンまでがエジルの行動を「過ち」と決めつけ、「ナショナルチームのメンバーは、ドイツに忠誠を誓うべき」とか、「このような行動は、私たちの価値観にもドイツのスポーツの基本精神にも合致しない」とエスカレート。しかも、この時期が、トルコでの選挙前であったことも重なり、エジル選手がトルコ大統領の政治活動を支援したとして、非難轟々となった。

すると、ドイツの大統領(ドイツの国家元首!)が突然、エジル選手を「招待」し、「良い話し合い」を持った。お灸を据えられたのである。私から見れば、ドイツ人のエジルに対する攻撃はほとんど常軌を逸していた

6月2日に行われたロシアW杯直前の対オーストリア戦では、エジルの一挙一動に、ドイツのファン・ブロックから非難の呼子が吹き鳴らされるという異常事態まで起こった。

その不協和音が尾を引いたのか、W杯のドイツチームは不調が続き、結局、グループリーグ最下位で敗退。とくに2対0で韓国にまさかの敗北を喫したのは、ドイツ人ファンにとって大ショックで、そのあと、エジルは、チームの結束を崩した張本人としてスケープゴートとなった。

エジルは7月23月、人種差別などを理由に、ドイツのナショナルチームから引退。この決断を、ナショナルチームのレーヴ監督も、休暇先でニュースを見て知ったというが、なんとも後味の悪い事件だった。

自分の信念に沿った行動なのに

その後、エジルは長い沈黙を破って、フェイスブック上で意見を表明したが、これがなかなか心に響く文章だった。

「私はドイツで生まれました。しかし、ルーツはトルコです。私は、ドイツとトルコ、二つのハートを持っています。子供の頃、母は、自分のルーツに誇りを持ち、忘れてはならないと教えました。それを私は今でも思い出します」

「5月、ロンドンのチャリティー・イベントで、エルドアン大統領に会いました。(略)私が嘘をついているとか、狡猾であると非難する人もいました。しかし、あの写真には政治的な意味はありません。(略)私にとっては、私の家族の国の元首に対する尊敬です。

(略)ドイツメディアが何を言おうが、私が大統領に会うことを拒否していたならば、それは私のルーツの国の人々に対する尊敬を傷つけるものだったことは確かです。彼らは、今の私の姿を誇りに思ってくれているのです」

エジル選手は、これまでも病気の子供や恵まれない人たちを救うためのチャリティー活動に熱心で、2019年の結婚式でも参列者のお祝儀を断り、発展途上国の子供たちの手術代にかえた。1000人分の手術代を肩代わりしたという。

ちなみに花嫁は、トルコとスウェーデンのハーフで、ミスワールドのトルコ代表の女性。仲人はエルドアン大統領夫妻だった。

ただ、今回のウイグルに関する中国政府批判は、中国との友好を望んでいるエルドアン大統領にとって都合の良いものではないから、エジルが大統領の手先になっているというこれまでの非難は当たらない。どちらかというと、彼は、自分の信念に沿って行動しているだけではないか。

ただ、だからといって、それが彼の所属しているアーセナルFCの利害に合うかというと別問題だ。エジルの中国政府批判の後、アーセナルFCは大慌てで事態の収拾を図った。中国最大のウェブサイト「ウェイボー」に、「エジル選手の意見は個人のものである」、「アーセナルFCは政治的に中立である」と表明し、前述のように、エジルをメンバーから外した。

エジルは激怒したというが、アーセナルにしてみれば、それどころではない。中国を怒らせて、テレビ中継の収益や、将来の中国遠征も棒に振るようなことになっては大変だ。英『ガーディアン』紙によれば、アーセナルFCは、中国のレストラン・チェーンにも投資している。「ディ・ツァイト」の記事のタイトルは、「金が(立派な)態度を打ちのめす」。

ちょっとしたきっかけで

トルコは、曲がりなりにも普通選挙が行われている民主主義国である。しかし、その国の大統領と会うことが許されないなら、スポーツ選手は誰と会うことは許されるのか? 習近平は? プーチンは? トランプ大統領だって、ドイツのメディアでは悪人の一人だ。

この事件は、移民問題を見る上で、大変興味深い。冷静に考えてみれば、エジル選手ほど、移民としてドイツに溶け込み、ドイツ人よりもドイツ国に貢献した移民は稀だ。なのに、ちょっとしたきっかけで、こういうイジメ事件が起こる。

今、私は、トルコ人の友人の言葉を思い出している。ドイツが祖国だと思っている彼女は、「私たちが溶け込まないわけじゃないのよ。ドイツ人が私たちを溶け込ませないのよ」と言った。

11月に拙著『移民・難民』を上梓したが、そこで私は、やはり移民と、それを受け入れる人々の心の問題に触れている。

ドイツに37年も住む私だが、今になって、ドイツ人とはどんなに親しくなっても、どこか一枚、絶対に越えられない壁のような物があると感じる。移民の問題は、だからこそ、来る方にとっても、迎える方にとってもとても難しいのだと思う。

 

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