どうする日本の「放置竹林」問題…その原因と課題、新しい取り組みも

 

どうする日本の「放置竹林」問題…その原因と課題、新しい取り組みも|話題の焦点

 冬も近づき、ミカンの島とも呼ばれる山口・周防大島では極早生の日南プリンセスを出荷し始めた。だが、この島を悩ませている問題がある。竹林だ。伸びた竹でミカンが日照不足になって生育不足にも。地元紙では「島が竹にのみこまれる」とも報じられた。

 周防大島町農林課は「ミカンの生産量はピークの10分の1です。ミカンの耕作放棄地が竹林化しています。竹の活用にも取り組んでいますが、竹が成長するスピードのほうが速い」と困り顔だ。

 戦後、タケノコ栽培が奨励されたが、1960年代に竹がいっせいに枯れた。そのためタケノコは輸入が主流になった。林野庁によれば「2020年度は日本の生産量2万6449トンに対し、中国を中心とする輸入量は14万2544トンになっています」とのこと。さらにプラスチック製品が普及して竹の代替材になるなど、竹の需要が次々に消滅した。

 

 農業従事者も減少し、竹林管理も厳しくなるばかりだ。放置された竹林は雑木林に侵入して無秩序に拡大する。浅く根を張る地下茎は土砂崩れの一因にもなりかねず管理されない竹林は有害鳥獣の温床にもなっている。

「放置竹林」は広く、地域の課題だ。

 そうしたなか、悩みのタネとなっている竹の新しい使い道を探る動きも次々と出ている。日本最大の「国産竹利活用企業」と呼ばれているのが、中越パルプ工業(本社・富山)だ。

■鹿児島県では新しい使い道も

 鹿児島県薩摩川内市にある生産工場では日本で唯一、竹を原料とした紙を生産している。というのも鹿児島県の竹林面積は全国1位で全体の11%を占める。同市も県2位の竹林面積を持つが、9割以上が放置竹林。そこで薩摩川内市は16年に竹バイオマス産業都市協議会を立ち上げ、120の企業や機関が会員として参加。

 

 事務局を務める同市商工観光部産業戦略課は「竹から紙を作る流れや仕組みは国内でもうちだけです。これが竹バイオマス産業都市構想の出発点」と話す。

 中越パルプは20年も前から竹の有効活用を研究。薩摩川内市と周辺地域の約2000人が関わり、年間約2万トンもの竹を収集・処理・加工する地域システムを実現した。また、竹セルロースナノファイバーという鋼鉄の5倍の強度を持つ新素材も開発し、商業プラントも稼働している。

 一朝一夕とはいかないが、昔話にあるように、現代でも竹林から宝が見つかるかもしれない。 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« スリランカの... 抗体カクテル... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。