道路予算の視点

道路予算の視点

 「日本崩壊」
 -道路、橋梁、下水道・・・、インフラの耐用年数はもはや限界。やがてあらゆるコンクリート構造物が一斉に崩壊する。無為無策ならばやがてローマ帝国の二の舞になる-

 少子化による人口減少は、確実に国を滅ぼす。初代ローマ皇帝をして、少子化は、これだけの危機感を抱かせたのである。
 だが、さらにもうひとつ、ローマ帝国滅亡の原因として、意外な理由があげられる。コンクリート構造物の大量の構築による管理コストの重圧である。

 <コンクリート帝国の自滅>
 ローマ帝国も紀元2世紀に入ると、新規の建造物の着工はぴたっと止まってしまう。過去の建造物の修理や修復に追われて、新しい建造物をつくるどころではなくなってしまったのである。年を追うごとに修復費はふくらみ、2世紀後半からは、公共事業費の大半は、老朽化した建造物やインフラの修理・修復に費やされ、財政を圧迫した。

 <奇跡の高度成長の皮肉な逆説>
 ローマ帝国はいわば「公共事業の帝国」だった。(中略)その成功と繁栄の遺産が、今後は逆に重荷となってのしかかることになる。(中略)深刻な人口問題に、絶望的な財政悪化、それに加えて、莫大なコンクリート構造物の建て直しの負担が集中的に重なり、まさしく「三重苦」の様相を呈するのである。(中略)メンテナンスが行き届かなければ、崩落などの大事故に直結しかねないからだ。人の生命にかかわる上、交通が遮断されれば、経済活動と国民生活に深刻な影響をもたらすことになる。
 
 高速道路、国道、都道府県道及び市町村道にかかるすべての橋梁の数を合計すると、約67万橋。その中で、橋長15メートル以上の橋梁に限っても約15万橋にものぼる。そのうち、高速道路および国が直轄する国道が1万8千橋、都道府県管理が4万4千橋、市町村管理が8万4千橋。これらの橋梁の約40%は、60年代から70年代末の高度成長期に集中的に建設されており、現在ではすでに老朽化によって、コンクリートに亀裂が走っていたり、その一部が剥がれ落ちたり、内部の鉄筋に腐食が進行していたりと、数々の問題がそこかしこで浮上してきている。

 橋梁の耐用年数は50年間。それを過ぎると、落橋の危険性が高まると言われている。架けられてから50年以上経過した「危ない」橋の比率は、2006年現在、直轄国道橋では8%にとどまるが、2010年前後には10%に達し、約8年後の2015年前後には倍の約20%、2030年後には過半数を超え、2050年頃には約60%が老朽化した橋梁で占められると予測されている。

 <橋の劣化状況を誰も知らない>
 <首都を蝕む老朽下水管>
 平成10年の「東京都が管理する社会資本の維持更新需要額推計」によると、東京都の主要な6種の社会資本(道路、橋梁、上水道、下水道、地下鉄、住宅)を維持管理するためのコストは、年々着実に増加してゆき、2030年度には約9千億円に上ると推計されている。その中で、上下水道の維持更新費の占める割合が、全体の60%から70%強と、圧倒的に高い割合を示している。また、下水道の維持管理費は2020年以降になると急速にのび、2030年度には主要6種社会資本の約30%を占めるまでになる。
 高い経済成長率はもはや見込めず、財政赤字も累積している中で、それだけの予算を果たして確実に調達できるのだろうか。(岩上安身 ノンフィクション作家 「正論」平成20年2月号)

真中 行造のページ  2008年3月7日より 引用
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