ワイドショーに屈服した岸田政権は、統一教会問題をどう収められるか

そういう裏事情があったのか

 

ワイドショーに屈服した岸田政権は、統一教会問題をどう収められるか(髙橋 洋一) @gendai_biz

日テレの凄まじいバッシングの理由

先週、本コラムで「統一教会バッシングと国葬反対論が、なぜつながってしまうのか? その謎を解く」を書いた。

大胆にいえば、(1)安倍元首相の暗殺で、テレビが安倍元首相と統一教会の繋がりを繰り返し報じた後で、(2)テレビで統一教会をケシカランものだと報じると、(3)安倍元首相の国葬に反対する流れが出てきた。

世論調査をみれば、統一教会がケシカランとの回答をした人のほとんどが、安倍元首相の国葬に反対したのだろう。でないと、統一協会ケシカランの年齢別分布と国葬反対の年令別分布がそれほど似ていることを、なかなか説明できない。

筆者なりに調べると次の現象は興味深い。(1)を否定した意見(暗殺者の勘違い)つまり安倍元首相は統一教会を嫌っていたとの意見に対して、国葬反対派から猛烈な反論が出てくるのだ。安倍元首相は統一教会と関係が深いからビデオメッセージを送ったのだと。しかし、現実にはトランプ大統領が送ったから、トランプ大統領と同調しただけであることが知られている。

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安倍元首相のお祖父さんである岸元首相が統一教会と関係があったのは事実だが、さすがに孫の代になると変わってきた統一教会が北朝鮮と関係を深めていったことや、合同結婚式においていわゆる慰安婦問題を韓国の立場で賛同していたことに対して、安倍元首相が嫌悪感を持っていたのは確実だろう。

その証左として、統一教会にとって不都合な法改正(2013年消費者裁判手続特例法や2018年改正消費者契約法)が安倍政権によって行われている。これらについては、8月1日付け本コラム「統一教会の「名称変更」問題に潜む文科省の「歪んだ行政」」をみてほしい。そこには、霊感商法被害が近年少なっていることも書かれている。

となると、(1)を否定した途端に国葬反対派がしゃかりきになって反論する理由がわからない。統一教会バッシングを梃子にして国葬反対までもっていきたい勢力があるのだろう。

統一教会バッシングは、テレビのワイドショーが中心であるが、その中でも日テレが凄かった。

その理由は、読売グループの事実上のトップである渡邉恒雄氏に関係があると筆者は邪推していた。統一協会を叩くと、自民党内では安倍派の受けるダメージが比較的大きい。その典型は安倍元首相の実弟の岸前防衛相だ。

魔女狩り」の行方

内閣改造について、8月15日付け本コラム「こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない」で酷評したが、安倍元首相の影響力をそぐという点で岸前防衛相を外すのが主眼の改造だった。実際、統一教会に関係している人は新内閣に選ばないといっていた。

その段階では、岸田政権の「後見人」である渡邉氏が、反安倍・脱安倍を主導したと筆者は邪推していた。渡邉氏が親財務省であるのは周知の事実であり、岸田周辺にも渡邉氏人脈で親財務省の人材が多い。そういう人たちから見れば、反財務省の政策を主張する安倍元首相は煙たい存在だった。そこで、内閣改造では反安倍・脱安倍人事を仕掛けたかったのではないか。

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ところが、実際に蓋を開けてみると、「関係」というあいまいなところで線を引こうとしたことに無理があり、新閣僚にも統一教会との「関係」がある人が出てしまった。

このあたりから、マスコミの統一教会バッシングが制御不能となって、岸田政権にも「ブーメラン」となって返ってくるようになった。

もっとも、先週の本コラムに書いたが、8月27日、28日放送の日テレの看板番組「24時間テレビ 愛は地球を救う」で、統一教会からのボランティアがいたことが公表されると、日テレは、《一般的に、参加される方の個人的な思想・信条について確認することはいたしません。》と、これまでの過激な報道とは打って変わって、まともなコメントを出すことになった。

筆者は、これで騒ぎが一段落すると思っていたが、驚いたことに、8月31日、岸田首相は統一教会について「関係を一切断つ」と公表した

これについて、筆者は、

《魔女狩り。旧統一教会の行為は違法行為であれば法律で対処するのは当然だが、関係を絶つというのは魔女狩り。ワイドショーのいうことを聞く必要なし》
《全国の自民党議員の関係者の中に信者がいるのはほぼ確実だが、どうするのかねえ》
踏み絵を踏まされ関係を絶った自民党関係者が、差別だと自民党を訴えたら、自民党はもたないだろう。日テレのほうがワイドショーでやりつつ、文書回答では相手の思想信条を問わないとしたのがまとも。自民党はまともでない》

とツイートした。

自民党国会議員に絞っても、家族の中に統一教会信者がいる確率は52%だ。自民党国会議員の関係者となればほぼ確実にいる。その人と関係を絶つことを迫った結果、差別だと訴えられたらどうするのだろうか。魔女狩りや踏み絵といった、中世や江戸時代のようなことが今の日本で行われていることには、呆れるしかない。

自民党国会議員の調査をするとしているが、どのように確認するのだろうか。就職の採用時にも宗教を聞くのは、憲法違反の疑いさえ持たれる。臨時国会で、人権に熱心な野党は是非質問したらいい

自民党がワイドショーに屈服したようで情けないが、筆者はこれにも冷ややかな見方をしている。岸田政権の後ろ盾は、読売グループの渡邉氏だ。そこのテレビのワイドショーに従うのは当然の動きだと筆者は見ている。これは岸田政権の本質でもある。

維新案の「事前規制」は現実化するか

最後にどうすべきかを書いておこう。閣内や野党の中にも、すでにその動きがある。

河野太郎消費者相主導で発足した消費者庁の検討会が開かれている。

8月26日、第1回「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が開催されマスコミで大きく報道された。あまり報道されていないが、同じ日、第1回「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」も開催された。後者では、IT社会で高齢者などをどう守るかなどが検討されるようだ。

筆者からみると、具体的な対応策を練っていく後者の懇談会のほうが重要だ。

というのは、消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の2022年改正での附帯決議では《消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)の創設について検討する》とされており、読み方によっては、宗教法人への寄付まで規制対象にしうるものだからだ。

一方、野党からも、事後救済でなく事前規制をするユニークな案が出ている。日本維新の会では、宗教法人に寄付制限を法律で規制する案が出ている。これについて、音喜多駿議員は、法案作成段階で参院法制局から憲法違反の可能性を指摘されたとしている。

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これに対し、吉村共同代表は、違憲かどうかの最終判断権者は最高裁判所であり地裁判決では根拠にならないので、頑張れと檄を飛ばしている。

宗教に関する憲法上の規定は、20条と89条にある。それぞれ、《いかなる宗教団体も、国から特権を受け》ない、《公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便宜若しくは維持のため……これを支出し、又はその利用に供してはならない。》なので、寄付制限がどこに反するのか素人にはわからない。

というより、現状で税負担なしの特権さえ認めていることが、憲法上問題にならないのか不安に思ってしまう。

音喜多氏によれば、参院法制局とは、直接的な上限規制の他に、寄附者に「取り消し権」を付与することによる事後的な解決策・間接的な制限アプローチを議論しているという。

これは、参院法制局による、消費者庁の動向をも見据えたうえでの「大人のアドバイス」だろう。筆者としては、維新の事前規制が法案化するのを期待したい。

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