「エリートほどバカである」残念な国家の末路

 

現代人が生きる「恥ずかしい時代」

「このタイトル なんのこと」と 思われた方は ぜひ 読んで

博学の倉山満から 歴史のエッセンスを 盗み取ろう!


倉山満

「エリートほどバカである」残念な国家の末路

非エリートよインテリジェンスを鍛えよ

政治家、官僚、財界人……日本の学歴エリートの劣化がいちじるしい。無能、無知の隠蔽体質であるにもかかわらず、権力・財力が過度に集中し、この国はいま危険な状態にある。しかし、新刊『2時間でわかる政治経済のルール』を著した倉山満氏は、日本はもともとは権力・財力・知力がさまざまな層に分散された世界でもまれな国家で、それこそが国としての強さの源だったと指摘する。そんな倉山氏が示す、我々が目指すべき新しい「学び」のカタチとは?

 

「世界史の奇跡・日本」が生まれた理由

日本は、権力と財力と知力が比例していないのが美徳だった。

たとえば、江戸時代。権力は武士が、財力は田舎の地主と商人が、知力は各層の向学心がある教養市民層が持っていた。

これが他の国なら、権力と財力を特権階級が独占し、それ以外の人々は字も読めない。だからこそ一部のエリートが国を支えなければならず、その一部エリートは極端に優秀にならざるをえない。そうしなければ国が亡びるからだ。

我が国の場合は、まったく違った歴史をたどった。

世界史の奇跡と言われる明治維新。旗本八万旗と言われた体制側の公務員は、何の役にも立たなかった。亡国の危機を救ったのは、名もなき下級武士たちだった。薩長の武士たちが古く腐った江戸幕府を倒して新政府を樹立し、世界の誰にも媚びない強くて賢い国――大日本帝国を打ち立てていく。

鎖国下でも自分の頭で考え、世界を見ることはできる

明治維新は、ある日突然はじまったのではない。それ以前の江戸時代の教育の賜物だ。

元和偃武と言われる平和の時代が到来し戦国の騒乱は過去の遺物と化した。そうした平和な元禄繚乱の時代、学問が盛んとなった。幕府の定めた官学である朱子学に対する自由な批判が学問を発展させ、中国崇拝の学問は勢いを消した。

享保に、漢訳洋書輸入の禁が緩和された。キリスト教に関する書物以外の洋書の輸入が認められたのだ。これに日本の教養市民層は、貪るように飛びついた。そして、日本はペリー来航の百年前に、西洋の知識をも知っていた。キリスト教を理解しないで洋書など読めるはずがない。

鎖国の時世、確かにInformation(生情報)は限られていたが、Intelligence(知見)は無限大だ。江戸の知識人たちは、自分の頭で物を考え、世界を見ていた。だから、ペリーの黒船がやってきたとき、「あれをやればいいのだ!」と欣喜雀躍した。

黒船とは、白人の軍事力と経済力と科学技術力の粋である。多くの有色人種は、黒船を見た瞬間に、「勝てない!」とあきらめた。相手の心を折るのが、砲艦外交の狙いである。

日本人だけが違った黒船への反応

ところが、日本人だけは違った。「あれをやればいいのだ!」と、本当に黒船を作った。

伊予宇和島国主伊達宗城は、一介の医者の大村益次郎を呼び出して、「お前は医者だから黒船を作れるだろう」と命令する。大村も、「この国で一番の職人を助手にしてくれたら」と提灯屋嘉蔵と2人で本当に黒船を作った。

大村は、緒方洪庵の適塾の出身である。緒方は医者であり、蘭学を教えていた。適塾は住み込みで勉強できるのだが、灯が消えたことがないという。たとえば適塾に物理学に関する新刊本が届いたら奪い合って翻訳し、回し読みしたという。

現代ならば、なぜ医者が物理を勉強しなければならないのか、と考えるかもしれない。しかし、江戸の知識人は、医者が物理学を知らないなど恥ずかしいと考えたのだ。これはどちらが正しいという問題ではない。価値観、審美眼の問題だ。

非エリートの若者を英雄にした吉田松陰

日本中がこんな調子で、ペリー来航から10年もしないのに、フリーターが黒船を乗り回していた。坂本龍馬である。龍馬は格段の知識人ではない。だが、燃えるような愛国心と向学心はあった。

知識が特権階級の独占物ではなく、志ある人たちが自ら学び、そして多くの志のある人がいた。それが明治維新の原動力だった。

吉田松陰は松下村塾で、非エリートの若者を教えた。唯一の例外が高杉晋作で、彼だけは藩校出身だった。今風に言えば、偏差値エリートだ。それ以外の若者、久坂玄瑞、井上馨、山県有朋、伊藤博文、山田顕義、前原一誠……全員が非エリートだ。伊藤博文に至っては、半農の下級武士である。だが松陰は、彼らに「自分が将軍になって国を率いるつもりで勉強せよ」と説いた。

それどころか、松陰は自分が獄に入れられているときも、死刑囚に向かって「学問せよ」と説いた。なぜ学問せねばならないのか。知ること自体に意味があるからだ。

松陰は29歳で刑場の露と消えた。しかし、その教えが明治の日本を作った。

討幕維新、そして日清日露戦争の勝利を成し遂げた人々は、江戸の教育を受けていたのだ。

現代人が生きる「恥ずかしい時代」

それが、明治の教育が大日本帝国を亡ぼした。明治になり、学歴秀才はこぞって外国に留学した。Information(生情報)が手に入る時代になった。外国に留学し、Information(生情報)を得たものは特権階級となった。自分の頭で考える者の価値が下がった。かくして、Intelligence(知見)は失われた。これが、大日本帝国滅亡の原因だ。

そして、日本国建国から初めて、外国に戦争に負けて占領されるという憂き目を見た。現代の我々は恥ずかしい時代を生きているのである。

では、権力を握っている官僚や政治家に期待できるか。財界人に期待できるか。

政治家など、ここで取り上げるだけ時間の無駄だろう。あの人たちは選挙が忙しすぎて、本来の仕事を官僚に丸投げしているだけなのだから。

敗戦後の日本は「政治家が無能でも官僚が優秀だから国が持っている」という幻想が撒き散らされた。今となっては、日本の官僚は失敗を隠すのが上手いだけだと、マトモな人間はみんな知っている。

致命的な財界人の「劣化」

問題は財界人である。これだけ劣化した官僚の言うことを信仰している。いまだデフレ脱却すらできていないのに、製造業の社長がこぞって消費増税を訴える。「死にたいのか?」と疑問に思う。消費増税が自分の商売に直結するのだと理解できない、経済どころか自分の会社の経営すら理解する知能がないのだ。

昔の財界人と言えば、政治家を使って官僚を抑え込み、政局情報を入手して商売に活かしていた。昭和初期の二大政党は政友会と民政党だが、それぞれのスポンサーは三井と三菱だ。政界は財界の代理戦争と化していた。それはそれで問題だったが、今はその時代のたくましさが懐かしいほど劣化している。

経済大国日本の取り柄は経済だけである。その経済を支えているのは中小企業だ。ところが経営者と称する人たちに、教養が著しく欠如している。

1回5万円もするセミナーで「東日本大震災はユダヤ人が地震兵器を使って起こした」などというヨタ話を聞いて信じ込んでいる。それがお金を払って聞ける「世の中の真相」だと思っているのだから、目も当てられない。

では、「そのユダヤとは誰か」と聞くと、「ロックフェラー」と言い出す。ロスチャイルドと間違えているのだ。

ロックフェラーはWASP(White Anglo-Saxon Protestant)、白人でアングロサクソンのプロテスタントだ。アメリカの支配階級である。対して、ロスチャイルドはユダヤ教を奉じるユダヤ人だ。イギリスで爵位をもらう大財閥のロスチャイルドは例外中の例外で、ユダヤ人の多数派は決して裕福ではない。

ちなみにロスチャイルド家の爵位は、男爵。最下層だ。さらにちなみにロックフェラー家は、アメリカ大統領輩出が悲願だが、いまだに達成できていない。副大統領どまりだ。

「ユダヤ人の地震兵器」は論外だが、財力に見合う教養とは何なのかすら、知らないのだろう。

「日本会議陰謀論」も然りである。「安倍内閣の18人の閣僚中17人が日本会議」とか報道されると、信じてしまうのだろうか。「日本会議陰謀論」などありえない。別に実地取材をしなくても、ましてや裏情報に頼らなくても構わない。公開情報を丁寧に読み解きさえすれば、嘘に騙されなくなるのだ。世の中に流れている多くの嘘を見抜いているうちに、本当のことが見えてくる。

正しい学びに正しい知識。一人でも多くの日本人が、正しい学びを身に付けてくれることを祈る。

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