今は猛批判だが、直近まで統一教会の宣伝を垂れ流していた報道機関とIT大手

今は猛批判だが、直近まで統一教会の宣伝を垂れ流していた報道機関とIT大手

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 安倍晋三元首相の襲撃事件をきっかけに、いまさらながらに統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の「反社会性」や、政治家との関係を糾弾する報道が相次ぐ。

 テレビでは朝や昼のいわゆるワイドショーと呼ばれる情報番組が積極的で、それこそ30年も前から統一教会を追及してきた有田芳生氏や、いわゆるカルト宗教の問題に取り組む紀藤正樹弁護士などが出演して、統一教会を解説してみせる。政治家との関係が明らかになると、ここぞとばかりにその政治家を大きく取り上げて問題視する。テレビ朝日のサイトに登場していた統一教会の広告

 だが、私に言わせれば、よくそんな報道ができたものだ、と首を傾げたくなるところがある。むしろ不愉快になる。

 その理由が、以下に示す画像にある。「テレ朝news」に表示された統一教会の広告 © JBpress 提供 「テレ朝news」に表示された統一教会の広告

 これは、テレビ朝日のニュースサイトをファイル保存したものだ。日付は2年前の2020年2月5日。ニュースの配信日時から確認できる。ちょうど新型コロナウイルスが日本にも上陸。感染者が多発したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港に着岸したことが大きく報じられていた時期だ。

 私が指摘したいのは、このニュースサイト画面の上と右側に表示されている広告だ。

『文鮮明先生聖誕100周年』

『真の父母聖誕100周年記念』

 などと大きく記載があり、どちらも同じ写真が使われている。

「文鮮明」とは、統一教会の創始者だ。広告写真の男性はその文鮮明で、いっしょに映っているのは妻の韓鶴子。文鮮明が2012年に死去したあと、教団の頂点に君臨する人物だ。

 その文鮮明の生誕100年を祝うイベントの広告。すなわち統一教会の広告であることは誰の目にも明らかだ。広告はGoogle経由

 この広告をクリックすると、その専用サイトに飛んだ。いまでも保存ファイルの広告欄をクリックすると『文鮮明天地人真の御父母様天宙聖和10周年』と題されたサイトに飛び、文鮮明の写真と関連イベントのスケジュールが表示される。名実ともに統一教会の広告であることは間違いない。

 文鮮明は1920年2月25日の生まれ。広告表示もその直前の時期にあたる。

 テレビ朝日は、文鮮明の生誕100周年をいっしょに祝い、そして広告収入を統一教会から得ていたことになる――そういう言い方をすれば過激に聞こえるかもしれないが、もう少しこの広告の事情を細かく探ってみる。

 このニュースサイトの運営はテレビ朝日であることはまず間違いないが、問題の広告の右肩に小さくある「i」「×」という情報アイコンと削除アイコンにカーソルを合わせると、「Ads by Google」という吹き出し表示が出る。さらにクリックすると、広告全体が「Googleはこの広告の表示を停止しました」との文字表示に変わる。つまり大手検索サイトのGoogleが、私の検索や閲覧履歴などの個人情報を取得して、それに見合った広告を表示するシステムになっていたはずだ。

 どういうアルゴリズムで私の情報端末にこのような広告が表示されたか不明だが、考えられるとすれば、オウム真理教事件に精通していたことが挙げられる。「カルト」という括りで表示されたのだとしたら、なんとも皮肉な話だが、そうであればなおさら無視することもできなかった。

 統一教会の広告表示を請け負ったのはGoogleということになる。テレビ朝日側も、統一教会の広告が表示されることを関知していなかったかも知れない。だとすると、それこそ問題の根が深い。

 よりにもよって、報道機関が運営するニュースサイトの広告表示を、内容も確認せずに巨大ITプラットフォーマーに丸投げし、反社会性の指摘される団体の宣伝を垂れ流していたことになる。Googleに主導権を譲り、統一教会のやりたい放題にさせていた、ということだ。

 私の他にも、この広告を目にした人たちがいてもおかしくはない。あるいは、私が目にしないだけで、他の報道機関でも同じことがあったかもしれない。あとから広告の削除要請をして、サイト運営者が「知りませんでした」で、済まされる話でもあるまい。統一教会批判を展開するテレビ朝日だが

 安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者(41)は、統一教会に恨みをもっていたとされる。母親が教団にのめり込み、多額の献金で家庭が崩壊したという。親族に無断で家や土地を売って1億円近くを教団に寄付していたことも報じられている。その統一教会の関連団体のイベントに安倍氏がビデオメッセージを送っていた。昨年9月のことだ。そこで安倍氏ははっきりと、こう言っている。

「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」

 これを見て山上容疑者は安倍氏に殺意を抱いたとされる。その韓鶴子が、このテレビ朝日の広告に映し出されて、文鮮明といっしょに『平和を愛する世界人』『天地人真の御父母』などと賞讃されている。

 山上容疑者の母親の例に限らず、統一教会の違法性が認められている献金や勧誘の実態は、ずっと以前から社会問題になっていた。それこそ有田氏がジャーナリストとして追及し、紀藤弁護士が法廷で戦ってきた。テレビ朝日の番組では、その反社会性も報じている。

 その統一教会から広告費としてGoogleはいうまでもなく、テレビ朝日も多少なりとも収益を得ているはずだ。ひょっとすると、テレビ朝日に入った広告費の原資は、山上容疑者の母親が寄付した1億円から出ているかもしれない。カネに色はない。社会の「無関心」が統一教会の増長を招いた

 統一教会から出たカネが、巨大IT企業はもとより、テレビ局の社員の給料となり、出演者の出演料になる。同局の情報番組に出演して、統一教会の反社会性を訴える有田氏や紀藤弁護士が出演料を得ていたとしたら、こんなに間抜けな話はない。いや、それ以前に番組には出演できないはずだ。脇が甘すぎる。

 そもそも有田氏は、統一教会の追及からはじまり、オウム真理教事件で名を広く知られるようになった。そして、先月10日の参議院議員選挙で落選するまで、2期12年にわたって参議院議員を務めた。世に名を知られるようになったきっかけが統一教会問題追及にあるのであれば、政治家だったうちに対策を講じるべき立場にあったはずだ。

 それが、これまで野放しにされていた統一教会に耳目が集まると、いまさらながらにテレビ番組を梯子して解説してまわる。30年前となにも変わらない。恥ずかしくはないのだろうか、と疑問にすら思う。それどころか、参議院議員だった時代に、オウム真理教の後継団体で、団体規制法による公安調査庁の観察対象にもなっている『ひかりの輪』の代表の上祐史浩氏と事実上の共著を出版しているのだから、呆れる。

 加熱する統一教会報道に“いまさら”という感覚が拭えないでいる。報道機関も統一教会の宣伝布教に加担していたからだ。それも大手IT企業と報道機関がいっしょになった無関心からくる垂れ流しだ。2年前に統一教会の祝賀イベントの広告を出して収入を得ておきながら、統一教会の反社会性を知らなかったなどと言い訳すれば、それこそ報道機関としての信頼性を失う。

 政治家が関連団体に祝電を送ったり、イベントに参加したりすることを「広告塔」として批判する以前に、カネが渡っているだけ悪質ともいえる。世界を席巻する巨大ITプラットフォーマーや、日本の報道機関の在り方も問われて然るべきだ。

 

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