【激変する安全保障】日米安保の「バランス」は崩れている!?

さあ あなたは どう ですか?

潮匡人

【激変する安全保障】日米安保の「バランス」は崩れている!? 「片務的ではない」と本質を見失った“偏差値エリート”たち

 ドナルド・トランプ米大統領が言うとおり「日米安保は不公平」である。だが、日本政府もマスコミもそう考えていない。例えば、NHKは「日米安保は『不公平』か」と題して、次のように「解説」した(7月10日「キャッチ!」)。

 番組前半、「これは、トランプ大統領の独自の考え方なのでしょうか?」との質問に、「外交・安全保障担当」の解説委員が「おそらく、そうでしょう」と答えた。

 安全保障を机の上だけで学んだインテリの誤解である。

 トランプ発言は、米国民のホンネである。だから共感を呼ぶ。もし、NHKが「解説」したとおりなら、大統領選の泡まつ候補で終わっていたはずだ。マスコミが投開票直前まで「ヒラリー・クリントン優勢」と報じ続けたことは記憶に新しい。彼らは何を間違えたのか、いまだに気づいていない。

 さらに番組は「条約には、トランプ大統領が不満を持つような内容が含まれていると思われますか?」と問い、解説委員が「私は必ずしも、そのような内容ではないと考えています」と答え、こう「解説」した。

 「アメリカに日本防衛の義務を課す代わりに、日本はアメリカ軍に基地を提供する義務を負います。双方が同じ義務を負う伝統的な同盟ではありませんが、一方だけが義務を負う片務的な内容ではありません。非対称ではありますが、双務的で、かつ、バランスも取れていると思います」

 NHKだけではない。保守派も、リベラル左派もみな、こう考えている。安倍晋三首相までが「日米双方の義務のバランスはとれている」と述べたから驚く

虚心坦懐(たんかい)に常識で考えてみよう。

 トランプ氏が言うとおり、「もし、日本が攻撃されれば、米国はあらゆる犠牲を払って日本を守るが、もし、米国が攻撃されても日本人はテレビでそれを見ていられる」のだ。事実、米国はクェートを解放した湾岸戦争を戦ったが、日本人はテレビで観戦した。

 なるほど、安保条約上、「米国に日本防衛の義務を課す代わりに、日本は米軍に基地を提供する義務」を負う。それを「双務的」(片務的ではない)と呼んでも間違いではない。

 だが、「あらゆる犠牲を払って日本を守る義務」と、その米軍に「基地を提供する義務」が、本当に「バランスも取れている」だろうか。もし、本気でそう思うなら、正常な神経ではない。偏差値エリートのマスコミ人から保守派の首相までが平然とこう述べて恥じない。

 軍事・安全保障は、命のやり取りをする世界である。そのコストもリスクも高い。だから尊い。戦後日本人は官民とも、右も左も、その本質を見失って久しい。

 ■潮匡人(うしお・まさと) 評論家・軍事ジャーナリスト。1960年、青森県生まれ。早大法学部卒業後、航空自衛隊に入隊。第304飛行隊、航空総隊司令部、長官官房勤務などを経て3等空佐で退官。拓殖大学客員教授など歴任し、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『安全保障は感情で動く』(文春新書)、『誰も知らない憲法9条』(新潮新書)など。


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