私は覚せい剤取締法違反で逮捕歴がある。
初犯なので執行猶予が付き刑務所に入らず保護観察処分となった。
保護観察所では監察官からレクチャーを受けたのだが、何度も監察官の首をひねらせた。
人はムシャクシャした時に覚せい剤を求めるとされているのに、私は真逆だったからだ。
欲求は突然湧き上がり、抑えられるものではないとも言うが、私はそれにも当てはまらない。
私の使用法はこうだと監察官に詳しく説明をした。
「覚せい剤の使用を心から楽しみにしている私は、購入費用をコツコツと貯める日々を送る。
覚せい剤の為の節約すら楽しく思っている。
そして購入費用が貯まったら体調や気分を整え万全の状態にする。
自己注射が下手なので、打てる気がするか否か自分に問い掛ける。
打てる気がしない日に欲求のみ高まる事は無いから、私には我慢の経験が無い。
せっかくの覚せい剤を全力で楽しむ為には全てが万全でなければならない。
大切なお楽しみを、ムシャクシャした嫌な気分の時に使うなど有り得ない事だ。」と。
監察官は前例が無いと言い、また首をひねる。
結局、監察官は用意してた私には当てはまらないパターンの資料を読み上げるしかなく全く共感出来ない私はボンヤリと聞いて終了した。