「乳房が透明だったらいいのに。」
一見よくわからないこの言葉、実は産後1ヶ月頃の産婦さんたちがよく言います。
嘘のようですが本当です。
「乳房が透明ならば、そこから分泌してくる母乳の流れや赤ちゃんがどの程度飲んでくれているかを可視的に把握できるから」だそうです。
その産婦さんたちはほとんどこうやっています。
実際にどれくらい出ているか知りたいし、自信もないため、母乳の前後で児の体重変化を測れる体重計を買って、なおかつ搾乳器で絞った母乳を、哺乳瓶で与えて、安心しています。ミルク缶に書かれている「この時期の平均哺乳量」とにらめっこして足りない分を計算し、ミルクで与えています。
朝顔の成長日記のように、事細かくノートやアプリに記録をすることで安心するタイプの産婦さんが多い気がしています。
助産師としては「時間があったら赤ちゃんとご自身の様子を観察してください」と伝えています。
大切なのはミルク缶と同じだけ飲ませる事ではありません。
あなただけの赤ちゃんに、あなただけから出る特注のおっぱいをいかに吸ってもらうかが大切です。
泣いたらあげるのではありません。
泣く前に赤ちゃんは何度も何度もあなたに、「おっぱい欲しい」のサインを出しています。
それに気付いてほしい。
スマホを見ながら、まだ飲ませる時間じゃないと判断していませんか?
そして、もっと自信を持ってください。
無事に赤ちゃんをはぐくみ、出産できたパワーが皆様にはあります。
ご自身のお体の変化を感じられるはずです。
赤ちゃんが泣いたら、自然と胸が張りませんか?
そのお乳を赤ちゃんに含ませたいと、体が自然に動きませんか?
その本能のままを、ぜひ、授乳に取り入れてみてください。
「3時間おきに、あげてください」という病院の指導はミルク授乳に限っての場合だけです。
(または医学的に特別な配慮を必要とする母児です。)
おっぱいは、いつでも、好きなだけ、含ませてあげてください。
あともう一つ。
おっぱいは溜まってから出すものではありません。
赤ちゃんの吸う刺激で、次々と作り出されるものです。
3時間経たないと、溜まらない気がしている方々は、上手におっぱいを含ませていない可能性が高いです。
分泌が低下する前に、母乳の希望が少しでもある方は、産後早めに助産師を呼んでください。
抱き方の工夫、含ませ方の工夫で、母乳栄養が続けられます。
待っていても乳房は透明になりません。
搾乳器での母乳を続けていたら、必ず分泌は低下します。
東京では助産師を呼ぶとおおむね7000円かかってしまいますが、その価値はあります。
だってミルク缶は、800g一つでだいたい2000円もするのですから。