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(公財)日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)
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2013-06-14 | e.t.c
【スポーツセカンドピニオン】

【第224回】 2012年10月30日
相沢光一 [スポーツライター]


注目のプロ野球ドラフト会議が終了
多くの指名選手を出した「少年硬式野球」の現在

【大阪桐蔭と光星学院から指名を受けた3人は大阪のボーイズリーグ出身】

 ペナントレースよりも注目度が高い!?ドラフト会議が終わった。

 今年のドラマは、メジャーリーグ挑戦を公言していた大谷翔平(花巻東)を北海道日本ハムが1位指名したくらいで、その他は順当に収まるところに収まったという感じだ。

 叔父さんが監督を務める巨人に入りたい一心で一浪した菅野智之は望み通り巨人が単独指名してくれたし、指名が競合してくじ引きとなった藤浪晋太郎(大阪桐蔭)は地元阪神が、東浜巨(亜細亜大)は出身地の沖縄に近い九州を本拠地にする福岡ソフトバンクが当たりくじを引いた。入団交渉はすんなり進むことだろう。くじに外れた球団以外は誰もが納得するドラフトだったといえる。

 ところで今年の夏の甲子園大会で決勝を戦った大阪桐蔭と光星学院(青森)からは3人が指名された。藤浪と光星学院の北條史也内野手(阪神から2位指名)、田村龍弘捕手(千葉ロッテから3位指名)だ。夏の甲子園大会の決勝まで勝ち進む原動力となったのだから彼らが指名されるのは当然ではあるが、3人にはそれとは別の共通点がある。いずれも小・中学校時代、大阪のボーイズリーグでプレーした選手。将来プロになることを視野に入れ、少年時代から硬式ボールを使うリーグで揉まれてきた野球エリートなのだ。

 ちなみに決勝戦のスタメン9人をチェックすると大阪桐蔭は8人がボーイズリーグ出身者。うち5人が大阪、2人が奈良、1人が石川のチームの出身だった。一方、光星学院のスタメンも6人がボーイズリーグ出身で、青森の高校にもかかわらず大阪のチームOBが3人、神奈川、三重、沖縄が1人ずついた。

 両校の大阪のボーイズリーグ出身選手は中学時代から互いの存在を知っていただろうし対戦したこともあるかもしれない。全国の高校野球の頂点を決める一戦は、実はレベルが高い大阪を主としたボーイズリーグOBの頂上決戦でもあったわけだ。

【野球少年がプロに至るまでのルートが桑田・清原あたりから様変わり】

 このような少年硬式野球出身の選手が甲子園で活躍し、プロ入りするのは今年に限ったことではない。最近の大物ではダルビッシュ有(レンジャーズ)、田中将大(東北楽天)、前田健太(広島)。少し前のケースでは松坂大輔(レッドソックス)、もっとさかのぼれば桑田真澄氏、清原和博氏がいる。

 小・中学校時代に少年硬式野球リーグで鳴らし、その実績を引っさげて野球名門高校に進学、甲子園で大活躍してプロ入りするというルートができたのは桑田・清原あたりからだろう。

 それ以前の世代には、そのようなルートはなかった。大半の子が野球を始めるのは小学時代だが、それはあくまで遊びだ。プレーする場所は野原や放課後の校庭。指導者もいないしユニフォームもない。好きな者同士が集まって三角ベースの草野球を楽しんでいたわけだ。

 その中で、もっとちゃんと野球をしたいと思った少年は地元の中学の野球部(軟式)に入る。そこで活躍して自信をつけた選手が高校の野球部に入って初めて硬式ボールを握る。この中から特別な才能を持ったひと握りの選手がその先にある大学や社会人、プロへの道を歩むというパターンだった。より高いレベルの野球をやりたい選手はそれぞれ独自に道を切り開き、実力をアピールしていくしかなかったのだ。

 今もこのパターンでプロまで上り詰める選手がいないわけではない(斎藤佑樹や澤村拓一、今年の巨人1位指名の菅野、ソフトバンク1位指名の東浜は軟式出身)。だが、大半の選手は小・中学校から硬式野球のチームに入団し専門のコーチに基礎から技術を教わり、試合経験を積むことでレベルアップを図るというプロセスを経るようになっている。

 ジュニア層の指導者に話を聞くと、このルートを歩まないと、せっかくの才能も伸びないことが多いという。Jリーグの各クラブは自前の選手育成組織を持っているが、これもこの考え方があるからだ。あるJリーグクラブの育成組織を取材した時、コーチから次のような話を聞いたことがある。

【中・高の部活での指導が才能の芽を摘むケースも】

「従来のような学校の部活に頼る選手育成はロスが多い。サッカー少年団に入って才能を発揮していた子が中学校のサッカー部に入る。指導者にもよるが、そこでは画一的な練習をさせられることが多く、また、その選手の個性に合った指導もされず、才能をつぶされるケースがある。中学で生き残っても高校のサッカー部に入ればまた違う指導者の元でプレーすることになる。また一から画一的な練習をさせられ伸びが止まる選手も多い。

 その点、クラブの下部組織はジュニアからユースまで一貫した指導が可能だ。ジュニア→ジュニアユース→ユースと年代が変わるごとにコーチ同士が申し送りをして、その選手の個性に合った指導を行う。そうすることで才能をスポイルしない育成ができる。また、クラブの育成組織に入ってくる少年の多くは、上のカテゴリーに進む向上心を持ち、その先にあるプロを目標にして練習する。その意識が選手のモチベーションにつながり実力を伸ばすことにつながる」

 これはどのスポーツでも共通することだろう。ところが、プロ野球の球団はそうした組織を持たず、選手育成を学校の部活に任せてきた。球児なら誰もが憧れる春と夏の甲子園大会があり、そこからプロで通用する素材が自然に育ってきてくれたからだ。

 しかし、Jリーグの育成担当コーチがいうように、そのような放置状態ではつぶれてしまう才能も少なくない。小中学生を対象とした硬式野球のリーグは、そうしたロスを少なくするためにアマチュアサイドが独自に造り出した選手育成制度と言っていいだろう。

 なお、現在日本には小・中学生を対象とする少年硬式野球リーグの統括団体は8つある。

・日本リトルリーグ野球協会=リトルリーグ
・日本リトルシニア中学硬式野球協会=リトルシニアリーグ
・日本少年野球連盟=ボーイズリーグ
・日本ポニーベースボール協会=ポニーリーグ
・全日本少年硬式野球連盟=ヤングリーグ
・全国少年硬式野球協会=サンリーグ
・九州硬式少年野球協会=フレッシュリーグ
・日本硬式少年野球連盟=ジャパンリーグである。

 いずれも似たような名称で区別がつきにくいが、これら団体の傘下には日本各地にリーグとそこに所属するチームがあり、球児の育成を担っているわけだ。

【歴史あるリトル・リトルシニア勢いを増すボーイズリーグ】

 この中で最も歴史があるのがリトル・リトルシニアリーグだ。リトルリーグが1955年、リトルシニアリーグが1972年の創設。現在は全国でリトルリーグが768チーム、リトルシニアは541チームが活動しているという。このリトル・リトルシニアリーグが輩出したプロ野球選手には清原和博氏をはじめ宮本慎也、井口資仁、松坂大輔、小笠原道大、多村仁、岩隈久志、湧井秀章、坂本勇人、中田翔などがいる。なお、日本ハムが1位指名した大谷翔平は地元岩手の水沢リトル、一関シニアのOBだ。

 これより創設は遅いが、今ではリトル・リトルシニアリーグを上まわる勢いでプロ野球選手を輩出しているのがボーイズリーグだ。1970年、大阪を中心とした28チームでスタート。その翌年、元南海監督で「親分」と呼ばれて親しまれた鶴岡一人氏が理事長に就任し、自ら率先して組織固めやPR活動を行ったことが功を奏して短期間で全国規模のリーグに成長した。現在では全国38支部、約680チームが活動している。

 このボーイズリーグから育ったプロ野球選手には桑田真澄氏をはじめ、立浪和義氏、福留孝介、小久保裕紀、黒田博樹、松田宣浩、内川聖一、内海哲也、ダルビッシュ有、田中将大らがいる。前述した藤浪、北條、田村の甲子園決勝進出トリオや、中日が1位指名した福谷浩司投手もボーイズリーグ出身だ。

 このリトル・リトルシニアリーグとボーイズリーグが少年硬式野球リーグの2大勢力。他の5団体は規模が小さく、特定の地域だけのリーグだったりする。

 ヤングリーグは全国組織ではあるものの傘下のチームは約80と少ない。出身者には今年のセ・リーグの新人王候補、野村祐輔(広島)がいる。ポニーリーグも全国組織だが活動の中心は関東だ。主な出身者は高橋由信、石井一久など。

 フレッシュリーグは九州限定の少年硬式野球リーグで杉内俊哉、本多雄一、長野久義ら九州出身のプロ野球選手がここから育っている。ジャパンリーグも九州主体のリーグだが、まだプロは育っていないようだ。サンリーグは北海道を中心としたリーグ。明石健志(福岡ソフトバンク)などがこのリーグから出ている。

 なお、それぞれのリーグにはナンバー1を決める大会があるようだが、各リーグの強豪を集めた中学年代の硬式野球クラブチーム日本一決定戦もある。全日本中学野球選手権がそれで、通称は「ジャイアンツカップ」。名称からも分かるように読売新聞社や読売巨人軍などが主催する大会だ。

 中学でのトップレベルの硬式野球選手は、いわばプロの卵。そんなエリートたちが日本一の証として設定されたジャイアンツカップを目指して戦うわけだ。ジャイアンツという響きや主催者に対しては好印象を持つはずで、その中の選手が大成した時「巨人に入りたい」と思ってもらえるよう布石を打っていると勘ぐりたくなってしまう。いずれにせよ巨人を持つ読売グループが目をつけているように今、少年硬式野球はプロ野球を育てるために欠かせないものになっていることは間違いない。

 昔のように男の子の誰もが野球をやり、その中から好選手が自然に育つ時代ではなくなった。現在のプロ野球を支えているのは、少年硬式野球リーグといってもいいのかもしれない。



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