銀河パラダイス

 オリジナルのケモノ耳の少年を描いた、MACHOのラフ画を中心に、ミィ~ネの駄文も

凝固できない荷物

2011年05月01日 09時21分19秒 | 短文
 俺の名は、ツルギ=クサナギ。忘れられた街で、配達人をやっている。
依頼を受ければ、どんな物でも届け先へ、無事に運ぶ。だが、難しいのもある。

過去、現在、未来という時間の系列から外れた世界。ここは、普通の法則とは違う。
その特異な法則を知らなければ、指定された時間と場所に配送するなんて、できない。
しかし、あれを運ぶのは、至難の業である。

…それは、夢だった。曖昧な依頼人の依頼。それだけでも厄介だ。真剣に言うのだ。
”忘却された夢”を自分でも知らない誰かへと、だと? 一度は断ろうとしたさ。

 「声が聞こえるのです。けれども、その声が誰かは、知りません」

変に真剣に思えるかもしれない。でも、誰も俺に依頼する奴は、本気なのさ。
俺に頼むだけでも、稀に偶然、たまたま、巡り会わせが悪い悪運が必要だからな。

 「酷く困ってるようで、毎晩、声が少しずつ元気がなくなってるのです」

最期の悪運だが、この依頼人は、声でノイローゼになって、衰弱死をしたのだ。
ほんの少し前、俺は、心霊スポットへ配達した帰りに、この自縛霊に呼び止められた。
面倒な、依頼人は、たいてい、面倒な依頼をする。

 「ただ一つ、あります」

手掛かりは、ヒカリ。自縛霊は、さっき、消えた。霊を一瞬で消滅させる、光。

 「私はもうすぐ消えます。ホラ、半分、消えかけてます。これが、多分…」

 本当に霧のように、気配すらない。この手に残る痺れ、体温が急激に下げられた
さっきの依頼人が握手を求めて、したら、この有様……がなければ、白昼夢だな。

呻く人間の声。さっきの、人間が生きていた頃の記憶ではない、時代との接点

 「また、声がする」

  「ヒカリってなんだ?」

 「………」

悪夢みたいな光景だった。人も周りの景色も融けて、グニャグニャになった。

 「それは、現実だよ。ありのままのね」

その世界は、とうの昔に滅んでいた。闇がずっと、続いている。
人間たちには、それが耐えられなかった。だから、彼らは平凡な昔の世界を
いつも、常日頃から頭に思い描いていたのだ。

  「俺の声が聞こえるのか?」

 「いいや。ただの、私の独り言だよ」

 混沌とした闇が微笑んだ、気がする