「再会」
何十年振りかに降りた駅は様相がすっかり変わっていた。記憶だともっとごちゃごちゃした駅前だったのに今はすっかりと整備されてロータリーもできていた。
毎日のように、学校帰りに途中下車しては夜まで遊んでいた街。
勤めを始めてからは深夜帰りでよくタクシーを利用していた街。
唯一面影が残っているのは駅前の交番。
しかしこの交番もやたらと小奇麗になっている。
福本ちはや、職業SOHOで仕事をしている言わば自由人。そして独身。年齢四十五歳。
今日は卒業以来初めての同窓会に出席をするためにやってきた。同窓会といってもほんの数名の有志の集まりで今回、ちはやの為に集まってくれた面々で殆どが柔道部出身だった。
当時の担任が柔道部の顧問をしていた関係でやたらとこのメンツは現在も仲が良くしょっちゅう集まっては飲んでいると聞いていた。
たまたま実家で用事があることを当時の担任に伝えたらこのような集まりに発展した。
(高校を卒業して一体何年たったのかぁ?
もう皆結婚したりしてるんだろうな。仕事でも偉くなってる友人はいるんだろうな。)
そんなことを駅前でぼんやりと思う。
目的の店を探そうと歩き出した時、
「福本じゃない?」
(?誰?)
振り向くとそこには懐かしい顔。
「!大山君?」
「そうだよ!久しぶりじゃん。後姿ですぐわかったよ。」
「本当?太ったし、老けたでしょ?大山君は変わらないね。」
「いや~そうでもないよ。白髪がメッチャ増えてさ。今日は福本がメインだからなぁ。俺実はとっても楽しみにしていたんだよ。」
「またまた嘘ばっかし。急にゴメンね。」
「いいんだよ。山岡からいきなりメールで召集かかったけど福本が来るなら予定はみんな空けるさ。」
「今は結婚してるんでしょ?」
「うん、娘が二人と息子が一人いるよ。福本は覚えてるか?一つ下の柔道部の女子で高橋恵。そいつと結婚したんだよ。」
「知らないよ。だって柔道部じゃなかったジャン、私。」
「そっか。オッ、時間だよ、そろそろ行くか?」
「うん。」
そのまま歩き出すと大山は福本に手をだして荷物を持ってくれた。
「貸しなよ、重いだろ、二つも。」
「うん、ありがと。」
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
「いえ、予約しているんですけど。予約名は
多分、山岡です。」
「はい、山岡様本日十名様でのご予約ですね。お待ちしてました。」
「ちはや~~~!元気してた?ウン?何で大山君と一緒なの?ひょっとして待ち合わせか?」
「あ~山岡ゆかりだ!元気?違うよ。駅で偶然会ったんだよ。」
「そうそう、偶然だよ!」
「まぁまぁ、ちはやはそう思ってるだろうけど実は大山君が駅で待ってたんじゃないの?」
「ばーか!ねえし。偶然だよ。」
さっさと前を歩いていく大山。
「ほら。お前ら来いよ。」
「全くね、久しぶりに会ったのにに変わらないよね。行こうよ、ちはや。」
「うん。」
全く嬉しいくらいに変わっていない。あの頃みたいなテンポのいい会話。
ちはやの緊張は一気に解けていった。
「久しぶりだね~~。ちはやは元気してた?」
「うん、ゆかりは?元気だった?」
「まぁまぁかな、いろいろあったけど今は元気だよ。」
「お久しぶりです。福本さん、俺わかる?」
「川上君、川上春樹君だよね、だってかわってないじゃん。」
「みな変わってないなぁ。」
「じゃぁ、そろそろ始めますか。今回は先生は遅れてきますので先に初めててくれと連絡が先ほどありました。本日はお忙しいところ急な召集にも関わらずお集まりくださいましてありがとうございます。本日はスペシャルゲストととしてあの福本ちはやさんがいらしてます。というわけで福本さん、どうぞ。」
「え~マジですか?」
「そうそう、マジですよ。」
「それじゃ、今日は忙しいのにも関わらず集まってくれた皆様、卒業以来お会いしていなかった方ばかりですが皆様本当に変わらずビックリと同時に嬉しいです。」
「はい、では再会を祝して乾杯!」
「ちはや、お帰り!」
「福本、今日は気を使わずに楽しもうな。」
「かんぱーい!」
楽しい宴は始まった。
語っても語っても語りつくせない話。
楽しいひと時。
結構飲んでしまったちはやはずっと大山の隣で飲んでいる。
「ねえ、大山君、どうして私を振ったの?」
「え~!そっくりちはやに返すよ。その質問。」
「違うの?」
「違うよ。俺がちはやに振られたんだって思ってた。」
「うそ!」
「はいはい、お二人さん、何を深刻な話をしているのかな?」
「いやいや、大山君が何で私を振ったの?って聞いたら大山君も同じことを聞いてきたから。」
「俺、絶対振ってないぞ。」
「私も振ってないよ。」
「まぁまぁ、そういや二人は付き合って痛んだよな。あれ、高校のときだっけ?」
「ううん、高校でてクラス会をやった後からだよね。」
「そうそう、お前らあの後付き合いだしたんだよな、いつの間にか。で本当の所はどっちが振ったんだ?」
「わからない、あのときに直接じゃなくて田所君に伝言みたいに言われたよ。」
「・・・そっか。田所かぁ。あの頃俺忙しくてあまり会えなくて。いろいろ奴にはなしたのかもなぁ。ゴメンな。俺が悪かった。」
「いいよ~~もう。ただ一度聞いてみたかっただけだから。もうおしまい。」
「じゃぁ、もう一回乾杯だな。」
明るい木下の仕切りで二人は小さく乾杯をした。
場もかなり盛り上がり時間も終了に近づいた。
「皆さん、そろそろお開きの時間になりました。心残りはあるでしょうがここでお開きにします。」
幹事役の木下の声で一本締め。
「はい。皆様お手を拝借。ヨッ!」
パン!
「お疲れ様でした。二次会はゆかりちゃんの店だよ。」
「ちはや。二次会来いよ。」
「でも電車が無くなっちゃうよ。」
「大丈夫だよ。皆ちはやの為にオールする気できているよ。それにゆかりの店にもいってやらないとな。」
「そうだね、ゆかりのお店も見たいし。」
店を出ると皆が待っていた。
幹事役の木下始め皆が待っていてくれた。
「ちはや、行こうぜ。ゆかりが一足先に行って店を開けてくれているぞ。ちはやの為にだってさ。俺らはいつでもいけるけどちはやはそうはいかないものな。皆付き合うぜ。」
「うん、行くよ。勿論!」
「よし、皆行くぞ~~」
ぞろぞろと良い年をした面々が歩いていくのもなかなか面白い。
大山がちはやに歩きながら話しかけてきた。
「いいか、ちはや。俺らはずっと友達だからな。ちはやが連絡くれれば直ぐに集まるからさ。たまにはこっちに帰って来いよな。」
「ありがと、そうするね。」
「さぁ、まだまだ夜は長いぞ!」
月明かりが綺麗な晩だ。
さて、朝まで飲んじゃうっか。たまにはいいよね。
THE END
何十年振りかに降りた駅は様相がすっかり変わっていた。記憶だともっとごちゃごちゃした駅前だったのに今はすっかりと整備されてロータリーもできていた。
毎日のように、学校帰りに途中下車しては夜まで遊んでいた街。
勤めを始めてからは深夜帰りでよくタクシーを利用していた街。
唯一面影が残っているのは駅前の交番。
しかしこの交番もやたらと小奇麗になっている。
福本ちはや、職業SOHOで仕事をしている言わば自由人。そして独身。年齢四十五歳。
今日は卒業以来初めての同窓会に出席をするためにやってきた。同窓会といってもほんの数名の有志の集まりで今回、ちはやの為に集まってくれた面々で殆どが柔道部出身だった。
当時の担任が柔道部の顧問をしていた関係でやたらとこのメンツは現在も仲が良くしょっちゅう集まっては飲んでいると聞いていた。
たまたま実家で用事があることを当時の担任に伝えたらこのような集まりに発展した。
(高校を卒業して一体何年たったのかぁ?
もう皆結婚したりしてるんだろうな。仕事でも偉くなってる友人はいるんだろうな。)
そんなことを駅前でぼんやりと思う。
目的の店を探そうと歩き出した時、
「福本じゃない?」
(?誰?)
振り向くとそこには懐かしい顔。
「!大山君?」
「そうだよ!久しぶりじゃん。後姿ですぐわかったよ。」
「本当?太ったし、老けたでしょ?大山君は変わらないね。」
「いや~そうでもないよ。白髪がメッチャ増えてさ。今日は福本がメインだからなぁ。俺実はとっても楽しみにしていたんだよ。」
「またまた嘘ばっかし。急にゴメンね。」
「いいんだよ。山岡からいきなりメールで召集かかったけど福本が来るなら予定はみんな空けるさ。」
「今は結婚してるんでしょ?」
「うん、娘が二人と息子が一人いるよ。福本は覚えてるか?一つ下の柔道部の女子で高橋恵。そいつと結婚したんだよ。」
「知らないよ。だって柔道部じゃなかったジャン、私。」
「そっか。オッ、時間だよ、そろそろ行くか?」
「うん。」
そのまま歩き出すと大山は福本に手をだして荷物を持ってくれた。
「貸しなよ、重いだろ、二つも。」
「うん、ありがと。」
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
「いえ、予約しているんですけど。予約名は
多分、山岡です。」
「はい、山岡様本日十名様でのご予約ですね。お待ちしてました。」
「ちはや~~~!元気してた?ウン?何で大山君と一緒なの?ひょっとして待ち合わせか?」
「あ~山岡ゆかりだ!元気?違うよ。駅で偶然会ったんだよ。」
「そうそう、偶然だよ!」
「まぁまぁ、ちはやはそう思ってるだろうけど実は大山君が駅で待ってたんじゃないの?」
「ばーか!ねえし。偶然だよ。」
さっさと前を歩いていく大山。
「ほら。お前ら来いよ。」
「全くね、久しぶりに会ったのにに変わらないよね。行こうよ、ちはや。」
「うん。」
全く嬉しいくらいに変わっていない。あの頃みたいなテンポのいい会話。
ちはやの緊張は一気に解けていった。
「久しぶりだね~~。ちはやは元気してた?」
「うん、ゆかりは?元気だった?」
「まぁまぁかな、いろいろあったけど今は元気だよ。」
「お久しぶりです。福本さん、俺わかる?」
「川上君、川上春樹君だよね、だってかわってないじゃん。」
「みな変わってないなぁ。」
「じゃぁ、そろそろ始めますか。今回は先生は遅れてきますので先に初めててくれと連絡が先ほどありました。本日はお忙しいところ急な召集にも関わらずお集まりくださいましてありがとうございます。本日はスペシャルゲストととしてあの福本ちはやさんがいらしてます。というわけで福本さん、どうぞ。」
「え~マジですか?」
「そうそう、マジですよ。」
「それじゃ、今日は忙しいのにも関わらず集まってくれた皆様、卒業以来お会いしていなかった方ばかりですが皆様本当に変わらずビックリと同時に嬉しいです。」
「はい、では再会を祝して乾杯!」
「ちはや、お帰り!」
「福本、今日は気を使わずに楽しもうな。」
「かんぱーい!」
楽しい宴は始まった。
語っても語っても語りつくせない話。
楽しいひと時。
結構飲んでしまったちはやはずっと大山の隣で飲んでいる。
「ねえ、大山君、どうして私を振ったの?」
「え~!そっくりちはやに返すよ。その質問。」
「違うの?」
「違うよ。俺がちはやに振られたんだって思ってた。」
「うそ!」
「はいはい、お二人さん、何を深刻な話をしているのかな?」
「いやいや、大山君が何で私を振ったの?って聞いたら大山君も同じことを聞いてきたから。」
「俺、絶対振ってないぞ。」
「私も振ってないよ。」
「まぁまぁ、そういや二人は付き合って痛んだよな。あれ、高校のときだっけ?」
「ううん、高校でてクラス会をやった後からだよね。」
「そうそう、お前らあの後付き合いだしたんだよな、いつの間にか。で本当の所はどっちが振ったんだ?」
「わからない、あのときに直接じゃなくて田所君に伝言みたいに言われたよ。」
「・・・そっか。田所かぁ。あの頃俺忙しくてあまり会えなくて。いろいろ奴にはなしたのかもなぁ。ゴメンな。俺が悪かった。」
「いいよ~~もう。ただ一度聞いてみたかっただけだから。もうおしまい。」
「じゃぁ、もう一回乾杯だな。」
明るい木下の仕切りで二人は小さく乾杯をした。
場もかなり盛り上がり時間も終了に近づいた。
「皆さん、そろそろお開きの時間になりました。心残りはあるでしょうがここでお開きにします。」
幹事役の木下の声で一本締め。
「はい。皆様お手を拝借。ヨッ!」
パン!
「お疲れ様でした。二次会はゆかりちゃんの店だよ。」
「ちはや。二次会来いよ。」
「でも電車が無くなっちゃうよ。」
「大丈夫だよ。皆ちはやの為にオールする気できているよ。それにゆかりの店にもいってやらないとな。」
「そうだね、ゆかりのお店も見たいし。」
店を出ると皆が待っていた。
幹事役の木下始め皆が待っていてくれた。
「ちはや、行こうぜ。ゆかりが一足先に行って店を開けてくれているぞ。ちはやの為にだってさ。俺らはいつでもいけるけどちはやはそうはいかないものな。皆付き合うぜ。」
「うん、行くよ。勿論!」
「よし、皆行くぞ~~」
ぞろぞろと良い年をした面々が歩いていくのもなかなか面白い。
大山がちはやに歩きながら話しかけてきた。
「いいか、ちはや。俺らはずっと友達だからな。ちはやが連絡くれれば直ぐに集まるからさ。たまにはこっちに帰って来いよな。」
「ありがと、そうするね。」
「さぁ、まだまだ夜は長いぞ!」
月明かりが綺麗な晩だ。
さて、朝まで飲んじゃうっか。たまにはいいよね。
THE END