「ウルトラセブン」伝説の全49話<前編>
1967年10月1日から1968年9月8日にかけて放送された国民的特撮作品『ウルトラセブン』。
ウルトラ警備隊とウルトラセブンが、地球侵略を狙う宇宙人と戦う姿を緻密なメカニック描写とともに描き、現在まで続く人気を博しています。
“ウルトラセブン55周年”を記念して、第1話から第25話までを振り返ります――。
第1話「姿なき挑戦者」
日本各地で人間の消滅事件が発生。地球防衛軍は宇宙人の仕業だとして、ウルトラ警備隊に捜査命令を出した。
フルハシとソガが、防衛隊員が自動車ごと消えた現場にポインターで急行する途中、二人の前にモロボシ・ダンと名乗る謎の男が現れた。
彼によると、今回の事件は地球侵略を企む宇宙人の仕業だという。地球の平和を守るため、ウルトラセブンとウルトラ警備隊の戦いが始まった――。
【制作裏話】
検問で車検証を出した途端に消えてしまう運転手は、ウルトラセブン撮影班のロケバスのドライバーが演じている。
なお、アンヌがダンに対して「“あなたの”地球がピンチに立たされているのよ」と言うシーンがある。
これは、アンヌからの「隊員を助けてくれたお礼に何かプレゼントしたい」という申し出に、ダンが「地球!」と答えるシーンがあったため。
しかし、放送ではこのシーンがカットされてしまっているので、唐突な台詞となっている。
ちなみに、第1話は制作順では第5作目で、人力で開け閉めしていた作戦室の自動ドアが滑車で左右同時に動くようになったという。
第2話「緑の恐怖」
宇宙ステーションV3勤務の石黒隊員邸の庭に、謎の隕石が落下した。現場に急行したダン隊員は、隕石がワイアール星で産出される金属でできていることを見抜く。
時を同じくして、石黒隊員が休暇で地球に一時帰還。ウルトラ警備隊の出迎えを受け自宅に戻ったところ、石黒隊員宛てに送り主不明の謎の荷物が届いた。
その物体からは謎の電波が発せられ、石黒隊員はみるみるうちに緑色の植物怪物に変身し、街ゆく人々を襲い始めた――。
【制作裏話】
メディカルセンターで、麻酔ガンのパラライザーでワイアール星人に立ち向かうシーンがアンヌ役のひし美ゆり子氏のファーストカット。
1967年7月17日月曜日の午前中の撮影だったという。
また、ワイアール星人のスーツアクターは複雑な動きが必要ないため、仕出しの人がやっていたが、脱水症状と酸欠で倒れてしまったとのこと。
なお、セブンとワイアール星人との戦いの時、アンヌ隊員が唐突に「ウルトラセブン頑張って!」と叫ぶシーンがある。
これは第1話のラストで、キリヤマ隊長がウルトラ警備隊を救ってくれた7番目のヒーローにちなんで「ウルトラセブン」と命名したシーンがカットされてしまったため。
第3話「湖の秘密」
木曽谷付近に巨大な物体が落下したとの情報を受け、ダンとフルハシが調査に向かうと、二人の前に謎の少女が現れた。
二人の前から姿を消した少女は、湖のほとりに着陸している宇宙船の中にいたが、船内に発生した催眠ガスで3人とも眠らされ、ピット星人にウルトラアイを盗まれてしまう。
メディカルセンターに運ばれた少女だったが、同じ姿をした別の少女が現れ、宇宙船から指令を出すと、湖から宇宙怪獣エレキングが現れた――。
【制作裏話】
第2話と並行して、最初に撮影された作品。富士五湖の西湖と奥多摩でロケが行われた。
午前中、アンヌ役のひし美氏は髪をアップにして撮影していたが、午後に現場に顔出した満田監督に「SFなのに都はるみみたいだ」と言われ、髪を下ろすことになった。
しかし、制作費の関係で午前中に撮影した分の撮り直しができないため、髪を下ろすシーンが急遽付け加えられた。
ちなみに、アンヌがパラライザーを撃つシーンで、銃が重すぎて手が震えてしまうということで、手のシーンは助監督の本多猪四郎監督の息子の隆司氏が吹き替えている。
エレキングは電気うなぎがモチーフになっている。体色が最初は白だったが、撮影が進むにつれて黄色くなっていったという。
エレキングが川を下るウルトラ警備隊を攻撃するシーンは、美センのオープンセットに岩山のミニチュアセットを組んで撮影されている。
アンヌ役のひし美氏が初めて行ったロケが、このウルトラ警備隊がボートに乗って川を下るシーンだったという。
ダン越しのエレキングのシーンでは、東宝技術研究所のフロントプロジェクションが使用されたが、スクリーンの継ぎ目が映ってしまうため後半はあまり使われなくなった。
なお、この作品が撮影された日、森次氏は40度近い高熱を出していたとか。
第4話「マックス号応答せよ」
謎の船舶消失事件の極秘調査のため、ダンの運転するポインターで原子力船マックス号へ向かったソガ隊員とアマギ隊員。
その帰り道、ダンは車の故障を装った謎の女に不意を襲われ、ウルトラアイを盗まれてしまう。
船舶消失地点に到着したマックス号も謎の赤い霧に襲われ、宇宙空間まで運ばれてしまう。それは、地球防衛軍の壊滅を狙うゴドラ星人の仕業だった――。
【制作裏話】
冒頭のポインター走行シーンで、英語詞曲『ULTRA SEVEN』が初めて使われた。
マックス号の中でタケナカ参謀を案内する船員は、ウルトラセブンのスーツアクターを務めていた上西弘次氏が演じている。
また、この回からウルトラホーク発進時に「フォース・ゲート・オープン!」という満田監督による英語アナウンスが加わっている。
この作品が満田監督の下での初めてのロケで、主要ロケ地は朝霞高原。撮影後の宴会で、満田監督自身がステージ上で宴会芸をやって盛り上げていたとか。
マックス号が停泊している設定の海岸は、本栖湖でロケが行われている。
なお、巨大化したゴドラ星人とセブンの戦闘シーンのBGMは、不採用となった主題歌候補曲のインストゥルメンタルver.が使われている。
のちに、この曲には『ウルトラセブンの歌PART2』という曲名がついた。
第5話「消された時間」
南極の地下にある地球防衛軍科学センターから、“地球の頭脳”と呼ばれるユシマ博士が地球防衛軍極東基地のレーダー設備を強化するため来日した。
極東基地に到着したユシマ博士はウルトラ警備隊の出迎えを受け、フルハシ隊員が宿泊先のホテルで身辺警護を担当することになった。
しかし、ユシマ博士はジェット機乗船中に、地球征服を企む宇宙蝦人間ビラ星人によって、心を乗っ取られていた――。
【制作裏話】
ユシマ博士が宿泊したホテルは、現在の「ミスティイン仙石原」。
セブンとビラ星人が戦うシーンの神社のミニチュアセットは、この回の美術を担当した池谷仙克氏によると、上野や浅草近辺を想定したという。
また、ダンがポインターの車中で唐突に「なぜあんなことを言ったのだろう」というシーンがある。
これは、ユシマ博士が「そうだ。昨日は宇宙人の夢を見たな。地球防衛軍に一人だけ宇宙人が紛れ込んでいてね」と言うシーンがカットされてしまったため。
第6話「ダーク・ゾーン」
地球防衛軍のアンヌの部屋に「宇宙のある都市からやってきたが、重症を負っているため匿ってほしい」と言う黒い影が現れた。
その頃、地球防衛軍に宇宙空間都市・ペガッサ市から、動力系統の故障により修理が終わるまで地球の軌道変更を要請する無線が入った。
しかし、地球の軌道変更は現実的に不可能。マナベ参謀は「ペガッサ市を破壊する以外に地球を防衛する道はない」との結論に達するが――。
【制作裏話】
作戦室の通信員の一人(一番右端)を、ウルトラセブンのスーツアクターだった上西弘次氏が務めている。
アンヌ隊員がプライベートルームで紅茶をこぼすシーンは撮り直しができないので、ひし美氏はとても緊張したとのこと。
ちなみに、ひし美氏が一番好きな宇宙人はペガッサ星人とのこと。
なお、物語終盤でアンヌの部屋を抜け出したペガッサ星人とダン隊員が対峙するのは、世田谷区総合運動場体育館の前。
第7話「宇宙囚人303」
山奥で2人の猟師が宇宙船のような謎の物体を発見、その後何者かに襲われた。その後、ガソリンスタンドが怪物に襲われ、ガソリンを口から補給した。
ちょうどその頃、宇宙ステーションV3と地球防衛軍極東基地が宇宙からの怪電波をキャッチした。
その電波を解読すると発信元は惑星キュラソの連邦警察で、「犯罪者303号が宇宙に逃亡。凶悪な殺人鬼なので発見しだい殺害せよ」という内容だった――。
【制作裏話】
第10話と一緒に撮影されたこの作品では、ガソリンスタンドの店員役で『ウルトラQ』で戸川一平役を務めたが西城康彦氏が出演している。
劇中に出てくるガソリンスタンドは、深大寺近くにあるガソリンスタンドがロケ地として使用されている。(当時の建物は現存していない)
なお、キュラソ星人に襲われる家族の3人の子供たちは、『快獣ブースカ』のキャストが特別出演している。
長男役の山村哲夫氏は、第25話『零下140度の対決』の冷凍ガンダーと31話『悪魔の住む花』の宇宙細菌ダリーのスーツアクターも務めているという。
第8話「狙われた街」
北川町の住人が突然狂暴化する不可解な事件が続発。しかも、暴れている時の記憶は無くなっているという。
さらに、パトロール中に北川町駅前の自販機で買ったタバコを吸ったフルハシとソガが作戦室で暴れ出し、その後昏睡状態になる。
ダンがタバコを調べると、中に赤い結晶体が入っており、化学班による調査の結果、その結晶体は地球上の物質ではないことが判明したーー。
【制作裏話】
アンヌの叔父の葬儀が行われているのは、世田谷区喜多見にある慶元寺。
ダンとアンヌがたばこの自販機を見張るシーンは、小田急線の向ヶ丘遊園駅前にあった喫茶店でロケが行われた。
スペル星人の隠れ家である通称「百窓(ひゃくまど)」は、美センよりもっと奥の岡本町にあった住宅で、1985年に解体されて別の家が建っており現存していない。
セブンとメトロン星人との格闘シーンは、10月17日、19日(Dステージ)、20日(Aステージ)とステージを変えて丁寧に撮影されている。
あの有名なクロージング・ナレーションは台本には書かれておらず、実相寺監督が付け加えたものである。
ウルトラセブンは海外での販売を考慮して、映像に日本的な風習・風景は取り入れてはいけないという不文律があった。
しかし、実相寺昭雄監督は、脚本である円筒形のビルとされていたメトロン星人のアジトを古ぼけたアパートにしてしまい、さらに、畳にちゃぶ台というシーンを撮ってしまう。
その映像を観たTBSのプロデューサーの三輪俊道氏は怒って局中を探し回ったが、彼は隠れて出てこなかったという。
なお、本作でも、遠近感の強調や光と影の演出、あおり&ナメショット、シンメトリー配置などが特徴の実相寺アングルが随所にみられる。
第9話「アンドロイド0指令」
ポインターでパトロール中のフルハシとソガの前に、謎の金髪美女が現れた。
フルハシをダンと誤認したその女が握手をしたところ、フルハシは電撃を受けて気絶。手には、謎の文字が書かれたブローチが握られていた。
一命を取り留めたフルハシだったが、アマギの調査によると、ブローチは宇宙金属でできており、謎の文字はアンドロイド0指令と書かれていたーー。
【制作裏話】
この作品は上原正三氏によるウルトラセブン初脚本だが、アンヌの台詞は1行のみしかない。
これは、ひし美氏がスタッフやキャストと飲み歩いて女優としての意識に欠けていると判断した満田監督がお灸をすえる意味で行ったという。
しかし、当の本人は「台詞が少なくてラクだわ」と逆に喜んでいたという(笑)
ロケ地としては、当時の松屋銀座の店内にあったおもちゃ売り場が使われている。セブンが階段を駆け上がるシーンも同店での撮影。
なお、チブル星人の「チブル」は沖縄の言葉で、「頭」を意味する。
第10話「怪しい隣人」
交通事故で足を骨折した少年が別荘で療養していたところ、隣の家に引っ越してきた隣人が24時間椅子に座り続けて何かを造っているのを目撃する。
そんなある時、鳥が死んだまま空中に浮かび続けるという現象が起こり、その光景に驚いた家主はウルトラ警備隊に通報する。
ダンが鳥が浮かんでいた空間に飛び込むと、そこは第17惑星から来たイカルス星人が四次元空間に作った地球侵略のための前線基地だった――。
【制作裏話】
イカルス星人の肩から首にかけての毛は、亀の子タワシの繊維を植えたもので、スプレーで黒くしている。
着ぐるみはの納品時は綺麗すぎたため、円谷プロの造形部が表面をスポンジで丸く擦って、自然な汚しをかけたという。
なお、イカルス星人が耳をパタパタするシーンでは、スタッフが後ろに立って人力で行っているが、DVDではその手が見えている。(Blu-rayでは消されている)
ちなみに、この回の撮影で使われた屋敷で、差し入れのみかんを持ってきたひし美氏がちょっとしたやらかしをしている。
照明スタッフにみかんを投げたところ、シャンデリアを直撃して一部が欠けてしまい、弁償する羽目になってしまってギャラ2本分がパーになったとか。
なお、ラストシーンでポインターを運転しているのはダンではなく、ポインター専門のドライバースタッフの小山氏。
第11話「魔の山へ飛べ」
群馬県の石見山で若者が死亡する事件が相次ぎ、死因はいずれも不明だという。
ダンとソガがさっそく調査に訪れたところ、何者かが岩陰から放った銃による攻撃を受けたダンが命を落としてしまう。
その後、ウルトラ警備隊は石見山の洞窟に向かうが、謎の宇宙人と交戦になり、姿を消した場所には、人の生命を吸い取りフィルムに転写する装置が落ちていたーー。
【制作裏話】
満田監督を怒らせてしまったひし美氏は、お灸を据える意味でこの回での出番が無くなくなってしまったという。(ロケには参加していた)
ロケ地は浅間山の鬼押出周辺で、洞窟シーンは三浦半島で撮影された。
この回では、ワイルド星人に殺された幸村役でセブンのスーツアクターの上西弘次氏、牧場の3人の牧童がをスーツアクターの新垣輝雄氏、鈴木邦夫氏などが演じている。
ダンの魂と肉体の合成作業を行う装置は、TBSが所有していたオプチカルプリンターで、ダンが生還するシーンは円谷プロ本社の試写室で撮影が行われた。
この回で、セブンの額のビームランプが点滅するシーンがあるが、電極の接触不良によるもので意図したものではない。
しかし、この偶然の出来事が活かされ、第25話以降は「セブンのエネルギーが著しく低下すると額のビームランプが点滅する」という設定が追加されることになる。
なお、本作では、脚本を担当していた金城哲夫氏と上原正三氏が医師役でカメオ出演している。
第12話「遊星から愛をこめて」
東京で、数日の間に若い女性が突然倒れて意識不明になる事件が相次いだ。
倒れていた女性は皆、同じ型の時計型のアクセサリーをしており、驚くことに地球上には存在しない金属で作られているという。
さらに、女性たちは白血球が皆無に近くなる原爆病に似た症状になっていた。その頃、アンヌ隊員は、高校時代の友人を久しぶりに訪ねるがーー。
【制作裏話】
スペル星人は当初、脚本家の佐々木氏によるデザインでカブトムシのような甲虫系の怪獣の姿をしていた。
しかし、実相寺監督が「上下白タイツでケロイドのような痣のある姿」というデザインを指定し、「自身の信条と相反する」と激しく抵抗する美術の成田氏を押し切って変更させた。
ちなみに、この回は現在は欠番になっており、視聴できなくなっている。
そもそもの発端は、本エピソードの放送から3年後、小学館の学年誌の付録についた怪獣カードで「ひばく星人」として紹介されたことにある。
これをきっかけに、原爆被害者団体が「被爆者を怪獣扱いしている」と出版社と円谷プロに抗議。
1970年10月10日付の朝日新聞でも報じられ、全国の被爆者団体と反核団体からの抗議が円谷プロと小学館に殺到することになった。
そして、1970年10月21日、事態の収束を図るため、円谷プロの当時の社長・円谷一氏が被爆者団体に第12話の封印を約束する運びとなったのが欠番騒動の流れとなっている。
しかし、本作はウルトラマンでフジ・アキコを演じた桜井浩子氏が出演し、アンヌのラストの台詞が最終回でのダンからアンヌへの台詞の伏線にもなっている。
欠番の原因が「被爆者を怪獣扱いしている」というクレームであるならば、佐々木氏による本来のデザインを元にスペル星人を再造形して特撮シーンを撮り直せばいいのではなかろうか。
いずれにしても、『ウルトラセブン』を欠番の無い完全体に戻すために、何かしらの形での復活が望まれる。
第13話「V3から来た男」
地球の防空圏に侵入し、宇宙ステーションV3のパトロール隊を撃破した正体不明の宇宙船が、燃料を切らして地球に潜入した。
敵の宇宙船の攻撃を受け、命からがら極東基地に戻ったパトロール隊のクラタ隊長は、士官学校以来の親友であるキリヤマ隊長と再開する。
部下の敵(かたき)をとろうと出撃しようとするクラタだったが、キリヤマ隊長から「地上の侵略者はウルトラ警備隊の管轄だ」と基地内での休息を指示されるーー。
【制作裏話】
脚本段階では、マサベ参謀がクラタ隊長をV3に左遷したという記述がある。
アイロス星人のネーミングは、ギリシャの劇作家アイスキュロスからきている。準備稿では「シリウス星人が操る怪獣アイスキュロス」という設定だった。
脚本の市川森一氏は、『快獣ブースカ』でデビューした若手の実力派で、『ウルトラマン』を書けなかったことで『セブン』への参加に意欲を燃やしていたという。
しかし、市川氏によると人物描写を相当緻密に書き込んだが、尺の関係で大半はカットされてしまったという。
第14話「ウルトラ警備隊西へ(前編)」
関西で外国人を狙った連続殺人事件が発生した。被害者は、実は世界各地から集まってきた地球防衛科学班のチーフたちだった。
3ヶ月前にワシントン基地がペダン星に送った観測ロケットからのデータを分析したところ、人類と同等か、それ以上の頭脳を持った生物の存在が明らかになったという。
しかし、ペダン星人が観測ロケットを侵略と見なして復讐するという無電を送ってきたため、六甲山の防衛センターでの防衛会議に参加する予定だったーー。
【制作裏話】
第14話、第15話は、スポンサーだったタケダ薬品が、本社のある関西でのロケを希望したことで制作された。
満田監督、特撮技術担当の高野氏、脚本担当の金城氏の3人が関西の様々な場所をロケハンして部隊を神戸に決めたとか。
(防衛センターのみ国立京都国際会館が撮影に使用されている)
ちなみに、冒頭の謎の男のサングラスに映る炎上する風景は、中野稔により光学処理で描かれたもので、左右で微妙に見える角度を変えているという。
キングジョーは当初は無数の部品が集まってロボットになる予定だったが、当時の技術では再現できなかったため、4パーツ構成になったという。
また、膝の部分にも突起パーツがついていたが、撮影当時に付け忘れて納品してしまったため、そのまま撮影が開始された。
名前のキングジョーは、金城哲夫氏の父親が海外で「キングジョー」と呼ばれていたことが由来。
防衛センターの外観は京都の国際会議場だが、ロケの許可が下りなかったため、芦屋市役所で撮影されている。ウルトラ警備隊がキングジョーと対峙するのは摩耶埠頭。
セブンとキングジョーが神戸港で戦うシーンは、東宝撮影所のNo.1ステージでの撮影。
第15話「ウルトラ警備隊西へ(後編)」
ペダン星人のスーパーロボット「キングジョー」は、セブンとの戦闘中に倒れて起き上がれなくなったため、自ら体を分離して退却した。
その後、ウルトラ警備隊がドロシー・アンダーソンに化けたペダン星人の一斉捜索を行ったところ、神戸港を歩いているのをダン隊員が発見し、現場に急行した。
ダンとペダン星人の宇宙人通しの話し合いが行われ、「ペダン星人を倒すための武器の開発を中止する代わりに地球から退却する」という約束を交わすがーー。
【制作裏話】
第14話、第15話では、上西弘次氏のスケジュール調整が困難だったため、セブンのスーツアクターはきくち英一氏が務めている。
ちなみに、セブンのファイティングポーズは両方とも握り拳だが、きくち氏のセブンは右手が握り拳、左手が手刀の形になっている。
女性科学者のドロシー博士は、上智大学に留学中で「国際演技者紹介所」に所属していたリンダ・ハーディスティー氏が演じていた。
彼女は1947年6月5日生まれでアイダホ州の出身で、真面目で聡明な勉強家だったが、1986年8月28日に病気で亡くなっている。
ひし美氏は撮影時、彼女に日本語を教える役を頼まれ、彼女の部屋で台詞のやりとりなどを一生懸命練習したとか。
なお、アンヌが無線機で「異常なし」と報告している坂道は、ファンの間で“アンヌ坂”と呼ばれているという。
ちなみに、ペダン星人を追ってきたワシントン基地の秘密諜報員の声を吹き替えているのは、ルパン三世役でおなじみの山田康雄氏。
第16話「闇に光る目」
アンノン星の調査のため打ち上げられ、消息を断っていた無人宇宙船「サクラ9号」が突然、地球に帰還し、地獄山山頂に着陸した。
しかし、調査に訪れたウルトラ警備隊の前で宇宙船は突然爆発。その後、ダンにしか聞こえない謎の音が周囲に鳴り響いた。
その音の鳴る方へダンが向かうと、彼の背後の岩肌に謎の巨大な目が現れたーー。
【制作裏話】
地獄山のロケ地は栃木県の日光で、シークレット・ハイウェイに首都高が使用されている。
アンノン星人の声は、メトロン星人と同じく中江真司氏が務めている。ヒロシ少年が持つ石は、アンノン星人の着ぐるみを製作した高山良策氏の工房で作られた。
なお、セブンが岩石宇宙人アンノンに対して放つリング状の光線の名前はストップ光線という。
第17話「地底GO!GO!GO!」
炭鉱で落盤事故が発生し、地下1000mの構内で一人の若者が生き埋めになった。
落盤事故の際、謎の発光現象が起きたことから、ウルトラ警備隊が若者の救出と事故原因の調査に当たることになった。
生き埋めになった若者は薩摩次郎という名前で、山登り中に谷底に落ちて、かすり傷を負っただけで帰ってきたことから、奇跡の男“ミラクルマン”と呼ばれていたーー。
【制作裏話】
ロケは、茨城県日光市にある日立鉱山で行われた。
地底都市に出てくるロボットのユートムは、初代ゴジラのスーツアクターを務めた中島春雄氏が務めている。ユートムという名前は、マルサンのソフビ発売時に改めて設定された。
ちなみに、薩摩次郎という名前は、薩摩出身のTBSプロデューサー栫井巍氏へのリスペクトを込めて上原正三氏によって名付けられた。
撮影終了後、宿泊施設に宴会場が無かったため、美術と大道具のスタッフが地下にあった廃業したバーを短時間でパーティ会場に作り変えてしまったという。
宴会は、男性陣がパンツ一枚になって輪になって踊りまくったりなど、大盛り上がりだったとか。
第18話「空間X脱出」
ウルトラ警備隊の月に一度の特別訓練があり、キリヤマ隊長の指揮の元、スカイダイビングの訓練が行われた。
しかし、落下地点にアマギとソガの姿が無い。練習機に確認するがダイビングしたという。その頃、アマギは森の木にパラシュートが引っかかって気を失っていた。
目を覚まして地面に降りたアマギは、森の中を彷徨う中でソガのパラシュートを見つけた。そこには、「この森は普通の森ではない」と書かれていたーー。
【制作裏話】
ウルトラ警備隊のメンバーがパラシュートで落下シーンは、東宝のフロントプロジェクション用ステージを使って撮影された。
空一面の地球をソガとアマギが見上げるシーンもスクリーンプロセスで表現している。
ソガが落ちた底なし沼は生田のオープンセットで、毒々しい森にするため木や葉っぱにスプレーで色付けしている。
「神なき知恵は、知恵ある悪魔をつくることなり」という台詞は、金城哲夫氏の母校である玉川学園の創立者・小原國芳氏の言葉「神なき知育は知恵ある悪魔をつくることなり」より。
第19話「プロジェクト・ブルー」
ある夜、謎の物体が墜落し、山火事が発生した。しかし、新聞の片隅に小さな記事になっただけで、ウルトラ警備隊には通報されなかった。
ちょうどその頃、宮部博士によって、地球を防御バリアで覆う計画“プロジェクト・ブルー”が月面基地で進められていた。
月面基地に出張していたアマギは、宮部計画の機材に爆薬をしかけている宇宙人を発見するが、見失う。時を同じくして、宮部博士の自宅で、奇妙な現象が多発するーー。
【制作裏話】
宮部博士の自宅として撮影に使用された建物は河口湖の北側にあり、この回では外観と内部の両方が撮影に使用された。
『帰ってきたウルトラマン』第36話「夜を蹴ちらせ」では、物語の舞台となる別荘として外観だけ使われているという。
脚本を担当した南川龍は、野長瀬三摩地監督のペンネーム。飯島敏宏監督のペンネームが千束“北”男だったため南にして、監督の名前が3文字と長く、一文字への憧れから龍にしたという。
第20話「地震源Xを倒せ」
青沢山岳地帯で頻発する原因不明の局発性地震の調査のため、ウルトラ警備隊は、地球の核の研究者として世界でも有数の岩村博士の協力を仰ぐことになった。
【制作裏話】
シャプレー星人は頭部のみ高山良策氏による造形で、体は円谷プロの衣装部が担当した。
この回では、自動車ラリー中の女性二人組が山道に入って道に迷った後、謎の稲妻と唸り声を聞くというシーンがある。
このように、『ウルトラセブン』でラリーシーンが度々登場するのは、当時サファリラリーで日本チームが優勝し、ラリーブームが起こっていた影響もあるという。
第21話「海底基地を追え」
北九州の海上で、第三黒潮丸が「戦艦大和らしい姿が海上に現れた」という緊急電話をした後、行方不明になった。
その後、別の船舶からのSOS受信があったため、30分以内にホーク3号で現場に急行したアマギ隊員だったが、遭難地点の海域には油も破片も見当たらなかったという。
パリ本部からも、地中海や大西洋でも行方不明の船舶が続出しているという連絡が入ったため、ハイドランジャーでの極東海域の厳重調査が開始されたーー。
【制作裏話】
軍艦ロボット「アイアンロックス」は、円谷プロの造形部が製作した。
この回の舞台は「伊豆下田浜のホテル」のタイアップの関係で伊豆下田港となっているが、実際は同じ伊豆でも丸鶴漁港や稲取漁港で撮影された。
なお、第21話と第22話は、特撮班が本編の撮影も行ったという。
いつも室内で撮影している特撮班から、「気分転換で、たまには本編班のように青空の下で人間の芝居が撮りたい」という要望があったとか。
第22話「人間牧場」
【制作裏話】
ロケ地となったのは伊豆の下田市入田浜で、TBSの保養所の目の前。ルリ子発見現場へと向かうポインターでの走行シーンは東伊豆道路。
なお、この頃、企画文芸室長の金城哲夫氏が『マイティジャック』の方で忙しくなったため、彼が担当していた脚本の直しを上原正三氏が行うようになる。
第23話「明日を捜せ」
【制作裏話】
占い師でもあった野長瀬監督が書いた脚本。
猛毒怪獣ガブラはイモムシがモチーフとなっており、毛の部分は『ウルトラマン』に登場する伝説怪獣ウーと同じく植物繊維で作られた。
ガブラの頭が溶けるシーンは、石膏に金のロウを塗って、熱で溶かしながら撮影をしたという。
ガブラを操るシャドー星人のマスクは、『怪奇大作戦』の「ジャガーの眼は赤い」のエンディングにも登場している。
第24話「北へ還れ!」
【制作裏話】
カナン星人の名前は、旧約聖書に出てくる約束の地「カナン」からの引用。
雪原に覆われた実家に帰るシーンを撮影したフルハシ役の伊吉氏は、「カッコいいぜ!高倉健になった気分だ!」とお気に入りだったとか。
冒頭の帰郷シーンの駅舎は、当時の国鉄小梅線野辺山旧駅舎(長野県)で、鉄橋場面は同線の清里ー野辺山間で遠景は八ヶ岳。
フルハシの母親が泊っている部屋のテレビに映る相撲中継の映像は1968年1月のものだが、実際の取り組みは「大鵬対柏戸」ではなく、それらしい中継の音声を後から当てている。
また、この回では、カナン星人に操られたウィンダムがセブンと戦うが、これは、予算が無く使える怪獣がカプセル怪獣しか無かったため。
なお、フルハシと母親が無線で会話をするシーンは、満田監督が『ウルトラQ』で監督デビューした時、電話口で母親と笑い合ったことがモチーフだという。
第25話「零下140度の対決」
地球防衛軍極東基地を中心とした一帯が原因不明の異常寒波に包まれた。外の気温は零下112℃になっているという。
寒波でエンストを起こしたポインターを乗り捨て、基地に戻るダンを待っていたウルトラ警備隊だったが、地下18階の動力室が謎の怪獣に襲われ、原子炉が破壊された。
そんな中、ヤマオカ長官は「我々には地球を守る義務がある」として氷漬けになった基地の退避を認めず、隊員たちは次々と倒れていった――。
【制作裏話】
この回から、セブンのエネルギーが著しく低下すると額のビームランプが点滅するようになる。
ダンが吹雪の中で彷徨うシーンは、雪山でのロケ撮影の予定だったが、日光、那須などをロケハンしたが、十分な雪がどこにも無く、セット撮影となった。
スタジオ内に塩とベビーパウダーを敷き詰めて、大型扇風機で強風を起こして撮影されたという。
脚本を担当した金城哲夫氏が、地球防衛軍極東基地でアンヌに声をかけられながら凍死する隊員役で出演している。
編集後記
『ウルトラセブン』は、企画段階では『ウルトラアイ』というタイトルでした。
その後、円谷プロで企画されていた7人の猿人による原始時代コメディ作品『ウルトラ7(セブン)』のタイトルが拝借され、『ウルトラセブン』に変更になりしました。
【セブンのデザイン変更】
また、『ウルトラマン』の美術監督だった成田亨氏は、ウルトラセブンも古谷敏氏に演じてもらうつもりでセブンのデザインを行っていました。
しかし、古谷氏はウルトラ警備隊のアマギ隊員役で出演することになり、本人も固辞したため、セブンのスーツアクターは上西弘次氏になりました。
ウルトラマンは、180cmの8頭身だった古谷氏がマスクを被ることで男性で一番美しいプロポーションである7頭身になり、格好良さに美しさが加わりました。
それに対して、上西氏は172cmの6頭身半で、マスクを被ると5頭身半になってしまうため、プロポーションを良く見せるためにデザインも変更されました。
成田氏によると、体の比重を全部上に持っていって鎧を被ったようにして、胸から両脚にかけて2本の線を入れて、なるべく細く見えるようにしたそうです。
上半身を鎧の様なパーツで覆ったこと、上西氏のガタイの良さ、両手が握り拳の構えなどによって、格好良さに力強さが加わって、結果的にウルトラマンとの差別化に繋がったといえます。
【アンヌ隊員のキャスト変更】
キャスト変更という繋がりでいうと、ウルトラ警備隊のアンヌ隊員のキャストも撮影直前に変更になっています。
当初のアンヌ隊員役は、東宝女優の豊浦美子(よしこ)氏で決まっていました。
しかし、監督の指名で東宝映画のヒロイン役として急遽出演することになったため、隊員服の採寸まで済ませていましたが降板することになりました。
そのため、出演していたTVドラマ『天下の青年』が1クールで終了し、予定が空いていたひし美ゆり子氏に白羽の矢が立ったのです。
そして、1967年7月14日に円谷プロに行ってカメラテストをして、翌週の月曜日から撮影に入ったそうです。
豊浦氏への唐突な映画出演依頼がなく、『天下の青年』が予定通り2クール続いていれば、皆が知っている伝説のヒロイン“友里アンヌ”は誕生しなかったといえます。
「名作とは、見えざる神の手の導きによって誕生する」という言葉がありますが、『ウルトラセブン』にもまさに当てはまるのです。
そんなひし美ゆり子氏の写真集が復刊ドットコムで予約受付中。「ウルトラセブン55周年特別号」のタブロイド紙もコンビニで発売中です――。
【出典】「ウルトラセブン研究読本」「ウルトラセブンの帰還」
「アンヌ今昔物語~ウルトラセブンよ永遠に」「セブン セブン セブン アンヌ、再び」
「万華鏡の女 女優ひし美ゆり子」「ハフポスト日本版」
「大人のウルトラセブン大図鑑」「ウルトラセブン完全解析ファイル」
「ウルトラマンになった男」「特撮と怪獣 わが造形美術」
「昭和42年ウルトラセブン誕生」
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