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映画『ウルトラマン』 仲間のものがたり / 正義のものがたり

2024年10月20日 | ウルトラ関連


 ウルトラマン4Kディスカバリー



 “空想の力を育み、今も古びぬエピソードの数々を大迫力のスクリーンで観てもらいたい”という思いから生まれた『円谷映画祭』。

 10月18日(金)~31日(木) の期間限定で上映するのは、「仲間のものがたり」「正義のものがたり」の2作品。

 “仲間”や“正義”をテーマにした物語を、高精細の4Kリマスター&大迫力の大スクリーン・大音量でご覧ください——。


 

 仲間のものがたり

 
 「仲間のものがたり」では、少し元気がない少女のため、勇気や信念を感じられる仲間をテーマにした物語を支配人がセレクト。

 科学特捜隊の信念や少年の強い意志が、少女を勇気づけていく時、ある真実が明らかになる―—。





上映作品    

 第13話「オイルSOS」

 第33話「禁じられた言葉」

 第36話「射つな!アラシ」

 第37話「小さな英雄」

 


 第13話「オイルSOS」



 中近東の国々で原因不明の油田火事が起こり 航行中のタンカーが炎上、爆発する事件が相次いで起こった。

 数週間後、東京湾でもタンクローリーの爆発炎上事故が発生。現場検証中にタンカーが爆発炎上し、油獣ペスターが現れて船を沈めて海中に姿を消した。

 科特隊がペスターを東京湾からおびき出そうとしたところ、イデが誤って湾内で発砲し、怒り狂ったペスターの火炎でコンビナートは火の海に――。





【制作裏話】

 本作は、ガソリンと火薬を使った非常に危険な撮影となった。

 ペスターのスーツアクターを務めた荒垣氏と清野氏は、「水と火が同時に襲いかかってきた。苦しくなって怖くなって、もうだめかと思った」と話す。

 古谷氏も、熱風が覗き穴から入ってきて目が熱くなり、周りが炎だらけで体も熱くなってきて息苦しくなってきたが、夢中で演技したという。





 天井付近でカメラを構えていた佐川和夫氏は、熱で溶けて上から垂れてきた照明用部材によって火傷を負い、飛んできたブリキの蓋で火傷をしたスタッフもいた。

 爆発する石油タンクを真俯瞰で撮るために天井付近でカメラを構えていたスタッフは、爆発時の熱風で眉毛や髪の毛がチリチリになってしまったとか。

 ちなみに、ウルトラ水流のシーンでウルトラマンの右足にホースが映ってしまっており、DVD版にはそのまま収録されているが、ブルーレイ版では消されている。





 低予算だったため、スタッフやキャストはいつも醤油がかかっていない同じおかずのロケ弁当を朝昼晩、深夜にも食べさせられて、うんざりしていたとか。

 ロケ弁を作っていた増田屋食堂の入り口に大きな赤ちょうちんがぶら下がっていたため、“赤チン弁当”と呼ばれていたという。

 なお、冒頭に出てくる酔っ払いが持っているのが赤チン弁当。



 第33話「禁じられた言葉」



 フジ隊員は、飛行機好きの弟サトル君にせがまれて、科特隊専用車でハヤタ隊員を伴なって大空の祭典にやってきた。

 ジェット機による空中演技の見物中、突然サトル君の脳内に謎の声が響く。その直後、空に現れたタンカーが爆発し、飛行中のジェット機も上空に消えた。

 ジェット機群らしい電波が確認された宇宙空間へ科特隊が向かうと、残骸とともに無人の科特隊専用車の姿が。地上では、巨大化したフジ隊員が出現した――。





【制作裏話】

 科特隊が巨大化したフジ隊員を見つめるシーンの左側に映っているのは、丸の内仲通りビルで、今も現存している。

 巨大化したフジ隊員を銃撃するのは、初代ゴジラのスーツアクターの中島春雄氏。

 フジ隊員役の桜井浩子氏は、胸に仕込んでいた弾着が爆発した時、しばらく耳の底がジーンとして目の奥に火花が散っていたという。

 また、ビルを破壊した手の外側から腕にかけて、2~3cmのアザがついていたとか。






 第36話「射つな!アラシ」



 新しく出来た児童会館を視察に訪れた科特隊だったが、コンクリートで作られたという人工的な青空が突然崩れ、謎の強力な光が照射された。

 その光の明るさは6000万カンデラで、直接その光を見て角膜をやられて失明した人間が多数いたため、科特隊は警戒態勢をとることになった。

 その後、街中に変身怪獣ザラガスが出現。ジェットビートルで攻撃する科特隊だったが、その怪獣は攻撃すればするほど狂暴になる能力を持っていた――。





【制作裏話】

 ザラガスはゴモラを改造して造形された。

 児童会館の外観、内部は2012年に閉館した東京都児童会館で、5階にあるという設定の屋外を模したフロアは2002年に閉園した横浜ドリームランド。





 なお、ザラガスがウルトラマンを攻撃するための武器にした建物は、姫路の回転展望台がモチーフになっている。

 ハヤタが目に巻いていた包帯を解いてウルトラマンに変身するシーンは、東宝撮影所の正門近くにあった本館の屋上での撮影。



 第37話「小さな英雄」



 銀座のデパートにピグモンが出現したという通報があり、科特隊が保護することになった。

 そんな中、イデ隊員は科特隊の存在に疑問を感じ、アラシ隊員から頼まれた武器の修理を忘れ、ハヤタ隊員から頼まれた怪獣語翻訳機の開発も遅れていた。

 ようやく完成した翻訳機でピグモンの言葉を解析すると、怪獣曹長ジェロニモンがウルトラマンに倒された怪獣を復活させ、総攻撃を仕掛けようとしていた――。





【制作裏話】

 ピグモンが出たデパートは銀座の松屋で、当時はデパートに週1回定休日があったので撮影可能だった。

 ピグモンの声は、3代目江戸家猫八が担当している。

 「俺は今まで、色んな動物を鳴いたことはあるけど、ついに怪獣までやったって寄席のネタになりそうだからやりましょう」と、快く引き受けてくれたという。

 また、ドラコの頭にツノが4本生えているが、これはスーツアクターだった鈴木邦夫氏が勝手に『快獣ブースカ』のイモラの角をドラコにくっつけたとのこと。



 正義のものがたり


 「正義のものがたり」では、正義をテーマにした物語を支配人がセレクト。

 人間やウルトラマンだけが正義ではない、悲しみや願いを抱いた物語。「正義とは何なのか?」見た人の数だけ、答えは生まれるのかもしれません。 





上映作品    

 第30話「まぼろしの雪山」

 第15話「恐怖の宇宙線」

 第20話「恐怖のルート87」

 第23話「故郷は地球」

 

 第30話「まぼろしの雪山」



 雪山で遭難した漁師が救助され、その漁師は「伝説の怪獣ウーを見た」と怯えながら話した。

 村人から“雪ん子”と呼ばれている少女が猟の邪魔をするのを懲らしめていると、“まぼろしの雪山”と呼ばれている山付近に現れたという。

 そんな中、スキー場にウーが現れてスキー客がパニックになったため、スキー場の経営者は科特隊を呼び、ウーを退治してくれるよう依頼するが――。





【制作裏話】


 この回からウルトラマンのスーツが新調され、Cタイプとなっている。ウーという名前の命名者は金城氏で、怪獣スーツはエクスプロで製作。

 沖縄の代表的織物「芭蕉布」の原料となっている“苧(ウー)”と呼ばれる糸芭蕉の幹からとった繊維に由来するとされている。

 ウーの体毛は、ロープや石膏の補強材として使われるサイザルという植物繊維。

 東宝撮影所の表門の前にあった吉岡モータース(現・成城ホンダ)に頼んで、特別に長いものを用意してもらったとか。

 実際に撮影が行われたのは石打丸山スキー場で、 数年に一度の大雪で一歩歩くにも息が上がるありさまで大変だったという。

 科特隊でスキーが滑れる人間がおらず、止まるカットでもすぐに倒れてしまうため、監督は「2mでいいから滑って」とお願いして、後はスタンドインとなった。

 作品中で飯田山と呼称されている山は、新潟県・越後湯沢を代表する名峰「飯士山(いいじさん) 」。





 なお、このウーの回とヒドラの回は、毎回怪獣を殺すのが嫌になり、やりきれなくなってきた古谷氏の意向が反映されている。

 「たまには怪獣を殺さない優しいウルトラマンの話があってもいいんじゃないか」と古谷氏から頼まれた金城氏によって書かれたという。

 ゆきの母親の魂の化身であるウーが、ウルトラマンとの戦いの途中で消えたのは、ゆきが亡くなって守るべき存在が無くなったため。

 ゆきの魂とともに、天国へと旅立ったのでしょう——。



 第15話「恐怖の宇宙線」



 少年が土管に描いた怪獣ガヴァドンが特殊な宇宙線と太陽光線を浴びて、実体化した。

 しかし、寝てるばかりの姿に失望した子供たちは、太陽が沈んで土管に戻った怪獣をもっと強そうな姿に描き直した。

 日の出とともに実体化するガヴァドンだったが、またいびきをかいで寝てばかり。科特隊は経済生活の邪魔になっているガヴァドンとの決戦に挑むが――。





【制作裏話】

 ガヴァドンAの足音には、ガラス板に太いマジック・インキを擦らせた音が使われている。

 また、ウルトラマンとガヴァドンBが戦ったのは多摩川緑地公園グラウンドから和泉自動車教習所辺りで、特撮のミニチュアもその付近を再現しているとのこと。

 ハヤタが流された宿川原堰堤も健在で、子供たちが星になったガヴァドンを見上げるシーンも多摩川河川敷の川崎側の土手で撮影された。





 この回のラストシーンは、月島第二児童公園で撮影が行われ、子供たちに集まってもらって好き勝手に落書きをしてもらったという。

 しかし、あとから制作や美術のスタッフたちに「落書きを消すのが大変だった」と文句を言われたとか(笑)
 
 
 

 第20話「恐怖のルート87」



 大室公園で飼われている動物が急に騒ぎ出し、付近の山の山頂に謎の発光現象が起きたため、科特隊が急行した。

 ちょうどその頃、フジ隊員が残る本部に謎の少年が現れ、「大室公園の高原竜ヒドラが暴れて大変なことになる」と告げて姿を消した。

 ヒドラは公園内に建立されている怪獣の石像で、デザイン者は東京に住む小学生だったが、その少年は半年前に国道87号線でひき逃げに遭い亡くなっていた――。





【制作裏話】


 高度経済成長時代、モータリゼーションの進行に対して交通取締りが甘く、信号など交通インフラの整備も遅れていたため、交通事故死が急増していた。

 この作品の脚本は、そういった社会問題と伊豆シャボテン公園にあるシンボル像にヒントに金城哲夫が書き上げた。

 作品タイトルの「国道87号線」は、戦後の国道整理で欠番となっており、作品中で事故が起きるルートのため欠番を選んだとされている。

 しかし、自身が設定した「M87星雲」が誤植によって「M78星雲」になってしまった金城氏が“87”という数字へのこだわりから名付けた説もあるとか。





 なお、ヒドラの怪獣スーツは、高山良策氏ではなくエクスプロダクションによって製作された。

 また、夜にヒドラが山から現れるシーンでは、ハヤタが誤ってサボテンの上に座ってしまい、お尻にサボテンの針が歯ブラシのように刺さってしまうハプニングも。

 その後、ズボンを下げたハヤタのお尻に照明用のライトを当てて、アラシやスタッフの人たちが1本、1本抜くことになったという(笑)

 庵野秀明氏は「ヒドラに頭を殴られてクラクラしながら倒れるウルトラマンが凄くいい」「倒れている時のポーズも素晴らしい」と絶賛している。



 第23話「故郷は地球」



 東京で開催される国際平和会議の各国代表が乗った旅客機や船舶が相次いで原因不明の事故に見舞われ、パリ本部から隊員が派遣されてきた。

 調査の結果、目に見えないロケットとの衝突であることが判明し、イデ隊員が開発したスペクトル線により可視化され撃墜されたロケットは、奥多摩の森林に墜落。

 中から現れたのは、数十年前に打ち上げられた人間衛星が制御不能になって宇宙を漂流し、流れ着いた星で怪獣の姿に変わってしまった元宇宙飛行士のジャミラだった――。





【制作裏話】

 パリ本部員がジャミラの正体を明かすシーンは、実相寺昭雄監督によって河口湖畔で撮影された。

 しかし、夜間の撮影で周りが真っ暗だったため、円谷一監督から「美センの庭で撮影しても同じじゃないの」と言われたとか。

 さらに、「もうおまえには泊りがけのロケは許可しない」と怒られたとも明かしている。





 また、ウルトラマンを撮影していた1966年秋頃は新宿西口は淀橋浄水場が移転し、だだっ広い一面に広がる瓦礫の山で、怪獣に蹂躙された爪痕という印象だった。

 国際会議場に接近するジャミラを科特隊が攻撃できないまま追いかけるシーンが淀橋浄水場跡で撮影されたが、尺に収まりきらず全てカットされている。

 ジャミラを弔う墓碑は実相寺監督が持ち帰り、監督の逝去後は川崎市市民ミュージアムに保管されているという。

 なお、イデ隊員の台詞「犠牲者はいつもこうだ。文句だけは美しいけれど」は、実相寺監督が自ら書き加えたもの。


     



 編集後記


 10月18日(金)から、入場者プレゼントの「イベント色紙復刻デザインカード」がウルトラ兄弟のデザインになります。
 
 これは、1980年頃にウルトラヒーローショーで販売されていたウルトラヒーローサイン色紙を、手に取りやすいミニ色紙サイズで復刻したもの。

 
        
 
 
 昭和のウルトラ戦士が勢ぞろいしているというデザイン的にもなかなかレアな代物かと思います。

 鑑賞料金も1500円と割安で、時間的にも1時間半くらいでサクッと観れるので、映画館に足を運んでみるのもいいかもしれません―—。





【出典】「円谷映画祭2024」「ウルトラマン伝説の全39話<前篇>
 

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