日日之爺日

やほおが無くなったので、こちらで少し息抜きを

ブリトラさんの1日:その9

2020-12-10 12:48:16 | 夫庵多爺
ある冬の夕方、と言ってももう空からの光は無く、少し離れた場所の街灯の光だけが庭先を照らす頃、
ブリトラさんは一日の仕事を終えて、いつもと同じ様に家に着いた。
庭先の駐車場の門扉を開けるために、車を生垣の前の路肩に止め、エンジンを切った。
ドアを開けて降りると、黒い人影が少し遠くに見えた。
その影は、ブリトラさんを見ている様に見えた。少し身構えるブリトラさん。
少し胸をドキドキさせながら、門扉に手を掛ける。意識はその影の方に向いている。
足音がした気がした。冷たい風が頬を撫でた気がした。
「ブリトラさん。」影は聞き覚えのない声を発した。

ブリトラさんの1日:その8

2020-12-04 21:33:51 | 夫庵多爺
「ブリトラさん、」温厚そうな若い、丸い眼鏡を掛けた学級担任の先生は、低いが優しい声で話し掛けた。
「ある程度、お分かりかとは思いますが、」少し間が開く。「息子さんの進路が難しい状況です。」
ブリトラさんは、思わず「ウッ」と声を出し、泣きそうな表情になる。高校三年生になった息子は卒業は出来る見込みだが、
大学も専門学校も希望していない。就職希望だが、それが難しいということなのだ。
予想はしていた、というか、避けられないとも思っていた。しかし、あからさまに言われると悔しい。
いわゆる社会的協調性が大きく掛けていることは知っていた。だからと言ってこんなに簡単に社会から弾き出されるとは、知らなかった。
ブリトラさんは悔しい、悔しくて泣きたくなるのだ。こんなに簡単に。

ブリトラさんの1日:その7

2020-12-04 19:18:35 | 夫庵多爺
息子は、高校生になっていた。ある日、会社からの帰り道、ブリトラさんは、家の近くの藪に自転車が投げ捨てられるのを見た。
最初は気にも留めなかったが、半月ほど経って、また、違う自転車が捨てられてるのを見た。
夕食の時、「今日も藪に自転車が捨ててあったなぁ。きっと駅から人の自転車を乗ってきちゃう人が居るんだよ」と
独り言の様に言った。息子はいつもの様に黙ってご飯を食べていた。
また暫くして、3度目の放置自転車を見た時、ブリトラさんは変だと思った。周辺の家はまばらで、空き地は沢山あるのに、
何でブリトラさんの家のそばに捨てられてるんだろうか、と思った。駅まで歩きで通勤、通学している人は、近所では見掛けない。
「もしかしたら、息子が駅から人の自転車に乗って帰ってきて、捨ててるのかも知れない...」とも考えたが、
強く頭を振って、その悪い考えを頭の中から追い払った。ブリトラさんは、息子が他の子供達と違いがあることを知っていた。
妙に無感動で、言葉が少ないのだ。自分の考えを話すことが上手ではない、全くのところ。

ブリトラさんの1日:その6

2020-11-30 21:01:33 | 夫庵多爺
買い物時の食事は、大抵はスーパーのフードコート。品数はまぁまぁだし、安いのが嬉しい。
息子は何が食べたいのか余り言わないので、ブリトラさんが2種類の食事をカウンターで注文してくる。
ラーメンとカツ丼とか、違う店から一つずつ買う。そして仲良く分けっこ。
でも、やっぱり、息子が7でブリトラさんが3くらいの感じで食べてるかなぁ。
食べる時に「いただきます」は言うけど、途中では余り喋らない。ブリトラさんは、
笑ったり、はしゃいだりしたりする息子を見ながら食べたいけど、余り表情の無い顔で二人は食べる。
買い物に行っても、息子は欲しそうな顔で何かを見ている時はあるけど、絶対に「欲しい」とは言わない。
たまには奮発して、好きなものを買ってあげたいと思う、ブリトラさんだった。

ブリトラさんの1日:その5

2020-11-27 21:16:12 | 夫庵多爺
休日になると、少しは寝坊をしたいと思うけど、ご飯の準備しなけりゃと、
えいっといつもと同じ時間に起きる。
先ずは、洗濯機を回す。晴れなら良いが、雨でもやっぱり回す。
一週間溜まった分を一度に洗濯する。
道路脇掃除、朝ごはん、洗濯物干しは大体お決まりのパターン。
垣根の木がモサモサしだしたら、剪定もする。時々車も洗う。
庭の草取りもあるし、家の周りをきれいにするのは、結構手間だ。
取っておいたチラシを見て、買い物に行く場所を決めるのも重要だ。
買い物に行く時は、息子と一緒行って、お昼も一緒に済ませてしまう。