(1293の啓示物語の続きです
クリスティーヌ王女は意中のベルナンと、ワルツに合わせひそかにバルコニーで踊り始めた)
彼女はベルナンの顔を見ずに、視線を少しずらしていた。そして、小さな声で言った。
「ねえ、ベルナン。あなたは私のためにどんな [誕生日の] プレゼントを用意してきてくれたの?」
「これはうかつでした…では、何をさしあげましょうか。一りんのスミレでしょうか。…それとも、ドレスでしょうか。」
音楽のテンポがやや、早くなった。
「いいえ…そんなものじゃないわ。」
彼女はもはや、自分を止めることができなかった。
「スミレでも、ドレスでもないわ。私のほしいのはあなたの…いつわりのない愛だけ…」
「王女様!…」
二人の足は止まった。
「あなたの気持ちは知らないけれど私が王女でなかったら」
「クリスティーヌ…僕は君を」
クリスティーヌは思わずベルナンを見た。
「ベルナン!…これは、今夜の最高のおくり物よ。」
二人は月あかりの中で口づけをした。彼女は、何か胸がじいんとするのを感じた。
ーーこれがもし夢なら…でも、私はこうして現実に、ベルナンとここにいるんだわーー。
クリスティーヌは、自分が求めていた形のない物を、今、しっかりとつかんだのだ。
真実の愛を!!
「ベルナン…これからはクリスティーヌとよびすてにしてちょうだい。私、きっとお父様に理解していただくわ。」
そう…周囲はどうなるのだろう。ベルナン達 [=ベルナンとその兄] を追放した社交界は、どう思うだろう。
もちろん二人にとってそんなことはどうでもよかったが。
二人は、バルコニーのふちに立った。町々のあかりが、遠くまで、帯のようにつらなっている。
そのあかりでロビナス湖がロマンティックにかがやいている。
「あら…」
「どうしたんです、クリスティーヌ」
「今、人影が見えたのよ。10人ほど。こそこそしていたわ。」
「まさか。」
と、ベルナンはバルコニーから体をのり出してみた。
「誰もいません……」
「そんなはずはないわ。」
彼女はもう一度見てみた。
「おかしいわ…確かに」
といってクリスティーヌはハッとした。
「誰か来るわ。ベルナン、かくれて!柱のかげに、早く!」
全く、危ない所だった。
「王女様、陛下がおよびでございます。」
ビスティル [大臣] はひとこと、そう言った。
彼女はためらいがちに、中へ入った。
暗い所にいたので、まぶしい。
クリスティーヌは目をやっと慣れさせると、玉座の所へ行った。
はい、ここまでですね
子供の時の翠さん(=イブ=ミロク) のノートからの引用は
では又、明日以降にお会いしましょう
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