さて、では翠さん(=イブ=ミロク=メッテッヤ) の前世の話の続き
翠:
…私は今年がお釈迦様の予言された、私の寿命が来る年だと知っていましたが、あまり考えないようにしていました
当たるか当たらないか、その時になってみないとわからないし、(お釈迦様の心霊能力が絶大なのは知っていましたが、) 当たったらそれに従うだけだし、結局そのために何もすることはないのですから…
毎日、地道に生きていくことだと、思いました
私はあれから、お気に入りの小山に何度か瞑想に通いましたが、1度通りしなに例の村へ立ち寄り、あの娘の足の容態を聞くと、だいぶ良くなったということでした
ところがその時、娘と話していると、なにやら向こうで騒ぎが持ち上がりました
誰かニ、三人が、わいわいと話しています
娘の母親が出てきて、あれは近所の一人暮らしのお婆さんが叫んでいて、周りが止めているのだ、困ったもんだと言いました
なんでも最近、一人息子が山でクマ (ナマケグマというらしい、凶暴になることのある強いクマ) にやられて、死んでしまった、
そのことが原因でぼけ始め、息子に花を供えたい、と今の季節にない花をほしいほしいと、この頃は周りの人にせがんでいるのだ、とぼやいた
それで、私はその人たちの所へ行ってみた
すると、灰色の髪の老婆は、私を見るなり、「あっ」と言い、
「○○、戻ってきてくれたんだね、」と言い始めた
どうも、死んだ息子と間違えているらしい
そんなに似ているのか
そばの村人に聞くと、そう言えば耳から上の顔が少し、似ているようだと言われた
老婆は私にしがみつき、家へ入っておくれ、と言い、決して離さない
私は、困ってしまった
家の中へ他の人と入り、老婆が落ち着いた所で他の人と共に帰ろうとすると、出て行かないでと騒ぎ出した
村人の1人が彼女を引き留めている間に、もう1人が私を連れて出てくれた
その時はそれですんだのだが、後日私が小山への道をたどっていると、向こうから来た村人が、あんたの来るのを待ってたよ、あれからお婆さんは騒ぐのをやめない、みんなで息子を隠したとか叫んで、ひどいもんだと言った
しかし、私に何ができるのか
とりあえず来て、お婆さんが落ち着いたらそっとあなたを帰すから、と言われ、不承不承、向かった
気の毒なことだが、私がずっと付き添うわけにも行かないだろう
…お婆さんに会ったら、それは喜んで歓待してくれたが、私はあなたの息子ではなく、僧侶です、この格好を見たら、わかるでしょう、と言うのを忘れなかった
お婆さんは、ああ、そうかい、と一旦は納得するのだが、すぐに忘れて、また息子だと言い張る
そんなことが何回かあった
日暮れに、私はお婆さんがうつらうつらし出したので、寝具をかけてやり、そっと立ち去った
当分、この方面へは来れないな、と思った
しかし数日たつと、あの村人が私を呼びに来た
大変申し訳ないが、お婆さんが夜の寒いのに、あなたを探し回って困る、ぜひ数日泊まって安心させてやってくれないか、とのことだった
私は決心して立ち上がった
これも、人助けだ
しかも、私にしかできないみたいだ
お釈迦様に訳を話して、数日間留守にすることにした
村人たちは喜んでくれ、もてなしを受けた ( 私は粗食でいいと言った)
夜、安心した老婆の横で休むと、少しはお役に立てているかなと思った
幼い頃になくなった母のことが思い浮かび、そう言えば、母上に私は何の親孝行もできなかったな、もしかしたら、天が今、なき母の代わりにこの老婆に孝行しなさい、と言って引き合わせて下さったのかも、とも思えた
…そうすると、やや気が進まずやっていたこの役割が、尊いものに思えて、感謝がわいた
…何でも、意味があるものだ……天は慈悲深くて、この私に、親孝行の代わりをさせて下さる……
父上にも、出家する時悲しませてしまった
どうしておられるだろう? お元気だろうか
ふつふつと、父の顔が思い出された
…そして、私は眠りについた
ところが、夜中に目覚めて見ると、老婆がいない
あわてて外に走り出ると、探し回った
何しろ寒い季節だ
やっと見つけたら、村の井戸のそばで疲れて倒れていた
私は老婆をおぶって帰り、火をそばで起こして温めた
朝になって聞いてみると、記憶がないようだが、どうやら花を探しに行ったらしい
…それから二、三日、その繰り返しだった
昼は、私を見て息子だと言って喜んで機嫌がいいのだが、夜になるとなぜか起き上がり、裏の息子の墓に供える花を探そうとして、出歩くらしい
…そして、午前中は寝ていた
私は夜に彼女を探すのに、ほとほと疲れたが、黙っていた
村人達は喜んで安心しているし、心配をかけたくなかったのだ
しかし、村人たちは老婆が夜に又出歩くのに気がつき、時折助けてくれた
私は滞在を延ばし、1週間経った頃、村に訪問客があった
遠い所に住んでいる彼女の叔父方の親戚の姉妹が、村人からの連絡を受けており、彼女を引き受けに来たのだそうだった
薬草の心得があるので、老婆が落ち着くように、鎮静作用のある薬とかを処方し、面倒を見ると言ってくれたので、お願いすることになった
老婆には、私が息子でないことをよく言い聞かせ、皆にもよろしく頼んで、私は帰った
村人達が、お礼に食品をくれたので、帰るとお釈迦様に手渡した
「いろいろ大変だったようだな、」
お釈迦様は私を見下ろしておっしゃった
…私は部屋に戻ると、しばらく眠った
毎日寒い夜に歩き回ったので、疲れがたまっていたのだ
久々の皆との食事が、より美味しいものに思えた
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