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氷月神示 扁桃 その1194

国之常立神より皆様へ

で、信じたくない人はもちろん信じなくてかまいませんし、ただのファンタジーととらえていただいてもいいのですが、
アダム=キリストが変装したベルゼブルは、ついに二頭身半以上の頭でっかちの黒い山犬のような顔で、恨めしげなどよんとした目をして、黒い短い毛の生えた犬的な上半身を見せて、居間にいる翠さんの2メートル位前の壁際にふうっと現れた
(そこにはテレビがあったのだが、その前位ですかね)
…翠さんはサタンを初めて見たのだが、その時は知らず、変わった動物みたいな邪霊だなと思った
非常に陰湿で、暗くて重苦しい感じだった
彼女は後一人、誰か来る、と感じていたのでこれがそれなのかと思った
いつも通り、祓うだけだ
ところでアダムの方は翠さんの知らない意味で演技をしていた……実は、これらの25日間の戦いを、どちらが勝つかと、サタン達が興味を持って遠くから隠れて見ていたのだ
彼らは、導師のエディが負けて、今や最後の切り札の親分、ベルゼブルがどう出るか、見守った…
その時、アダムは長年構想を温めていた演技を始めた
数万年前、ベルゼブルが堕天使になる前、彼は熾天使ルシフェルとして、守護していた少女サモルエを愛するようになった
彼女を手に入れようとして神様に取り上げられ、(彼女は霧の中崖から落ちて事故死した、) ルシフェルは怒りくるったのだ
そして、堕天使になった設定だ…
あの少女は、その時天界にいた、形のない大きな愛の気のもや、イブ (アダムの妹) の小さな分けみたまだった
そして、死ぬと彼女の魂はまた、イブの中に溶け込ませられた…
つまり、今の翠さん(=イブ=ミロク) の人間大に圧縮された幽体の中に、かつてのサモルエの魂も、小さく入っているのである……彼女は知らないが、のんびりした穏やかな気性はサモルエと同じだった
そこでアダム扮するベルゼブルは、翠さんを正面から黙って穴の空くほどじっとにらむように見つめ、もっと観察しようと、少し顔が大きくなった… それは、彼が翠さんの中にサモルエの雰囲気を感じ、面影を見いだした瞬間だった
彼女は何も気づかなかったが、ベルゼブルはかすかに震え、心の動揺を隠した
あの愛する少女が目の前にいる! 俺は、長いこと探して待ったんだ、あの子に会えるのを、それがこんな所に……という、演技だね
これは、翠さんには何も分からなくていい、むしろ周りで観察している他のサタン達にわかってほしい演技だった
彼らも、大昔にルシフェルが失恋してやけになり、ベルゼブルになったのを知っているから、彼がわずかに動揺したのにおや、と思った者もいた
いつもと親分、違うぞ……と……

それからベルゼブルは顔を元の大きさにすると、さっと姿を隠し、戦いが始まった
部屋の中で翠さんは、見つけたベルゼブルを結界術でつかまえようとするのだが、非常にすばしこく、何度やってもウナギのようにするりと抜けられる
つかまえたと思ったら、身代わりの式神で意味がなかったりした
アダムの幽体は本来拡大すれば翠さん(=イブ、覚醒すれば宇宙位の大きさに広がれる) の、まだ100倍はある
従って実力も翠さんの百倍はあり、彼女がとても勝てるわけはないのだ
…だが、アダムは翠さんに負けるつもりでいた…
2時間半以上戦って、翠さんはまだ、解決の糸口が見つからなかった
途中、アダムは一度冴えない薄汚れた白い衣の天使の姿 (つまり堕天使ルシフェル) になり、しゃがんで元気なく、幻のカードを数十枚、床に順に横に並べていった……それを5、6列作った
彼は、自分はカードに例えるとこんなに沢山の罪をおかしたんだ、それでも俺を許すというのか、という感じを伝えた
翠さんはこれまで戦った邪霊達と同じように思い、大丈夫だよ、反省すればきっと神様は許して下さる、と心で懸命に呼びかけた
見守るサタン達は、親分の気弱な様子に驚いたに違いない
親分、どうしたんだ……
やがてまた、アダムはサタンの姿に戻った

昼時になり、彼女は武士のように腹ごしらえをしなければ、と思った
なぜか邪霊(=アダムのサタン)は、部屋の隅でおとなしくなった
(わかりますよね、本当の彼は善意なのだから、)
それで、彼女は台所へ行き、すぐ食べられる軽食をとった
(冷凍ののり巻きでしたかね、)
そして、食べながら作戦を考えていた……

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