はるの雨

2023-03-20 | あほらしきこと

3月下旬、桃花の便りが聞かれるようになると…、
春の雨が恋しい、山里は「穀雨」の季節。


かすかな花の香りを含み、大地を静かに潤していく春の雨。
芽吹きを見守る金剛石ってとこかな。。。

徳島地方では、この雨を『木の芽萌やし(このめもやし)』と呼ぶらしい。
とても素敵な呼び名だ。
時季は桃や李の花のころ、桃花が雨にぬれるさまは美しい。
恋しい木の芽萌やしの雨が降る。

 

春の雨のよびな、少し集めてみました。

 

雨香(うこう)
雨が降り出す前に、「あっ!雨かな…」って感じるとき。
そんな雨にかすかな花の匂いや芽吹きの匂いを含んでいる。

水神鳴(みずかみなり)
みずかみなり:春を告げる春雷。
雨を運んでくる雷は雨竜下ると言われ、激しい雨を伴う。
そう、冬の気配を全て流し去る季節の雨。

雨降り花
一輪草、コケリンドウ、ギボウシなどを指す。
その花が咲く(摘んだり)と雨が降ると言われている。
『春のエフェメラル』どこかはかなげで可憐な花たちだ。

花の雨
桜の花の時、そぼ降る雨を桜雨。
花の散花も美しい桜にこそ似合う。
花を散らしてしまう雨は「桜流し」と呼ぶそうだ。

来週お花見予定。
桜流しじゃなくて花筏ならいいなぁ!

木の芽萌やし(このめもやし)
春の芽吹きを母のように見守る雨。とても素敵な表現。

青葉雨(あおばあめ)
新緑を潤し、命を輝かせる雨の滴。青葉時雨は、
新緑の森に降る『十力の金剛石(宮沢賢治)』の雨。
勝手にそう思っている。

密雨散糸(みつうさんし)
白糸のように降る春の細雨。濡れて帰るのも苦にならない。
とてもやさしい雨なんだね。

 

 

 

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中村 哲

2023-03-12 | インポート
 
 
現実の世界をとやかく云うつもりもないけれど、
ていうか、どうする事も出来やしない人間の世界だもの。
「人々は残酷だが人は優しい」/ラビンドラナート・タゴール
tadasine、人は全て優しいとは、言っていないから。。。
 
 
そんな人間の世界、とおの昔に諦めているけれど、
こんな人がいるってことに、少し心が休まる。
 
華やかに活躍する人が目立ち、正義もなく持て囃されることの多い世界で、
注目度の薄かった物事に、黙々と汗を流した人だ。
 

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覚えておきたいこと

2023-03-07 | あほらしきこと
いつの日か私が眠るところが
武蔵野雑木林の中にあって、そこには四季がある。
薔薇が咲くころは、テラスでお茶を飲みながら望む墓苑が華やぐ
宗教の縛りはないし、法要も合同で勝手に執り行ってくれる…。
このご時世だから、もう長く訪れていない。
「所員一同で行わせていただきます」と言葉が添えられ、
修正会・彼岸のイベント等、中止の案内が今年も届いていた。
一葉のはがきは何だかそっけないものだ。
 
 
 
 
 
 
東北の地にマリアがいた。
彼女は結婚により「あべ」という姓を持った。
正真正銘、アベマリアだ。
何才だろうか、おしゃれで可愛いい人だからとても若く見えた。
彼女は三十歳半ばで伴侶を亡くした。
そのマリアが主催する『説法の会』に参加したことがある。
お寺の若住職と、場所を提供いていただく小料理屋の若女将、
そして十数名の仲間が集い、1時間ほどの説法が始まる。
話の内容が面白かった。
 
  法要も法事も必要ないんです。
  しかも戒名は仏門に入った人に対して与えられるもので、
  それは生きているうちに与えられるものなのです。
  そもそもお布施の額で戒名が変わるなんてあり得ません。
  法事や法要も戒名料も、坊さんが生活費や遊興費を稼ぐための
  彼らたちの方便です。
  亡き方を愛していればそれでいいのです。
  もちろん、憎き奴だったでもいいんです。
  あなたの心が穏やかなら^^
 
と、こんな具合だ。
説法の後は、酒宴が始まった。
隔月の会だったと思う。
 
私が二度目の結婚をした年に前後して、母が死んだ。
「あなたを愛しています」
母が父に伝えた最後の言葉だ。
色々あっての夫婦の時間だったとは思う。
当人同士しかわからないことも多いものだ。
欲目ではなく母はこころ可愛い人だった。
父は父で情に厚く、ましてイイ男だったからか
それが禍したと言えば言えなくもないが
娘としては、寂しかっただろう母を想う。
 
けれど母はとうの昔に許していたのだ。
「あなたを愛しています」と母に言われ
父は救われただろうか、何かを背負ったかもしれない。
どちらかなのかを聞く術はもうない。
残された日々を生き、
命尽きる父の目じりに干乾びた涙の跡を
母は遠い宙から見ていたに違いない。
深い愛に遅すぎることはないのだ^^
最高の夫婦だったと思う。
 
  愛は深めていけばいくほど
  どこまでもどこまでも深まっていきます。
  そしてそれは純化されていきます。
  そのことを私たちは知っておきたいと思います。
        -糸賀一雄-
 
覚えておきたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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本棚に眠る女

2023-03-01 | あほらしきこと

 

このごろ賢いのか、強かなのか、とぼけたおんなたちが多い気がする…。
比べて性差別が足り前だった時代錯誤のおんなたち。

そんな女が本棚に眠る。

彼女たちの、なんて時代遅れのこと。

けれど、こんな女、わたしは嫌いじゃない。

 

 

私の机の上に、しばしば彼のおすすめの本が置かれた。
「面白そうね」と言いつつ、パラパラ指先が活字を追う。
そうして数十冊が本棚の片隅に追いやられたまま眠った。

『三年ねたろう』どころではなく随分長い年月を眠り、
そうして二十年を過ぎた一冊が
もろさわようこ著「おんなの歴史」だった。

本書に紹介されたていたのは萬葉集/巻十三の歌。
旅あきうど (旅商人)の妻

つぎねふ 山城路(やましろぢ)を  
他夫(ひとせ)の 馬より行くに 
己夫(おのせ)の 歩(かち)より行けば 

見るごとに ねのみし泣かゆ 
そこ思ふに 心し痛し 
たらちねの 母が形見と 
吾(あ)が持たるまそみ鏡に 
あきつひれ負(お)ひ並め持ち手 
馬替えわが夫(せ) 

夫の応(こた)へてよめる

馬買はば 妹(いも)かちならむ 
よしゑやし 
石(いわ)は履(ふ)むとも我(あ)は二人行かむ 

 

歌を解釈すると、

  難儀な山城道を他人の夫は馬でゆくのに、
  私の夫は歩いてゆくので、
  どんなにつらいことだろうと思えば胸が痛く
  思わず泣けてしまいます。
  ここに母の形見の鏡と肩掛けの布があります。
  どうぞこれを馬と替えてください。
  切ない思いの妻の歌に反して夫は
  馬と替えてしまったらお前が困るだろう。
  困難な道でもいいではないか、
  私はお前と一緒に歩くことにするよ。


もろさわは、万葉相聞歌にある「馬替え わが夫(背)」と歌う妻と
かの有名な『一豊の妻』
戦国乱世に「馬買い給え」と持参金を用立てた妻を比較して
二人の女の違いを「馬替え」という動機の相違と、
それに対する夫の態度にあると言う。

万葉の女は、前後のみさかいのない、
ただひたすらな夫への愛の一念であり、
一豊の妻は、功利を見極めたまことに智恵深い行為で
当時の立身出世に必要な、
確かにみごとな「内助の功」であると評価しながらも、
一豊の妻の行為は愛の深さへの評価ではなく、
「内助の功」であることを、いささかさみしく思うとしていた。

比べて万葉の女とその夫の人間性豊かなやり取りは、
功利とは無縁であるけれが、
いたわり合う愛情の故郷ではないだろうかと、
女心を吐露している。

今の時代、万葉の女は顕微鏡で探しても見つからないだろうな…。

歴史で名声を得た男たちの裏には、
女の影があるとはよく言ったものだ。

今の世に存在しない女が本棚に眠る…。

 

 

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見えない次元

2023-02-28 | あほらしきこと


急に降り出した雨。
雨宿りに立ち寄った珈琲屋さんでの事。
恋人らしき二人の会話が聞こえてきた。
「だって、ちゃんと説明してくれなきゃ分かるわけないし」
「.............?」
「あんたの次元は高すぎて、私には見えないのよ!」


「次元が見えないだなんて話に知的好奇心が刺激を受けたのね。
なんて高尚な話をしているのってね。
見えない次元って、偉い学者が言ってた超ひも理論の事に違いない。きっとね。
もちろん、間違っても女の人にたかる男の話じゃないからね。」

ちょっと茶化した。けれどあいつにはチンプンカンプンだった。

「ひもの話は君には早いかな…、まあいいや。
詰る所はこの理論って四次元では説明がつかないらしい。
だから『多次元をつくちゃいました』と言うわけじゃないのだろうけれど、
人間が体験することができない別の次元が必要だってこと」

「でも、誰も見ることが出来ない多次元なんて言われても、
見えなきゃ理解なんてできないし…」

あいつは納得できないようだった。

「でも、偉い学者がね、
『遠くにある送電線に蟻が螺旋を描きながら移動してるのを見ようとして、
性能の悪い顕微鏡を覗いても見えないのと同じなんだ』と言っていた」
「そうだよね。そんな蟻なんて見ることできないし。
可愛い彼女が涙声で抗議する気持ちよくわかるよ」
「当たり前じゃん。見えない次元なんか理解することできやしないよ」

「じゃあどうするの?」あいつが真顔で聞いてきた。

「じゃあどうするのって聞かれると困るのだけど…。
そりゃさ、人間の目で見ることのできる世界には限界があるし、
次元を超えて多次元をみる事なんかひっくり返ってもできるわけないし…」

そこまで話したとき、あいつはため息を吐いて考え込んだ。

そして、目を輝かせて言った。
「きっと顕微鏡とかじゃなくて、心で探すものなのじゃないかな…」
「心でさがすって‼‼‼」
何だかあいつの答えに、ちょっぴり心が震えた。
震えたのに、私は少し突っ張ってしまった。
「でもさ、やっぱり…、見えないものは見えるわけないんだから」

 

 

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