わたしは基本的に、他人が誰かわかりません。
世の中には相貌失認と言って、他人の顔がわからなくなるものがあるので
そういうのだろうと思ってきました。
……が。じわじわと、わたしは違うのではないかと
思うようになってきました。
相貌失認だと、他人の表情なんかもわからなくなるそうですが、
わたしは他人の表情はわかります。
でも、声を聞いてもわからないし、名前を聞いてもわかりません。
きっかけは、「声を聞いてわからないのか」と言われた時でしたが、
相手がわかっていないときは、声を聞いても誰かわかりません。
相手が誰かわかった後で、声を聞けばその人の声だとはわかります。
でも、なんの情報もないうちに、アニメの声を聞いて、
それがほかのどのキャラの声をやっている人か、というのはわかったりします。
これに気づいて、これがなんなのかと考えていたのですが、
わたしは、『人の顔がわからない』のではないのでは、と思いました。
おそらく、『他人の情報を記憶から引き出すことができない』、あるいは
『他人の情報を記憶から引き出すことがすごく難しい』のです。
たとえば、普通の人は、
自分が他人からプレゼントされたものを部屋で見て、
『これは、わたしが去年友達からプレゼントされた○○だ』と
すぐに思えることでしょう。
見たものに対し、それに付随する情報を、一瞬で引き出せるのです。
これは、わたしもできます。
それと同じく、普通の人は、
自分が他人を見ると、
『この人は、わたしと同じ職場に3年前から働いていて、
席は二つ隣で、からあげの好きな○○さんだ』と
見たものに対し、それに付随する情報を、一瞬で引き出せるのです。
でも、これがわたしにはできません。
人の顔を見て、顔のパーツも表情もたぶんわかるのですが、
その顔が、誰のもので、なんと言う名前で、どんな声を出し、
わたしとどんな知り合いだったのか、
という情報を、まったく引き出せないのです。
その結果として、わたしはその人が『誰かわからない』
ということになります。
ただし、オンラインゲームのキャラを見れば、
名前も自分のフレンドかも、いままで一緒になにをしたかも思い出せるし、
アニメを見ていて声で声優がわかったりするし、
アニメや漫画の絵を見て、誰の絵だというのもわかったりするので、
実際の他人の顔が関わると、情報がめちゃくちゃになるのかもしれません。
たとえば、単色では色の区別がつくのに、
他と混ざると区別がつかなくなる、色盲のように。
するとこれは、記憶の障害か、あるいは脳の異常っぽい感じがあります。
中学二年の途中までは人の顔も名前も、席も区別がつけられたはずなのに
中学三年からは、常にクラスに誰かわからない人ばかりだったので
その間に何かあったのか……謎です。
これさえなければわたしの人生も、まともなものになっていたのかもしれません。