直列☆ちょこれいつ

最近は神社や神道などの古い文書の解読をしています。
研究のまとめはカテゴリ『自作本』から。

レビュー:あの夏で待ってる

2012年04月01日 | レビュー系


アニメ『あの夏で待ってる』を全話見ました。

主役はフィルム式のビデオカメラが好きな高校生の少年です。
ある日、UFOの墜落に巻き込まれて死に掛けたところを、
UFOに乗ってきた宇宙人に助けられます。

その後、宇宙人の女の子は人間のふりをして主役に接触します。
地球で住む場所がないこともあり、
主役の家で同居することになります。
この宇宙人の女の子がヒロインです。

主役の理想の女の子にヒロインがぴったりだったこともあり、
主役の友人の計らいもあり、一緒に映画を撮るように誘います。
ヒロインにできた学校の友人も含め、
一緒に映画を撮ることになります。

主役と仲間は、そのメンバー間で片思いしているのが多数で、
映画を撮っていく中で気持ちが整理されたり
気分が乗ったりして、それぞれ告白していきます。
そのうち主役とヒロインは付き合いだします。
ヒロインが宇宙人だということもみんなに知らされます。

ヒロインを迎えに、ヒロインの姉や宇宙の機械がやってきます。
ヒロインの姉は理解者になりましたが、
連れ戻しにくる宇宙の機械には通じません。

ヒロインが宇宙に帰らなくて済む方法として、
かつて地球に宇宙人が来て、地球人と接触しているという
証拠を見つければいいようなので、探します。

ヒロインが、『どこかは知らないけれど見たかった』という
場所がそれで、宇宙の機械から逃げながらも
到着することはできましたが、確固とした証拠を
見つけることはできませんでした。

ヒロインはしかたなく宇宙に帰りましたが、
その後また戻ってこられたようです。


……というようなお話です。

一話を見たときは、すごい既視感に襲われました。
赤い髪の宇宙人がやってきて、さえない少年と
いちゃいちゃするというようなアニメ、
『おねがいティーチャー』を思い出したからです。

下地になる設定、状況など、これほど似ていいのかと
不安になって調べてみると、同じ監督だったようで、
今度は逆にがっかりしました。
設定を同じようにする意味がよくわかりませんでした。

見ていくと、集まった仲間で映画を撮ることになるシーンでは、
ふと、ゲームの『GREEN ~秋空のスクリーン~』を思い出しました。
仲間で学園祭か何かに向けて映画を撮っていく青春ものに
なりそうだと思いましたが、最終的にはそうなりませんでした。

『GREEN』では、主役が映画に真摯に向き合います。
基本的にはご都合主義ですが、
映画をやっている人でなければ知らなかったようなことや、
お話系の創作をした人がつまづくであろうことが
いろいろと出てきます。

たとえば、それまで考えていた話では展開が
うまくいかないことに気づき、それを解消したいと悩みます。
悩んで悩んで最後にひらめくのは、そのままでいいということ。
行為者の行う行為自体が同じであっても、
自分の中でその行為が持つ意義に違う意味が与えられれば、
納得ができて話をまた動かすことができるのです。

けれど、このアニメでは主役は映画に向き合いません。
監督もシナリオもヒロインの友達である、
訳知り顔の女の子がすべて引き受けます。
主役がやることと言えば、ただカメラを回すだけ。
主役は『映画を撮る』という主体でなく、
『映画撮影の協力をする』という、
ただの小道具でしかありません。

映画を撮ることはこのアニメにとって屋台骨ではありません。
たとえば部活仲間で絵画コンクールに出品する、という
話でもなりたったように思います。

次に気になるのは恋愛要素で、
主役の仲間たちはほとんどが仲間内でそれぞれ別の人間に対し、
片思いしています。
話が進むうちに心が決まって告白の連鎖が起こり、
主役とヒロインは付き合います。
けれど、恋愛要素自体も、屋台骨ではありません。
多くの時間がそれに割かれていますが、
主題のひとつだとは感じられません。

そもそも、なぜ主役とヒロインがひかれているのかが
まったく描かれません。
主役は主体がなく、ただもっさりしているだけです。
映画を撮るときにも、声をかけるのは他人ですし、
愛情の告白も他人からされるばかりで自分からはしません。
とにかく受身で活躍の出番もなく、
見ていても感情移入どころか好意すらもてません。

ヒロインも宇宙から来ただけで、
キャラクターのデザインも行動も、
まったく魅力を感じません。

アニメ内で一番動いていたのは青い髪の子で、
演出としては一番いきいきとして魅力的に見えました。
どうせ描くなら、なぜヒロインにしなかったのか疑問です。

終盤になると、ヒロインが宇宙にもどらされそうになり、
追っ手がやってきます。
恋愛要素はなくなり、ただ逃げて目的地を目指すような
話になります。
ここで宇宙人の設定を使っていますが、
なぜいきなりおっかけっこにならなくてはいけないのか、
おいていかれた気分がしました。

全体として考えると、話の中で大きく取り上げられるのは
みっつあります。
ひとつはヒロインが宇宙人であること。
それから映画を撮ること。
そして、恋愛要素。
でも、どれも主題ではありません。

ヒロインが宇宙人である必要はまったくなく、
普通に外国からの留学生でもなりたちました。
映画を撮ることも、映画を撮ること自体が前述のように
小道具扱いです。
恋愛要素も、メインの二人は『なぜか』好きあっているだけで
具体的なものは何一つ描かれません。
脇役同士の恋愛は描かれすぎていたので、
恋愛ものにしたかったような雰囲気は感じましたが、
それならきちんと学園青春恋愛ものにして欲しかったです。

なにを見せたくて、なにをやりたかったアニメなのか
ふわふわしてまったくわかりませんでしたが、
恋愛要素の個々の部分や、
前半あたりで間に入ってくるギャグなどは意外と面白かったです。

全体では、どちらかと言えば楽しめる方向くらいのアニメでした。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 環境と人間 | トップ | レビュー:ゴーフル »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おやおや? (pqr)
2012-04-01 07:59:54
「おねてぃ」や、さらに「GREEN」が出てくるところがさすがです。
後者は動きがメインだった記憶が…話も楽しめました。それにしても良く知ってましたね?

前者は…やっぱり喜久子姉さんの声でやられました。大好きなんで。「停滞」とか、結構重そうなのもありましたけど、これも楽しかったなぁ…。

ともあれ、あまねさんが楽しめたという「あの夏で待ってる」はぜひ観てみたいところです。
楽しんだもの勝ちですしね!
返信する
Unknown (あまね)
2012-04-01 09:10:27
昔、シナリオやゲームUIなどゲームの勉強をしていたとき、
ゲーム雑誌のライターの知り合いがいたので
借りられるゲームはひたすら借りてプレイしました。
1週間で6本クリアするくらいの勢いでやりこみました。
ゲームショウに行ったり1年で映画を365本見たりしたのも
確かこのころです。

それから、わたしの感想は、お菓子でも映画でも
13段階くらいの評価があります。

+7 すごくよかった
+6 かなりおもしろい
+5 なかなか楽しめる
+4 普通に楽しめる
+3 結構楽しめる
+2 意外と楽しめる感じ
+1 どちらかと言えば楽しめる方向
0 なんとも言いようのない
-1 どちらかといえばつまらない
-2 微妙
-3 つまらない
-4 一度見れば十分
-5 二度と見たくない

『どちらかといえば楽しめる方向』、は
積極的につまらないと言うほどではなく、
つまらなかったかおもしろかったかの二択でのみ選ばされるなら、
おもしろかったというほうを選ぶ、という消極的内容です。
でも、中盤くらいまでは結構おもしろかったですけれど。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

レビュー系」カテゴリの最新記事