世界遺産の番組を見ていたら、原爆ドームの話をやっていました。
原爆ドーム。
あの建物をいま見て、日本人はどう思うでしょうか?
壊すべきとか、壊したほうがいいとかと思う人は
ほとんどいないのではないかとわたしは感じます。
でも。
当時はそうではなかったそうです。
当時の新聞が紹介されていましたが、
見るたびいやになるので撤去してほしいという意見が
被爆者の中に多かったのだとか。
それを見て思い出したのが、この前の東北大震災のことです。
津波によって壊された建物や、津波によって陸に上がった船、
津波によって船が上に載った建物などがありましたが、
被災者の話では、見ると憂鬱になるとか、
見るとつらくなるとか、見ると船が家や人をなぎ払っていった
情景が浮かんできて怒りさえ覚えるとかで、
残さずに撤去してほしいというような話があったように記憶しています。
この状況、まるで原爆ドームに対する、
当時の人の意見と同じようです。
原爆ドームの保存が決まったのは、原爆が落とされてから
21年後だったとか。
それから何十年後かの現在、原爆ドームは
原爆の愚かしさ、戦争の愚かしさ、戦争でなくなった人たちを
思い起こさせる、大切な場所になっています。
それと同じように、津波によって被害が起こったものも、
とっておけば何十年後かには、
日本中の人が知る、津波の恐ろしさ、
津波を甘く見る愚かしさ、津波や地震で亡くなった人たちを
思い起こさせる、重要な場所になるのではないでしょうか。
たしかに今はつらくていやなものかもしれませんが、
ものすごい意味を持つかもしれないものを
そのまま消去してしまうことは、恐ろしいことに思いました。
『記念』というとわたしの感覚ではなにかおめでたいものに
感じてしまうので、適当に『意念』かなにかに置き換えて、
『震災意念公園』など作って、中央に津波シップや津波ビルを残した
一角をきちんと保存して欲しいとしみじみ思いました。
人は、忘れてしまう生き物です。