地元を離れた友達がすこし長めの夏休みを取れたというので、
休みの間はこっちに来て、わたしの部屋にでも泊まったら? と
声をかけてみました。
すると相手も二つ返事でうなづいたので、
わたしは適当に部屋を片付けたりして――今日。
友達の到着を待っていたら、携帯電話が鳴りました。
「も~、まいったよ~」
取ると、聞こえてくる友達の声。
「そっちに行く前さあ、ついでだからお金貸してた子に
会いに寄ったんだけど、もぬけの殻になってたよ~」
「あはは、残念だったね」
思わず笑うわたし。
「ほんとだよ。わたし、どうすればいいんだろ。
なにかしたほうがいいのかな」
そんなことを言うので、あえて明るく言ってみました。
「あはは、やめといたほうがいいよ。
何かするって言ったって、どうせなにもできないし。
すっぱりあきらめて、はやくこっち来なよ」
「そっか、……そうだよね。わかった」
そうして電話が切れてからしばらくして、
ようやくやってくる友達。
「わあ、久しぶり! って……」
挨拶の間にも、変な臭いが鼻をゆさぶります。
「なにこれ。すごく嫌なにおいするけど。なに?」
訊ねるわたしに友達は苦笑いで、
「だって、もう、ひどかったんだから!」
「なあに? 冷蔵庫の中身でも腐ってたの?」
家に上げながら訊ねると、
「ううん、本人」
友達は言います。
「本人? なに? 部屋はもぬけの殻だったんでしょ?」
訊ねるわたしに、友達は言いました。
「ううん。部屋じゃなくて、本人が、だよ」
……もぬけの殻って、魂の抜けた体のことも言うんですね。
わたしは知りませんでした。
という感じの今日のショートショートは2179本目です。
最近100歳を越えた高齢者が、実はどこかに行ってたとか、
すでに死んでたとか、すでに死んでるのに年金目当てで
死体をもてあそばれてたとかろくでもないニュースが
どんどん流れてきますね。
よくよく考えるととても怖いです。
なくなった方の魂が安らかにあることを願います。