第1話 「救急搬送」
「あのね、なんだか頭痛くて…多分ぶつけたかも」
サラは同僚に話すと半笑いで返事が返ってくる。
「頭痛ってそっちか、中かなって思ったよ」
女性の同僚はその後真剣に言った。
「頭に外傷はある?それとも…」
サラには分かっていた。
同僚は精神的な心配をしている。
中学を出て2社目の会社。
ここでは長く勤めたい、できれば早退も休みもしたくない。
「あ、この分だと問題ないですね。一時的かな」
腕を振るい回していると同僚が笑った。
いつものサラに戻っている。
その瞬間だった。
バタッと倒れた時、目の前にいたサラが倒れていた。
「サラ!サラさん!…」
その時からの記憶が定かではない中、気づくといつもの光景。
そこは精神科だった。
「あ、っつー!これで早退になっているの?やだな…」
薄っすら声がする。
耳を澄ましていると、主治医のアリーとカウンセラーのサトの会話。
またか、って感じだろうな、と半ば諦め天井を見る。
「ここから離れたいかい?」
男性の声がしたと同時に、見ていた天井のはずが男性の覗く顔に。
ビクッとして起き上がると、不思議と草原にいた。
頭を振ってみると、やっぱり場所が違う。
「俺の名前はアイザック。君のことは大体は知っているけどね」
サラは順応性が高い。
「じゃあ、どこまで知っているの?名前と年齢とかじゃ…当たり前だけど」
「サラ、18歳、レーラ社の下請けに勤めて2年、最初の会社は1年で辞めてる。母親は…」
そこまで話すとサラは遮る。
「それ以上に知っているのね。はぁ、分かった!それでどうなるかは自由?」
アイザックは何事もなく言う。
「夢だと思うなら良いよ。また会おうか。サラ、ここの場所はね、ノクス。覚えておいて」
不思議とも思わなかった。
サラは安定剤の効果で夢を見ているだけだと感じていたから。
ただ、不思議なことに自分で感じていることがある。
「アイザック…」
1度見た夢の男性に想いを持つことなんてあるのか…
それにそもそも不思議だったこともある。
大体病院で見たならそこで気づくはず。
両親が来ることはない。
だけど、サラは自分の家のベッドにいた。
そして、草原の跡のように服は草で汚れていたのだった。
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