第16話 「【クレバ】の存在」
カトラの姿もなくルーカスは練習、ジーナは偵察でアルバは落ち着かなかった。
午前はみっちり練習はしたが、午後はルーカスと交代だった。
トウジキからの連絡で補修をするとのこと。
その時の様子が知りたかったが見に行くことができない。
トウジキが連絡で答える。
「【クレバ】さんがテキパキしてくれてね」
初めて聞く名前にアルバは「【クレバ】さんって誰です?」と聞く。
工事の関係の人らしく不思議とトウジキと話が合うとか。
「40歳くらいの人でね、娘さんが昔不登校だったらしい」
アルバもカトラも、ラン エイマの話はしていない。
妙な感じがしたが、トウジキは工事が早くてそれどころじゃなかったようだ。
カトラには伝えようと思っていた。
「そうそう、もうすぐカトラもくるよ」
まるでカトラに会うまでに完成させたかったようにも捉えられる。
考えすぎだな、と切り替えた。
「最近外部の連絡がなかったから、新鮮に感じたよ。これじゃダメだな」
トウジキの言葉に、吹いてしまった。
確かに見知った人数でしか動いていない。
トウジキは研究者だからなおさらだろう。
アルバが「トウジキさんって結婚してるんです?」と聞く。
「38歳独身だが文句があるかい?」と笑いながら答える。
「いや…落ち着いているから、と思っただけです!」とアルバが急いで答える。
「若い頃から子持ちの思われてきたから今更平気だけどね」とトウジキ。
「しかし…ん?」誰かが呼んだようで連絡が止まった。
何気なく聞こえてきた声がある。
「後片付けだけなので下に任せて帰りますね」
どうやらクレバと言う人の声らしい。
トウジキに一言。
「アルバ ハジメくんによろしく」と残して去って行く。
トウジキが黙っている。
「アルバの話は一切していないよ、怪しんだ方が良いな」とトウジキ。
せっかく話せた相手が怪しいようで残念そうだった。
でもすぐ立ち直って、最近のことをアルバに聞く。
ラン エイマの話をすると、詳しくはカトラに聞くと答えて連絡は途切れた。
「繋がっているかもしれないな」とアルバは思った。
「エイマ…まあ疑っていても仕方ないけどさ」と独り言を言う。
機械が相手なら誰かが操作をしているはず。
ジーナは大丈夫かと思っていた。
そこへルーカスが現れて汗を拭く。
「練習で汗ってすごいな」と言うと、当たり前のように「ジムでも鍛えてきたからな」と答える。
アルバが「そんなにマッチョになってどうするわけ?」と聞くと普通にルーカスが言う。
「敵がビルほどあったらどうする?」とアルバに聞く。
アルバはなおさらジーナが心配になりつつ、自分もジムを使わせて欲しいと頼んだ。
そこそこ筋肉がついてきたアルバだったが、カトラやルーカスには及ばない。
特にルーカスには追いつきそうもなかった。
アルバがトウジキとの一連をルーカスに話す。
「今はみんなが怪しいさ、トウジキさんも分かっているはずだ」と言う。
いきなり現れた業者を名乗る手早い【クレバ】と言う名の男の姿はトウジキしか知らない。
それがそもそも疑問だった。
トウジキがトップなのは分かっていたが、カトラが来る前に、と言うのが気になっていた。