25話 「ジャンク屋に現れた男」
鏡俊一と安藤成は、世界がとんでもないことになっていることを知っていたが、なぜかどの国がどうなっているのか放映されていないことに不思議な思いでいた。
2人はイタリアから日本に帰っていたのだった。
ジャンク屋を買う資金ができたら、ジャンク屋の主人が「こんなボロ店売ってやる」と言い「俺が反対にガラクタになりそうだからな」と笑って安く譲ってくれたのだ。
やっと鏡の夢は叶っていたが、安藤はイタリアで成功はしなかった。
諦めない安藤は「日本で勉強のし直し!」と鏡と戻ってきていた。
2ヶ月前のことだったが、バイトをしながら2人はいた。
とてもジャンク屋が人気になるほど、まだ準備は整っていなかった。
ただ2人は守里に缶バッチをプレゼントした際「日本に戻って待っている!」とだけ伝えて、どこにいるかは教えていなかった。
鏡と安藤は「守里…今どうなっているんだとうな…てか何で放映もされないのさ」
不安を抱いている2人の近くに見たことのないスーツの男がいた。
ジャンク屋にいた2人はお客にしてはおかしいと思いつつ、平然と近寄って言った。
「ここは小さな店…っていうかガラクタだらけで…」と鏡は商売になるならと近寄った。
「…マーズを知っているか」無表情で質問するスーツの男に顔を見合わせる2人。
「えっと…マーズ?ですか?」と優しい安藤が聞くと鏡は答えた。
「長いことここにいますが、部品にもなかったような…なぁ」と言うと男は無表情で言った。
「セイナ・凛を知っているか」相変わらず無表情な男に鏡がいい加減にしろと言いたげに怒って言った。
「知らないし!唐突にわけの分からないこと連呼してさ…」まで言うと安藤が抑えて「聞いたことないですが、元ここにいた人かもしれませんが、年配の方なら分かりませんね」と冷静に答えた。
無表情だった男に鏡が「名前も名乗らないで失礼だよ!」と怒るとまた安藤が静止して「すみません!あ、何でもないですがご覧になるなら自由に見ていってください!」と鏡の口を抑えながら話すと何も言わずに去って行こうとした。
安藤は不思議そうに「あ、何か分かったらご連絡いたしますか?」と聞くと男は空を見つめてから冷静に答えた。
「セイナ・凛、マーズについて話してしまったな」2人は顔を見合わせていると、銃口が2人に向いた。
その瞬間衝撃があり3人の体制が崩れ「アベルト・ゼスタローネ様!すぐにお戻り下さい」と大地が揺れると同時にどこからか無線が入った。
鏡がその隙に銃を奪おうと走るが、安藤は衝撃で転んでしまい間に合わなかった。
アベルト・ゼスタローネと呼ばれていた男は銃をしまうほどの余裕を見せて、鏡が奪おうとするのを余裕でかわし、いきなり蹴りとパンチが鏡を襲った。
見たことがない大きな機体が目の前に現れ、安藤は転びながら鏡に近寄って2人で見ていた。
「安藤…何だよあれ…」血を拭う鏡だったが、アベルト・ゼスタローネと呼ばれていた男は無表情で無言のまま黒くて大きな機体に乗って去って行った。
見たことのない巨大な真っ黒な機体に、何とも言えない不安が2人を襲っていた。