第1話 偶然
隠れて、とはいっても内部までは知らない安藤成と鏡俊一。
実は安藤も、鏡も何となく守里剣の行動には何か怪しいと思っていた。
特に鏡は優しいけど、興味があることは何でも目の色を変える。
安藤は優しく頼もしいが、ちょっとずるがしこいような鏡俊一もいた。
でもお互い内緒を貫いていた。
2人とも大切な仲間であり、2人は先に16歳を迎え、守里はやっと同じ年になっていた。
自分で造った大切なものが隠されていたので、そんな想いで眺めていたら、ついつい買い出しを忘れるところ。
気付いたら夕方になっていた。
守里は際立って頭が良かったが、家庭に事情があり、詳しいことは守里自身も分からないタブーとされてたから。
「やばいなぁ…こんな時間かぁ…」
そう言い立ちながら慌てて、欲しかった部品に行こうと思っていたが…
タイミングが悪いと大体上手くいかないもの。
買いに行く途中もう帰ったとお店に言われ、「まだ、店長近くにいるかなぁ」と、後を一目散に店長を追ってみたら…。
なぜかひたすら振り向きながら、必死に逃げるように走る女の子がいた。
振り返っても守里以外誰もいない…。
するといきなり!電撃でも浴びたかのように、「動かないでね!手を挙げてもらえるかなぁ…?」
驚いた守里はとっさに両手を挙げたが…守里は持っている電撃のようなものに目を奪われ、とっさに言った。
「これ君の?どこで買ったの?誰から買ったの?電力かぁ…いいなぁ…何に使うの?」
と畳み掛けて質問されキョトンとした顔でのぞき込んだ。
「えへ…えっとぉ、よく分からないけど、ここは自己紹介から始めないと答えづらいなぁ…」
我にかえった守里は、ハッとして、「あ、そうだね、俺は守里剣!今日どうしても欲しいものがあったんだけど間に合わずで…」
困ったようにしゃがみ込む守里だったが、照れながらも工具を持っていることに気付き、その少女は覗きこむように、「あの…役に立てればと思うんだけど、話を聞かせてほしいな!」と答えた。
「てか…そもそもなんで逃げて、物騒に俺に向けたのかなぁ」
不思議そうに少女を見ていた。
「あたしはセイナ・凛、えっとぉ…何て呼んだらいいのかなぁ?」
「俺??うーん、じゃあ守里でも剣でもいいよ?って中途半端だから剣でね。えっとぉ…」
「ごめんね、あたしは星月だから、みんなにはセイナ…凛・凛とかかな?」
「兄弟か姉妹がいるの?」その質問にセイナは「うん、いるよ。」
「じゃあ呼び名が決まるまでは、セイナでいいかな?」照れながら聞くと、
「決まりだね!えへ…ところで剣は何が欲しくて走っていたの?あたし驚いちゃったよ」
「あたしは今日はたまたま買い物に1人で行ってきてって言われて来ただけなの」
「ちょっと、追われてるのかなぁ、なんて思ってビックリしてゴメンね!」
と頭をポンポンしながら失敗した時のように答えた。
「うーん…あ、ところでいくつ?俺は16歳…てかなったばかりかな」
「ひえーっ!誕生日なの?あたしは13歳なんだ、えへっ」
「そうそう!のんびりしてたら買い損ねたって感じのドジなんだよなぁ…俺…」とへこんでいる。
「欲しいのって…」まで言いかけると、「刀でしょ?あと動力も必要なんだよなぁ、塗装もダメだし…やっぱりダメかなぁ…」
「そしたら君…じゃなくてセイナがエネルギー持ってるでしょ?感激しちゃってさ!」
「だからかな、それってどこかなぁとか、もしかして刀持ってる?イタリアじゃないかなぁとか…」
とたたみ掛けるように熱く話しだしました。
ハッと我にかえったように、守里剣は、「ゴメン!もう少しのところだからってムキになっちゃったかな」と頭を掻きつついると、今度はセイナが、守里剣の持っている工具に興味があったようで、反対に守里剣に質問してきた。
「あれ~?持っているの工具じゃないのかな?」
セイナは守里の持っている工具が気になり「あ、ああ、これね、俺にとって必需品!周りにはガラクタ呼ばわれさ」
するとセイナは、「あのね、設計図があって、それで考えて…」と話していると、今度は守里剣が、「何だかアイディアが浮かんできたり、これ違うと思って変えたりとか…浮かんでくるって感じ?」
すると何だか嬉しそうに、セイナは「そんな感じになって…そのうち実現できたら嬉しかったりね」
2人でなんだか盛り上がっていた。
ふとセイナがそういえば…と何か思い出しつつ、それでも考えているようで、それでも突然考えた挙句に、「あのね、おじいちゃんにもらった刀はあるんだけどね!あたしの管理じゃないし…」
そこへ守里はセイナに、「セイナ、あの武器って何だったの?」そう聞くと、「アサルトモードって言って武器になるんだよね、1人で作ったの」
守里は感心したように、
「女の子で1人で造るって凄いね、はあ…、関心しかないよ」と笑って言った。
「工具とかって何を造っているのか…あのね、でも…」セイナは工具、守里はエネルギーと塗装、刀、お互いに興味があることに気付いた。
「あたしだけじゃちょっと…ララ姉やカラン姉やトキノさんに聞いてからかな…」
「じゃあさ、ゲンナ号に来ないかなぁ?」
とセイナは守里に聞いたのが全ての始まりだった。
守里の顔を覗き込んでいるセイナ、聞いたことのない名前に戸惑いつつ、守里の出した答えは、「…ゲンナ号…興味深々だなぁ!」
てっきり追われていると思ったことから、セイナ・凛と、ちょっと正義感強そうな守里剣は、偶然が質全に変わる予感はあったのかもしれません。
でもそんな話が全て順調に行くはずもなく、守里剣と、セイナ・凛にはまだまだ説得しなければならない人、どこまで話して良いか分からないという守里剣の複雑な心境もあった。