第4話 「黒い影」
居心地が悪そうでなれた空間、サラはいつのように病院にいた。
2週間に1度の受診。
1ヶ月に1度のときもあったが、仕事が変わって不安定だろうと2週間に1度。
「待ち時間が長い…」
心の声が口から出てしまい、隣の同じ精神科の患者さんが気づく。
何事も無いように、本を取り出して思い立った。
「そっか、日記に書くんじゃバレるかもしれないから本の片隅に…」
そう考えて3日前に「ノクス」に行った日付を書く。
「サラさんね。順番ですからどうぞ」
ちょっとのそっとした感じの、カウンセラーの男性に声をかけられた。
いつもの出来事を話していると、カウンセラーのサトは話す。
「淡々と話しますね。会社が変わっても不安は大きいようですが、小さく聞こえますね」
カルテに書きながら手を止めサラを見る。
サラは毎回言われているので慣れていたが、ちょっと咳き込んだ。
「夢で同じ人間になんども会う確率ってどのくらいですか?」
唐突な質問に平気な顔だったサトはちょっと微笑んで答える。
「夢を見て同じ人間に会ったのですか?」
サラは普通に確率の話だと説明した。
サラはこのカウンセラーがいつも優しく、丁寧なので嫌いじゃ無い。
むしろ話しやすいので、取り繕うカウンセラーとは違いを感じている。
以前1度かかった病院のカウンセラーは真剣だったが、目の印象は良く無かった。
サトはドジをするほど丁寧。
そこがまたサラにとっての安心でもある。
そしてサラは機転が利くので、質問に簡単に答える。
「会えたら良いですよね。先生は会いたい人いますか?」
サトは考えてから答える。
「質問するなんて珍しい。同じ人に会ったんですね?」
サラはたまたま持っていた、少し前の本を取り出す。
「これ、夢で会うなら誰に会いたいかっていう心理テストの本なんです。だから。」
事前に用意していた本だった。
こんな質問もあるだろう、サラはなんとなく思っていた。
「心理テストですか…やってみたいですね」
サトは答えた後、サラに言った。
「カウンセラーが心理テストもおかしなことかな?良く読むんですか?」
サラは正直に答える。
「今日買いました。私もまだなんです」
カルテに書く手が一瞬止まったものの、サトは笑っていた。
「先に使っちゃったね」
サトが言うと、サラは平気に答える。
「だって、凄い長い本ですよ?少しずつですね」
時間になって部屋を出る時、サトが質問をする。
「次回は2週間後かな?1ヶ月にしておこうか?診察とは違うから」
「2週間後は…シフトがギリギリなので、1ヶ月後で」
その後再びサラが部屋に行き。言うことを忘れていたことに気づく。
「私仕事変わったので、2週間後で!」
頷くサトは微笑んだが、結局答えは分からない。
「ま、いいか。って思っているね?」
アイザックだった。
「え、だって、ここ病院だから…」
質問しようとした時、アイザックの姿はなかった。
その代わりに赤い目の黒い大きな「何か」がいる。
その瞬間だった。
目の前にアリー医師がいて、不思議そうにしている。
そして黒い姿はなかった。
でも確かにいた、だって…
サラの持っていた本は、燃えかすのようにボロボロになっていたのだ。
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