第6話 「今ある現実」
いきなり草原にいたが、サラはもう慣れていた。
「アイザック、いるなら質問はたくさんあるの」
サラの質問に答えたのはアイザックではなくセセリナ。
「分からないことがたくさんでも、1番気になるのはアイザックのこと、そしてここ「ノクス」のことでしょ?他にもあるのは分かっているわ」
セセリナが優しく答える。
「ノクスは夢じゃないの。あなたの心。そして現実に起こることでもあるわ」
続けて話し始めた。
「人は夢だとか思うこともあるけど、誰でも現実を受け入れないだけ。簡単なのよ。この空間は狭間のようで、受け入れれば現実になる」
サラでも戸惑った。
「小さなとき、夢で現実になれば良いって思うことは誰しもあるの。でも現実ではあり得ないからって、大人になれば忘れていくこともある」
サラはまさに今がそうで、小さなときにもそんなことがあったかを考えた。
そしてサラが話す。
「月にいた少年が笑っていて空を飛んだ夢を見たことがある、っておとぎ話?」
サラの言葉にアイザックが現れて続ける。
「その少年は会うことがあるのに、誰も会わない。みんな忘れるんだ。所詮は空想だって。おとぎ話だから気にすることがないように忘れていく」
サラは夢と現実の狭間のことが、誰でもどっちにも転がることだけは理解した。
ここは空想の中だけど、現実になることもあり得ると。
アイザックに小さいとき会っていた記憶はない。
「ザメフィス…悪魔のような存在がいる」
サラが見たことがあるあの黒いのだと思った。
「空間は歪んでいて、みんなが夢で終わらせようとしていたことを現実にしないようにしている。そして、あいつは自分に気づいた存在を消そうとしている。難しい?」
サラはかなり頭が回るほうだが、流石に分からずもう一度聞いた。
「異空間なの?現実なの?病気のせい?」
「今は君の心の中、つまり空想。サラ次第で現実の世界になる」
アイザックの言葉に、サラは自分の病気も関係しているかもと思った。
でも目の前にあることは確かなこと。
実際草むらの跡のことで、サラは洗濯をするとき落ちなくて困ったほど。
「まあ、とにかく空想のような現実…なのね…?自由に会えないの?」
サラの言葉にアイザックの顔が歪む。
「あいつが邪魔をしている。ザメフィス…」
アイザックは続けた。
「自由は聞かないけどまた会える。いつか簡単にね」
セセリナが消えた。
アイザックは最後に微笑んで、アクアマリンのペンダントを渡して消えた。
サラには分かっていたことがある。
このペンダントは消えない存在だと。
空想じゃなく、アイザックは実在する。
邪魔をする存在さえいなければ、それだけは分かった。
こんな話、誰に話しても病気のせいにされる。
下手をすれば入院扱い。
ペンダントを握りしめながら、サラは自分の部屋の中で現実に近いと感じていた。
冷静に思うこともある。
ノクスの名前に聞き覚えはない。
どこまでが現実か分からなかったが、考えないようにした。
目の前にあることが事実だからこそ、明日行くレーラ社の準備を始める。
病気だとか関係ない、ただ気になったのはセセリナが守る存在と言った意味かもしれない。
【GEOオンラインストア】に興味のある方はこちらもご覧ください↓