恐ろしいほど高いところにいた。
眼下に広がる街の景色は、豆粒のようで。
赤青と点滅するネオンも、ややかすんで見える。
遥か上空で、吊り下げられた
そこだけ浮いたようなデザインの、近未来的なフロアの様な、回廊の様な
その回廊はクリアな素材で作られていて、手すりも何も無く
むしろ、途中が切れていて、どうやって渡るのかとか、どうやって使うのかとか、考えるのは既に皆無に等しく。
まるで一種のアスレチックのような施設。
私の居る所は、そこと余り代わらない高さの部屋でもない、ヘリなどでもない、宙に浮いているわけでもない、変な感覚の中で。
まるでテレビの中継を見ているような、第三者のような視点で。
なのに、胃の底から這い上がってくるような独特な感覚は、ずっと続いている。
空は、真っ黒だった。
そして、異常に近かった。
私は一人だった。
飛んだら死ぬと言うのは、確実なのに、飛ぶ気はなく、なのに、こんな高さに居ることに恐怖を感じつつ、降りる気もなくて。
まるで、競技の様に、人々がそこを渡って行くのを(皆何故か男のひとばかり)お祭りのように騒ぎ立てる人々を避けて、私は私の部屋に居て…
出かけるからと、誰も侵入不可能な(何階建てか判らない)その部屋の、窓に鍵をかけ、カーテンを閉めている。
覗き防止の加工のされた、ガラスの向こうには、歪んだ赤いネオン(高い所に点滅しているやつ?)が、ゆらゆらとゆれていた。
心臓だけがバクバクと肺を圧迫するようになっている。
私は誰かに(一人だったと思うけど)声をかけ、玄関から外にでて、家の鍵をかけた。※この時は何故か愛用の黒地に彼岸花の浴衣。
そこだけ作りの悪い、汚い鉄の扉で、所々が錆びて変色していた。
埃のかかった電気のメーターだけが、ユルユルとまわっている。
左手にある、小さい明り取りから、(何故か)日の光がうっすらと刺していて、踊り場で鍵をかける私。
踊り場は一畳ほどしかなく、部屋があるのは私のところだけで、セメントで塗り固められた階段がそれでも上に続いていた。
エレベーターも無いこの建物(ビル?)の階段を降りた私は、どこかに行くつもりだったらしく、気が付けば電車(窓の外がトンネルのように真っ暗だったから、もしかして地下鉄?)に乗っていた。
ジリジリと音を立てる白熱灯が、くすんで白っぽく車内を照らし、ふと見上げると、蛍光灯の端が、黒っぽく変色しかかっているのがわかった。
「取替え時だな。」と、私は現実的に思った。
そのとき、ガタンと電車が大きく揺れて、私は転倒しかかった。
あ、と思ったが体は言うことを効かない。
相変わらず心臓はバクバクいって、破裂しそうになっていた。
転ぶ、と思った瞬間、視界に黒いものがふっと現れ、私の体の傾きはそこで止まる。
「大丈夫?」と聞かれる。
腰辺りに重いものを感じながら、閉じかけた目を開くと、そこにあの人(仮にRさんとしておこう)が居た。
「え、あ、はい、どうしてここに?」と私は言ったと思う(覚えてない)。
Rさんは、片方の腕でつり革をつかみ(だったと思う)、片方で私を支えたままで、「姫(ここで自分がゴス服を纏っている事が判明)が危ないときは、いつでもきますよ。(あの言い方を真似して)鍛えてますから」と言った(と思う)。
それからにっこりと笑って、私の額に額をこつんとあててくれた。
ダークグレーか黒の粋なスーツに、白いシャツ…だったかな。
私は嬉しくて嬉しくて、自分よりずっと背の高い彼の顔をじっと見た(と思う)。
少しRさんが「?」な表情をしたあと、私の鼻の頭に軽くキスをして、「ほら、もう帰らないと」といった(と思う)。
私は(何も疑うことも無く)頷いて、彼にしっかりと肩を抱かれて、次の駅で一緒におりた。
…気が付けば、物凄いサイレンが鳴っていた。
目が覚めると、外は明るく、時間は11時少し、だった。
今日は9日、「長崎の日」。
心臓は口が出そうな位バクバクしていた。
あのまま電車に乗っていたら、どうなっていたんだろう。
そういえば、電車には、サラリーマンとか、学生風の他に、何かが乗っていたと思う。
なんであんなに暗かったんだろう。
今だからおもうけれど、
…助けてくれて有難う。
眼下に広がる街の景色は、豆粒のようで。
赤青と点滅するネオンも、ややかすんで見える。
遥か上空で、吊り下げられた
そこだけ浮いたようなデザインの、近未来的なフロアの様な、回廊の様な
その回廊はクリアな素材で作られていて、手すりも何も無く
むしろ、途中が切れていて、どうやって渡るのかとか、どうやって使うのかとか、考えるのは既に皆無に等しく。
まるで一種のアスレチックのような施設。
私の居る所は、そこと余り代わらない高さの部屋でもない、ヘリなどでもない、宙に浮いているわけでもない、変な感覚の中で。
まるでテレビの中継を見ているような、第三者のような視点で。
なのに、胃の底から這い上がってくるような独特な感覚は、ずっと続いている。
空は、真っ黒だった。
そして、異常に近かった。
私は一人だった。
飛んだら死ぬと言うのは、確実なのに、飛ぶ気はなく、なのに、こんな高さに居ることに恐怖を感じつつ、降りる気もなくて。
まるで、競技の様に、人々がそこを渡って行くのを(皆何故か男のひとばかり)お祭りのように騒ぎ立てる人々を避けて、私は私の部屋に居て…
出かけるからと、誰も侵入不可能な(何階建てか判らない)その部屋の、窓に鍵をかけ、カーテンを閉めている。
覗き防止の加工のされた、ガラスの向こうには、歪んだ赤いネオン(高い所に点滅しているやつ?)が、ゆらゆらとゆれていた。
心臓だけがバクバクと肺を圧迫するようになっている。
私は誰かに(一人だったと思うけど)声をかけ、玄関から外にでて、家の鍵をかけた。※この時は何故か愛用の黒地に彼岸花の浴衣。
そこだけ作りの悪い、汚い鉄の扉で、所々が錆びて変色していた。
埃のかかった電気のメーターだけが、ユルユルとまわっている。
左手にある、小さい明り取りから、(何故か)日の光がうっすらと刺していて、踊り場で鍵をかける私。
踊り場は一畳ほどしかなく、部屋があるのは私のところだけで、セメントで塗り固められた階段がそれでも上に続いていた。
エレベーターも無いこの建物(ビル?)の階段を降りた私は、どこかに行くつもりだったらしく、気が付けば電車(窓の外がトンネルのように真っ暗だったから、もしかして地下鉄?)に乗っていた。
ジリジリと音を立てる白熱灯が、くすんで白っぽく車内を照らし、ふと見上げると、蛍光灯の端が、黒っぽく変色しかかっているのがわかった。
「取替え時だな。」と、私は現実的に思った。
そのとき、ガタンと電車が大きく揺れて、私は転倒しかかった。
あ、と思ったが体は言うことを効かない。
相変わらず心臓はバクバクいって、破裂しそうになっていた。
転ぶ、と思った瞬間、視界に黒いものがふっと現れ、私の体の傾きはそこで止まる。
「大丈夫?」と聞かれる。
腰辺りに重いものを感じながら、閉じかけた目を開くと、そこにあの人(仮にRさんとしておこう)が居た。
「え、あ、はい、どうしてここに?」と私は言ったと思う(覚えてない)。
Rさんは、片方の腕でつり革をつかみ(だったと思う)、片方で私を支えたままで、「姫(ここで自分がゴス服を纏っている事が判明)が危ないときは、いつでもきますよ。(あの言い方を真似して)鍛えてますから」と言った(と思う)。
それからにっこりと笑って、私の額に額をこつんとあててくれた。
ダークグレーか黒の粋なスーツに、白いシャツ…だったかな。
私は嬉しくて嬉しくて、自分よりずっと背の高い彼の顔をじっと見た(と思う)。
少しRさんが「?」な表情をしたあと、私の鼻の頭に軽くキスをして、「ほら、もう帰らないと」といった(と思う)。
私は(何も疑うことも無く)頷いて、彼にしっかりと肩を抱かれて、次の駅で一緒におりた。
…気が付けば、物凄いサイレンが鳴っていた。
目が覚めると、外は明るく、時間は11時少し、だった。
今日は9日、「長崎の日」。
心臓は口が出そうな位バクバクしていた。
あのまま電車に乗っていたら、どうなっていたんだろう。
そういえば、電車には、サラリーマンとか、学生風の他に、何かが乗っていたと思う。
なんであんなに暗かったんだろう。
今だからおもうけれど、
…助けてくれて有難う。