にそくにりん

自転車やバイクでのツーリング。ハイキングや登山。そのほかいろいろ。

俵原越

2002年10月12日 | サイクリング

 大分秋らしくなってきた。2002年10月12日、久し振りにMTBに跨る。
サドルを変えてから初めての輪行。お尻の痛いのが少しは違うであろうことを期待する。

3時起床4時家を出発。三次の雲海を見るため高谷山による。
展望台駐車場には20台ほどの車がきていて空の白むのを待っている。展望台にあがってみるとカメラの三脚がずらりと並び、場所取りはすでに終わっていた。

次第に空が朱に染まってくる。太陽が顔を覗かせる。感嘆の声があちこちで起こる。日の出をこうしてみるのは久し振り。
早起きは三文の徳である。あっという間に太陽は昇りオレンジの空は白く色を変えていく。雲海は波打ち島陰がはっきりと浮き上がってくる。地球の自転のスピードを感じる一瞬。

しかし、こんな美しいドラマを日々繰り返す地球を傷つけたり汚したり。人間のおろかさは果てしも無く続く。ノーベル平和賞をいただいた国の人達はそのことをよく考えなさい。其の為に与えられた物なのだから。
己が欲望にのみ目が向いていれば未来の見えまいことを。

高谷山を降りて三次市から高野町へr39をドライブ。
ススキの揺れる山裾、朝靄に煙る田畑。稲刈りの済んだ田んぼに並ぶ三角の帽子を並べたような稲藁。朝の斜光が立ち昇る靄に掛り扇形に広がる。
仕事を終えた大地がほっと吐息を吐いた、そんな感じの靄である。

8時。R432の道端に車を駐車してMTBを下ろす。新市の「母さん市」ではもう大きな白菜や大根を並べている。
「大きな大根だね」とおばさんにいうと「美味しんじゃけ買うて帰えりんさい」と盛んに進めてくれる。帰りによることを約束してスタート。

久々のペダルの感触を確かめながら円正寺の前を通り信号を右折。R432を北に進む。
県北にきていつも感激するのは、花の色のきれいなこと。コスモス、サルビア、鶏頭、ダリア、マリーゴールド。道端や庭先、畑に植えてある花達の赤や黄色が鮮やか。

王貫峠に向かう割となだらかな坂をゆっくりと上る。紅葉には少し早いが、今はススキがちょうど見ごろ。
黄金の穂が朝の光に輝くさまは何とも言えず心を和ませ、秋の深まりを待つ静けさが辺りを覆う。

9時10分、王貫峠を越え島根県へ入る。この辺りの峠は、広島県側のなだらかさに対し島根県側は険しい。
阿井川沿いに快適な下り坂が続く。たたらの盛んであったこの地方、川底は赤茶色に染まり鉄分の多さを物語る。

r49を右にとり横田方面に。アップダウンの細い田舎道が入り組み交差し、通り抜けの道やら私道やらわからない。
小さな交差に出くわすたびにGPSと地図とを見比べる。緯度、経度のポイントとコンパス、地図上の現在位置。新しい林道や農道が出来、地図に乗っていない道も多いため焦らず慎重に道を選ぶ。
坂道の多い辺りで道に迷うと精神的にも肉体的にもダメージが大きいのだ。土地の人がタイミングよくいれば助かるのだがそうもいかない。田畑は多いが民家は少ない。

途中で途切れていたr49に再び出会いほっとする。小馬木川沿いにr25を南へ。
収穫の済んだ畦にコスモスが揺れる。遊んでいた子供たちが手を振る。「こんにちは」といえば大きな声で「こんにちは!!」が返ってくる。彼らの輝きが胸にキュンとくる。
左に取れば吾妻山、r110を直進で高野。今日のスペシャルステージ俵原越を目指す。

 小馬木から道は細く山の中に入っていく。木屋谷で庭仕事のお爺さんに道を尋ねる。道程を教えてくれて「しっかり楽しんできんせ」と励まされる。

坂は次第にきつくなり山襞を縫う。ときどき蛇が横断していてびっくりさせられる。あちこちに栗のイガが落ちているのだが、中身の栗がぜんぜん見当たらない。誰か拾いに来ているのかと思っていてのだが、そうではないのに気がついた。
野生の動物たちが食べているのだ。当たり前のことに感心し、なんだかうれしくなってきた。

吾妻山や比婆山が見える。振り返ると麓の集落が小さく、けっこう距離を上っている。しかし距離の割には短く感じる、いい感じの山道である。
標高768m俵原越を越え広島県へ。

景色は一変し広々とした高原風景となる。ススキ野原が広がりその間を緩やかな一本道が延びる。
立ち止まり見渡す。通り抜ける風は私の心の源風景。幾つもの記憶の襞に重なる景色。
しばらくは体が動かない。感情が遊離してしまったようだ。
たっぷりと心の清涼水をもらいペダルに足をかける。

俵原川沿いの木漏れ日の中を、満ち足りた思いで気持ちよく流す。
高野までほとんど下り道である。

  コース  高野 ⇒ 王貫峠 ⇒ 小馬木 ⇒ 俵原越 ⇒ 高野
       走行距離   47km
       所要時間   5時間45分


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