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趣味や旅行,日常の日記

奥熊野黄金列車

2015年08月27日 | 日記



http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00204386&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1


赤金の結末?

戦前の朝日新聞


眩しいゴールド・ラツシュの風が吹きはじめてからまだほんの数年とたたない国立公園奥熊野の景勝地帯に日本一の大規模を誇る大選鉱所が近く出現する、これと同時に辺り一帯に散在する各鉱山を地下で結ぼうという鉱山界としては画期的な地下大トンネルの掘鑿計画まで樹てられ、両者とも目下着々工事が進められているので、南国的景観を誇る蓬莱境の地下には日本一の黄金郷が現出するだろうと鉱山界の話題を賑わせている
[図表あり 省略]
大阪鉱山監督局菅井鉱業課長は約一週間にわたり熊野川、北上川両河川流域の金鉱地帯を踏査視察しこのほど帰阪したが、同課長の報告によるとこの地帯の金鉱熱は全く想像以上の活気を呈しており
重要鉱山として指定された紀州鉱山、楊枝鉱山(いずれも石原産業経営)また准重要鉱山たる川肢、三和の各鉱山をはじめとして奥熊野の
蛇紋岩帯一億坪にわたり現在採掘中のものは八十四鉱山(約一千三百六十九万坪)また試掘中のもの百ヶ所(約四千二百七十三万坪)という広汎なもので、山という山、谷という谷至るところから景気のよいハッパの響が伝わつている
こんど出現する大選鉱所というのは紀州鉱山と三和鉱山の中間地区である三重県南牟婁郡八鹿村字板屋に着工されたもので、その規模は現在こ の鉱山地帯唯一の選鉱所である三和選鉱所の十倍もあり一日に原鉱一千トンを処理出来るという凄いもので
わが国では問題の尾去沢鉱山における選鉱所がただ一つこれに比肩し得るだけである
これは最近浄瑠璃三十三間堂棟庄来で有名な楊枝の里の白石鉱山をはじめとしこの附近の大きな鉱山のほとんどが石原産業の手にまとめられた関係から同会社としてもここに大量の原鉱を処理し得る大がかりな選鉱所がぜひとも必要となつたため大決心のもとに建設することになつたわけで、目下基礎工事中であり来年三月までには竣工する意気込みである
この大選鉱所に各鉱山から原鉱を集中する目的で計画されたのが、わが国鉱山界でも例のない地下大隧道で目下紀州鉱山と三和鉱山の間を地下千五百メートルだ け掘り進められているが、将来は五千五百メートルの長さにまで開通しデイーゼル機関車をこの中に運転しどしどし原鉱を搬び出そうというのである
このほか鉱石運搬用の索道三キロ四も計画され目下測量中であり、このほど出来上がつた瀞八丁と海岸の阿田和を結ぶトラック道および六月末に開通の見込である宮井、新宮間の国立公園道の完成などと相まち奥熊野の鉱山界は従来の熊野川を下る三段帆河船による鉱石輸送上の不便さを解消して一躍産金王国のタイトル目指し景気の渦に沸き返つている
鉱山監督局菅井課長談
「奥熊野における金鉱の活況ぶりは全く驚異に値する、こんど石原産業が大々的に着手した諸計画が完成する暁はそれこそわが鉱山界にすばらしい刺激を与えることになるだろう、この国立公園地帯にかくのごとく鉱山が簇生してくると伝説と景勝の熊野が誇る美観を破壊することになりはしないかと一般に懸念されているようだが、鉱区はすべて瀞八丁などの景勝地区から峰や谷を距てたところにあるのでその心配はないと思う」

データ作成:2000.5 神戸大学附属図書館