ののほんじゆうちょう

管理人nonohonが不定期にラクガキします。

妄想代理人

2006年08月06日 | マンガ・アニメ
そういえばずっと書き忘れていた『妄想代理人』の感想。

『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』などの近敏監督初のTVシリーズ。ずっと観られないでいたので、レンタルでまとめて観ることに。
すると再生してまずそのオープニングにやられました。
私はかつてこんなに壮大で怖いオープニングを見たことがありません。もうただただ「怖い」のです。荘厳な音楽とともに、一人一人キャラクターが映される・・・ただそれだけなのに。キャラクターは全員が正面向きに直立で満面の笑み。他に誰もおらず、全く脈絡のない笑顔。理由のない笑顔がこんなに怖いとは・・・(確かに全く知らない人の笑い声だけが留守電に入ってたらと想像すると非常に怖い)。そして背景はまず本来人間がいないはずの場所か、逆に本来人が大勢いるはずの場所に誰もいないという、完全にどこかが破綻した絵。特別でないものを少しずらすだけでこれほど恐ろしく表現してしまう、まさしく「妄想」の名に相応しいオープニングでした。


物語のはじまりは、人気イラストレーターの鷺月子が夜道で暴漢に襲われる。月子の証言ではローラーブレードを履いて金属バットを持った少年だったという。しかし目撃者はいなく、警察は月子の狂言ではないかと疑い始めた矢先、第二の被害者が現れる・・・というようなサスペンス。
しかし「妄想」を掲げる以上このままでは済みません。スタートの時点では犯人は月子の妄想なのか、それとも実在なのか(実在ならば誰なのか)という視点で視聴者は見ています。その謎解決のために映像の全てがヒントや伏線になっているはず・・・それがサスペンスの見方です。しかし、第1話の途中であるモノがさも当然とばかりに動き出すのです。
この瞬間私は軽くめまいがしたのですが、これでもう視聴者は映し出される映像すら信じられなくなります。物語自体が妄想であっては、謎を解こうとする行為自体が全く無意味化してしまいます。それでも謎を解こうとする警察と、どんどん拡がっていく妄想。そして気付けば物語は全く違う次元に・・・。

書いた自分でもナンノコッチャというあらすじですが、そうなんです(笑)。物語全体が妄想のようで、もう説明のしようがありません。とにかく脳みそ揺さぶられるのは必至。絵や動きも質が高いですし(シンプルな顔立ちなのに、月子が可愛くうえ、どこかエロい)、タダモノじゃない作品です。是非いっぺんに通して観ることをオススメします。オープニング目当てだけでも借りる価値あり。