米田康人
@abeakiesaiteiさんのツイート。
――まさか本気で稲田とか、今村とか、学芸員は癌とか詐欺師籠池とか、こんなもんで現政権の支持率が落ちるはずとか思ってる日本人、いませんよね?
こんなことで内閣が信任されない事態になったら土民レベルの国民ですよ〔17:59 - 2017年4月17日 〕—―
すごいよな。
こんなもので、わが社は、
倒産しない。
こんなもんで、
戦争になるはずがない。こんなもので…
関係ないけど、
昔あった米国ドラマ
「パパは何でも知っている」を
思い出した。
このメッセージの背後には
(もし、パパに知らないことがあると思うのなら、
お前は、土民レベルだよ)
という脅しがあるような。
何だか
どんな政治的スキャンダルが続いても、
倒閣があり得ない
と固く信じているようだ。
たとえば、
小田嶋隆@tako_ashiさんは、
こう仰る。
――不祥事や不適切発言を理由に大臣が辞めなくなったのは、「大臣を辞めさせて責任を取らせるとかえって政権の支持率が下がる」ということを政権の中枢にいる人間たちが学習したからだよね。〔11:35 - 2017年4月17日 〕—―
非情に理知的な分析だ。
そりゃそうかもな、と思う。
しかし、内閣支持率の問題と当該スキャンダル大臣が辞任に相応しいかどうかとは、
一応は、無関係だろ。
閣僚の不祥事だけでなく、
内閣の体質のようなものに対する反発も
考慮すべきだ。
我々は、
安倍政権の目指す「戦後レジームからの脱却」が
何を意味するか、
その具体的なさまが見えてきた。
それに対する
判断が求められていると感じる。
その解を求めず、
このままやり過ごそうとしているのが
現政権だと思う。
駒かな意見の違いはあるだろう。
しかし、大勢の意見としては
そういう
「国民の意見は求めてません」
という態度に対する
生理的嫌悪感が強いと思う。
そりゃ、
国民主権の立場を守る前提で考えれば、
そうなるだろう。
しかし、多くの知識人は、
この見方を受け入れまいとして踏ん張っているように見える。
ちなみに、
冒頭に紹介したツイートの宛先である
渡辺輝人@nabeteru1Q78さんは、
こんなことを言っている。
――安倍内閣の支持率が下がらない要因として思いつくいくつかの要素。
(1)NHKを支配下に置いたこと。安倍政権前後では明らかに報道姿勢が違う。
(2)自民党内に対抗軸がない。これは小選挙区制+執行部の公認権の問題もあるが、本質的には自民党の足腰が弱ってるせい。〔17:40 - 2017年4月17日 〕—―
あるいは、
――安倍政権を支える側のモラルの崩壊も、支持率が下がらない要因の一つでしょうねえ。よく言われる「一昔前なら、内閣が吹っ飛んでいた」という話。この場合の「内閣が吹っ飛ぶ」は、自民党政権の終わりを意味していたわけではなかった。〔18:33 - 2017年4月17日 〕—―
上のツイートにある(2)の「自民党内に対抗軸がない」は、
支持率が下がらない要因ではなく、
下る要因ではないか。
また、下のツイートにある「モラルの崩壊」も同じだろう。
支持率低下の要因にしかならないのじゃないか。
社会全体が「軸」を失くし、「モラル」崩壊を起こしているから、
それゆえの非難が
安倍内閣に向かわなくなっているというなら、
事の良しあしは別にして
分からなくはないが――。
しかし、漠然としていても軸はあるだろう。
「モラルの崩壊」は、
どこまでも安倍政権の体質だと思う。
世間からずれている。
感覚的には
松井計
@matsuikeiさんの
――永遠の権力なんてないのにな。ここまで人に恨みを買ってて、後が怖いとは思わないのかね?浜渦を見ろよ。⇒今井尚哉首相秘書官が朝日新聞番記者をいじめ辞めさせた事件(NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース(下記〔資料〕参照)〔22:39 - 2017年4月17日 〕—―
という意見に共鳴している。
どういう理由でか、
今は庶民の“恨み”が表面化していないだけの問題と思う。
僕に言わせれば、
その理由は、
権力側からのマスコミ操作の一顕現でしかないと考える。
知識人たちは、
要因として思いつく“いくつかの要素”などと
賢ぶって
判断を相対化してしまうものだから、
結果として、
分析を避けたにも等しくなるのだろう。
それとも、
日本の知識人には、
政府と
国民は違うのに、
別個に考察しえない限界でもあるのか。
〔資料〕
「今井尚哉首相秘書官が朝日新聞番記者をいじめ辞めさせた事件」
NEWS ポストセブン 4/17(月) 7:00配信
☆ 記事URL:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170417-00000007-pseven-soci&p=1
森友学園問題で政府の説明が不十分だと答えた人が約8割に達したという世論調査の結果を引き合いにした野党の質問に、安倍晋三首相は「誠実に答弁している」と答えたあと、こう付け加えた。
「ちなみに、内閣支持率は53%でした」
いくら批判を浴びても支持率は落ちていないとアピールしたわけだ。実際にその後、米ドナルド・トランプ大統領がシリアを攻撃、さらに北朝鮮への攻撃まで示唆すると一気に森友学園問題は沈静化してしまった。
「大きな声では言えないが、メディアの関心が朝鮮半島情勢に移ったことも政府にとってはツイていた。これで北朝鮮にトランプ政権と足並み揃えて対処する姿勢を見せれば、微減した支持率も回復する」(官邸関係者)
緊張感に包まれた国際情勢をよそに官邸内に平和ボケムードが漂うなか、我が世の春を謳歌しているのが、今井尚哉・首相秘書官だ。
今井氏は経産省出身で第一次政権時代から安倍氏を支え、第二次政権発足以降はアベノミクスから一億総活躍社会、原発推進に至るまで政権の目玉政策を一手に担ってきた。外交においてもトランプ政権やロシアのプーチン政権とのパイプ役を務めるなど、安倍首相が今最も信頼を寄せる「総理の懐刀」である。
それゆえに、安倍首相の動向や本音を知りたいマスコミ各社はこぞって今井氏に群がり、エース級を番記者として張り付けている。
しかし今井氏、記者たちにとっては“取り扱い注意”の人物なのだという。番記者を経験した政治部記者が語る。
「今井邸の前には毎晩、番記者たちが10人以上も集まります。今井さんは気分にムラがあって、機嫌がいいとけっこう話してくれるのですが、へそを曲げると面倒。最近も、ある記者が寒さに耐えきれずコートのポケットに手を入れていたところ、今井さんが突然、『なんて無礼な奴だ! もうヤメだ!』とキレて家に引っ込んでしまった。
いつもこの調子だから、記者がみんな今井さんの顔色を窺っている。彼もそれを知っているものだから、記者を小馬鹿にしたり、政治家のことも安倍さん麻生さんクラス以外は呼び捨てにしたりすることもあるんです」
そんな今井氏の番記者をこの3月をもって外れたのが、朝日新聞のS記者である。S記者の交代をめぐっては、今井氏とのこんな因縁があった。朝日関係者が言う。
「Sは昨年8月に今井さんの番記者になったばかり。番記者は最低でも1年は続けるのが普通なので、かなり異例の交代です。理由は、今井さんがSと口をきこうとしなかったからです。初日からこの前の3月末まで8か月間、ひと言もです。
今井さんは記者陣に向かって『朝日がいる限り、オレは喋らん』と宣言し、Sがいないときは囲み取材に応じるのに、Sの姿を見かけただけで素通りして家に入ってしまう。仕舞いには他社の記者がSの姿を見ただけで『今日はダメだな』と帰ってしまっていたぐらいです」
いったいなぜこのようなことになったのか。
◆「もう来ないでくれる?」
S記者は、2015年9月に可決された安保法案について深く取材しており、法案の疑問点に関する特集記事を何本も書いていた。そこでS記者は安保法案可決後、安倍首相が祖父の岸信介・元首相と父の安倍晋太郎・元外相の墓参りをした際、「安保法案の成立を報告したのですか?」と首相に声をかけたという。
これが、今井氏の逆鱗に触れたようだ。
「今井さんは『墓参りの場で無礼極まりない』と怒っていた。それでSが番記者になったときに、誰かがそのことを今井さんに告げ口したそうなんです。“あのときの記者ですよ”と。
それから今井さんはSを無視し続けたんです。朝日としてもそのことは把握していましたが、Sの質問は記者として当然のこと。ここで交代したら嫌がらせに屈することになると、Sをみんなで励ましていたんです。Sも腐らず、無視されても夜回りを続けていました」(前出・朝日関係者)
他社の番記者たちも、当初はS記者に同情していたという。しかし冷戦が長期化する中で、やがて“情勢”が変わってゆく。
今年1月、S記者は某新聞社とテレビ局の番記者2人に「ちょっと話があるから来てほしい」と呼び出されたという。場所は官邸の記者会見場の中にある、各テレビ局の個室ブースだった。そして2人はS記者にこう告げたのだという。
「君が来ると今井さんが対応してくれないから、もう来ないでくれる? その代わり、(今井氏とのやり取りを記した)メモは回すからさ」
S記者はショックを受けたという。
「Sはそれ以来、意気消沈して夜回りをやめてしまいました。上司も、これ以上は辛いだろうと4月から別の記者に交代した。すると、今井さんは朝日にも対応するようになり、他社もそれを見てホッとしたそうです。結局、ウチも含め、みんな今井さんの言いなりになってしまったということです」(同前)
前出の番記者経験者は、こう疑問を呈す。
「S記者に詰め寄った2人の記者は、ともに今井さんと付き合いの長いベテランで、これ以上取材できないのは困ると思ったのでしょう。今井さんの気持ちを“忖度”した部分もあるのかもしれない。しかし、S記者は当然の取材活動をしているだけで、問題があるとすれば今井さんのほう。それを、他社の先輩記者たちで囲んで現場に来させないようにするなんておかしいですよ。まして交換条件として他社にメモを渡すなんて……」
疑問に思う記者はいても、今井氏の機嫌を損なうのが怖くて誰も言い出せない。やはり安倍官邸を増長させているのは、ほかならぬ記者クラブメディアなのである。
◆本誌・週刊ポスト記者の取材には……
S記者に電話すると、人事については「持ち場を決めるのは会社なので、私には分かりかねます」と言う(朝日の広報部は「定期的な部内の配置換え」だと説明)。
しかし、本誌記者が「今井氏はSさんをずっと無視したり、Sさんの姿を見かけると囲み取材に応じなかったりと、色々と嫌がらせをしたと聞いています。他に何かひどい仕打ちをされたことはありますか?」と聞くと、
「他には特段ありませんよ。たぶん今おっしゃったような話が全てかなと思います」
と本音を垣間見せた。一方で、他社の記者からの呼び出しは否定した。
では当事者の今井氏はどう答えるのだろうか。今井邸の前で、番記者が並ぶ夜ではなく早朝に今井氏本人を直撃した。「週刊ポストです。朝日新聞の番記者の件で……」と話しかけるも、今井氏は言葉を発するどころか一瞥することもなく、車に乗り込み去って行った。こんな扱いを8か月以上受けていたとすれば、S記者への同情も禁じ得ない。
その日は雨。傘を忘れた本誌記者のために傘を貸してくれた今井氏のドライバーだけが、優しかった。
※週刊ポスト2017年4月28日号
@abeakiesaiteiさんのツイート。
――まさか本気で稲田とか、今村とか、学芸員は癌とか詐欺師籠池とか、こんなもんで現政権の支持率が落ちるはずとか思ってる日本人、いませんよね?
こんなことで内閣が信任されない事態になったら土民レベルの国民ですよ〔17:59 - 2017年4月17日 〕—―
すごいよな。
こんなもので、わが社は、
倒産しない。
こんなもんで、
戦争になるはずがない。こんなもので…
関係ないけど、
昔あった米国ドラマ
「パパは何でも知っている」を
思い出した。
このメッセージの背後には
(もし、パパに知らないことがあると思うのなら、
お前は、土民レベルだよ)
という脅しがあるような。
何だか
どんな政治的スキャンダルが続いても、
倒閣があり得ない
と固く信じているようだ。
たとえば、
小田嶋隆@tako_ashiさんは、
こう仰る。
――不祥事や不適切発言を理由に大臣が辞めなくなったのは、「大臣を辞めさせて責任を取らせるとかえって政権の支持率が下がる」ということを政権の中枢にいる人間たちが学習したからだよね。〔11:35 - 2017年4月17日 〕—―
非情に理知的な分析だ。
そりゃそうかもな、と思う。
しかし、内閣支持率の問題と当該スキャンダル大臣が辞任に相応しいかどうかとは、
一応は、無関係だろ。
閣僚の不祥事だけでなく、
内閣の体質のようなものに対する反発も
考慮すべきだ。
我々は、
安倍政権の目指す「戦後レジームからの脱却」が
何を意味するか、
その具体的なさまが見えてきた。
それに対する
判断が求められていると感じる。
その解を求めず、
このままやり過ごそうとしているのが
現政権だと思う。
駒かな意見の違いはあるだろう。
しかし、大勢の意見としては
そういう
「国民の意見は求めてません」
という態度に対する
生理的嫌悪感が強いと思う。
そりゃ、
国民主権の立場を守る前提で考えれば、
そうなるだろう。
しかし、多くの知識人は、
この見方を受け入れまいとして踏ん張っているように見える。
ちなみに、
冒頭に紹介したツイートの宛先である
渡辺輝人@nabeteru1Q78さんは、
こんなことを言っている。
――安倍内閣の支持率が下がらない要因として思いつくいくつかの要素。
(1)NHKを支配下に置いたこと。安倍政権前後では明らかに報道姿勢が違う。
(2)自民党内に対抗軸がない。これは小選挙区制+執行部の公認権の問題もあるが、本質的には自民党の足腰が弱ってるせい。〔17:40 - 2017年4月17日 〕—―
あるいは、
――安倍政権を支える側のモラルの崩壊も、支持率が下がらない要因の一つでしょうねえ。よく言われる「一昔前なら、内閣が吹っ飛んでいた」という話。この場合の「内閣が吹っ飛ぶ」は、自民党政権の終わりを意味していたわけではなかった。〔18:33 - 2017年4月17日 〕—―
上のツイートにある(2)の「自民党内に対抗軸がない」は、
支持率が下がらない要因ではなく、
下る要因ではないか。
また、下のツイートにある「モラルの崩壊」も同じだろう。
支持率低下の要因にしかならないのじゃないか。
社会全体が「軸」を失くし、「モラル」崩壊を起こしているから、
それゆえの非難が
安倍内閣に向かわなくなっているというなら、
事の良しあしは別にして
分からなくはないが――。
しかし、漠然としていても軸はあるだろう。
「モラルの崩壊」は、
どこまでも安倍政権の体質だと思う。
世間からずれている。
感覚的には
松井計
@matsuikeiさんの
――永遠の権力なんてないのにな。ここまで人に恨みを買ってて、後が怖いとは思わないのかね?浜渦を見ろよ。⇒今井尚哉首相秘書官が朝日新聞番記者をいじめ辞めさせた事件(NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース(下記〔資料〕参照)〔22:39 - 2017年4月17日 〕—―
という意見に共鳴している。
どういう理由でか、
今は庶民の“恨み”が表面化していないだけの問題と思う。
僕に言わせれば、
その理由は、
権力側からのマスコミ操作の一顕現でしかないと考える。
知識人たちは、
要因として思いつく“いくつかの要素”などと
賢ぶって
判断を相対化してしまうものだから、
結果として、
分析を避けたにも等しくなるのだろう。
それとも、
日本の知識人には、
政府と
国民は違うのに、
別個に考察しえない限界でもあるのか。
〔資料〕
「今井尚哉首相秘書官が朝日新聞番記者をいじめ辞めさせた事件」
NEWS ポストセブン 4/17(月) 7:00配信
☆ 記事URL:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170417-00000007-pseven-soci&p=1
森友学園問題で政府の説明が不十分だと答えた人が約8割に達したという世論調査の結果を引き合いにした野党の質問に、安倍晋三首相は「誠実に答弁している」と答えたあと、こう付け加えた。
「ちなみに、内閣支持率は53%でした」
いくら批判を浴びても支持率は落ちていないとアピールしたわけだ。実際にその後、米ドナルド・トランプ大統領がシリアを攻撃、さらに北朝鮮への攻撃まで示唆すると一気に森友学園問題は沈静化してしまった。
「大きな声では言えないが、メディアの関心が朝鮮半島情勢に移ったことも政府にとってはツイていた。これで北朝鮮にトランプ政権と足並み揃えて対処する姿勢を見せれば、微減した支持率も回復する」(官邸関係者)
緊張感に包まれた国際情勢をよそに官邸内に平和ボケムードが漂うなか、我が世の春を謳歌しているのが、今井尚哉・首相秘書官だ。
今井氏は経産省出身で第一次政権時代から安倍氏を支え、第二次政権発足以降はアベノミクスから一億総活躍社会、原発推進に至るまで政権の目玉政策を一手に担ってきた。外交においてもトランプ政権やロシアのプーチン政権とのパイプ役を務めるなど、安倍首相が今最も信頼を寄せる「総理の懐刀」である。
それゆえに、安倍首相の動向や本音を知りたいマスコミ各社はこぞって今井氏に群がり、エース級を番記者として張り付けている。
しかし今井氏、記者たちにとっては“取り扱い注意”の人物なのだという。番記者を経験した政治部記者が語る。
「今井邸の前には毎晩、番記者たちが10人以上も集まります。今井さんは気分にムラがあって、機嫌がいいとけっこう話してくれるのですが、へそを曲げると面倒。最近も、ある記者が寒さに耐えきれずコートのポケットに手を入れていたところ、今井さんが突然、『なんて無礼な奴だ! もうヤメだ!』とキレて家に引っ込んでしまった。
いつもこの調子だから、記者がみんな今井さんの顔色を窺っている。彼もそれを知っているものだから、記者を小馬鹿にしたり、政治家のことも安倍さん麻生さんクラス以外は呼び捨てにしたりすることもあるんです」
そんな今井氏の番記者をこの3月をもって外れたのが、朝日新聞のS記者である。S記者の交代をめぐっては、今井氏とのこんな因縁があった。朝日関係者が言う。
「Sは昨年8月に今井さんの番記者になったばかり。番記者は最低でも1年は続けるのが普通なので、かなり異例の交代です。理由は、今井さんがSと口をきこうとしなかったからです。初日からこの前の3月末まで8か月間、ひと言もです。
今井さんは記者陣に向かって『朝日がいる限り、オレは喋らん』と宣言し、Sがいないときは囲み取材に応じるのに、Sの姿を見かけただけで素通りして家に入ってしまう。仕舞いには他社の記者がSの姿を見ただけで『今日はダメだな』と帰ってしまっていたぐらいです」
いったいなぜこのようなことになったのか。
◆「もう来ないでくれる?」
S記者は、2015年9月に可決された安保法案について深く取材しており、法案の疑問点に関する特集記事を何本も書いていた。そこでS記者は安保法案可決後、安倍首相が祖父の岸信介・元首相と父の安倍晋太郎・元外相の墓参りをした際、「安保法案の成立を報告したのですか?」と首相に声をかけたという。
これが、今井氏の逆鱗に触れたようだ。
「今井さんは『墓参りの場で無礼極まりない』と怒っていた。それでSが番記者になったときに、誰かがそのことを今井さんに告げ口したそうなんです。“あのときの記者ですよ”と。
それから今井さんはSを無視し続けたんです。朝日としてもそのことは把握していましたが、Sの質問は記者として当然のこと。ここで交代したら嫌がらせに屈することになると、Sをみんなで励ましていたんです。Sも腐らず、無視されても夜回りを続けていました」(前出・朝日関係者)
他社の番記者たちも、当初はS記者に同情していたという。しかし冷戦が長期化する中で、やがて“情勢”が変わってゆく。
今年1月、S記者は某新聞社とテレビ局の番記者2人に「ちょっと話があるから来てほしい」と呼び出されたという。場所は官邸の記者会見場の中にある、各テレビ局の個室ブースだった。そして2人はS記者にこう告げたのだという。
「君が来ると今井さんが対応してくれないから、もう来ないでくれる? その代わり、(今井氏とのやり取りを記した)メモは回すからさ」
S記者はショックを受けたという。
「Sはそれ以来、意気消沈して夜回りをやめてしまいました。上司も、これ以上は辛いだろうと4月から別の記者に交代した。すると、今井さんは朝日にも対応するようになり、他社もそれを見てホッとしたそうです。結局、ウチも含め、みんな今井さんの言いなりになってしまったということです」(同前)
前出の番記者経験者は、こう疑問を呈す。
「S記者に詰め寄った2人の記者は、ともに今井さんと付き合いの長いベテランで、これ以上取材できないのは困ると思ったのでしょう。今井さんの気持ちを“忖度”した部分もあるのかもしれない。しかし、S記者は当然の取材活動をしているだけで、問題があるとすれば今井さんのほう。それを、他社の先輩記者たちで囲んで現場に来させないようにするなんておかしいですよ。まして交換条件として他社にメモを渡すなんて……」
疑問に思う記者はいても、今井氏の機嫌を損なうのが怖くて誰も言い出せない。やはり安倍官邸を増長させているのは、ほかならぬ記者クラブメディアなのである。
◆本誌・週刊ポスト記者の取材には……
S記者に電話すると、人事については「持ち場を決めるのは会社なので、私には分かりかねます」と言う(朝日の広報部は「定期的な部内の配置換え」だと説明)。
しかし、本誌記者が「今井氏はSさんをずっと無視したり、Sさんの姿を見かけると囲み取材に応じなかったりと、色々と嫌がらせをしたと聞いています。他に何かひどい仕打ちをされたことはありますか?」と聞くと、
「他には特段ありませんよ。たぶん今おっしゃったような話が全てかなと思います」
と本音を垣間見せた。一方で、他社の記者からの呼び出しは否定した。
では当事者の今井氏はどう答えるのだろうか。今井邸の前で、番記者が並ぶ夜ではなく早朝に今井氏本人を直撃した。「週刊ポストです。朝日新聞の番記者の件で……」と話しかけるも、今井氏は言葉を発するどころか一瞥することもなく、車に乗り込み去って行った。こんな扱いを8か月以上受けていたとすれば、S記者への同情も禁じ得ない。
その日は雨。傘を忘れた本誌記者のために傘を貸してくれた今井氏のドライバーだけが、優しかった。
※週刊ポスト2017年4月28日号