のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

アンジェリーナ・ジョリー監督作『アンブロークン』って、どんな映画?

2015年01月18日 06時13分55秒 | 宗教




この映画、

保守系メディアが

『アンジェリーナ・ジョリーが反日的な映画を監督している』などと騒いだため、

いまのところ、公開予定がないらしいです。

映画のテーマは、

「アンブロークン」というタイトルからも分るように

壊されない心です。

すなわち、挫けないってことです。

然るに、

どういうところが反日的とされたかと言うと、

原作となっているノンフィクションの中に次のようなくだりがあるからなようです

すなわち、

『戦争で捕まった捕虜たちは、日本で医学的実験での過程で殺されたり、儀式としての食人で食われた。生きたまま』

という記述です。

このたった一行のため、

週刊文春などがこの映画を叩いているようです。

町山智浩氏が

TBSラジオ『たまむすび』という番組の中で話されているようです。

サイト「miyearnZZ Labo」に

書き起こしがあります。

☆ 記事URL:http://miyearnzzlabo.com/archives/22240

これ、虚偽の記述ならともかく、

事実らしいです。

まず、

前段の「戦争で捕まった捕虜たちは、日本で医学的実験での過程で殺されたり」

という件については、

九州大学で

「8人の米軍捕虜が生きたまま内臓を取られて、どうやって死んでいくか?」とか、

「生きたまま血管を流されて、どのぐらい出血すると死ぬか?」

という人体実験が実際やられたらしいです。

後段の「儀式としての食人」という件についても

否定できないようです。

「小笠原事件」と呼ばれているケースで、

食人の記録があるようです。

どんな事件かと言うと、

捕虜だった米軍のパイロット5人を殺して、

その肉を

宴会の余興として

日本兵に食べさせたというものです。

もっとも、「生きたまま」ではないですから、

この点も含めて

食人を言うなら誤りです。

ただ、放映反対を訴える人たちが

問題にする

食人の場面など、

映画の物語とは無関係ですし、

映像化されていません。

物語は、

ベルリンオリンピックのとき、

陸上選手として走り、

金メダルを獲得したザンペリーニ氏を中心に進みます。

ベルリンオリンピックの後、

戦争となり、

南太平洋で爆撃機乗りになります。

ところが、飛行機の性能が悪かったらしく、

エンジンの欠陥で墜落しちゃいます。

その後、

救命ボートに乗って太平洋を漂流します。

47日間漂流し、

ようやく救助されます。

しかし、まんの悪いことに

助けた船は、

日本の軍艦だったのです。

東京の捕虜収容所(大森収容所)に連行されます。

そこで、

ザンペリーニ氏は、

その収容所を仕切っていた渡邊軍曹から

3年に及ぶ虐待、拷問を受けます。

戦後、

米国に戻ってからも

傷が癒えず、

「殺してやる!」と思いながら生活していたそうです。

今で言うPTSDです。

酒に溺れて、奥さんにも暴力をふるっていたと言います。

そんなわけで、

映画は、

日本の敗戦と同時に終わりますが、

本当の地獄は、

そこから始まったわけです。

映画のラストに、

日本の人たちに拍手されながら

長野オリンピックでザンペリーニさんが走る映像が出てくるそうです。

そのシーンを見ても分りますように、

傷を癒したんです。

だからこそ

映画のタイトルが「アンブロークン」、

すなわち、「敗れざる者」になっているのでしょう。

どうして、

自分の憎しみを克服し得たのか。

町山氏の言葉を借りれば、

――結局ものすごい憎しみがあると、自分がいちばん辛いんで。

そっから脱出するには、

相手を許すしかない。敵を許すしかないんだという――

ことですね。

現在、兵庫県児童虐待等対応専門アドバイザーの

島田妙子さんが

自身の親の虐待につき、

「誰かのために生かす」というやり方で

克服したことを

PHP1月号(創刊800号)で述べておられます。

そのこと、

思い出しました。

島田さん、ツイートされてます。

ご興味があれば、

フォローされたらいいかなと思います。

☆ 島田妙子 @ShimadaTaeko さんアカウント:https://twitter.com/ShimadaTaeko

さて、思うに、

虐待を受けたものが直面する最大の難問は、

自分をイジメ抜く人間の

行動の背景になっているものです。

ザンペリーニ氏の場合、

一応は、戦争遂行の戦略上、

「彼を屈服させることによって、英雄だったり有名人だから、他の捕虜も全部屈服させるっていうことができる」

(上掲、町山さん発言)

というメリットがあるのです。

もし、屈服すれば、

「ラジオに出して、

プロパガンダ放送でアメリカ向けに『私は悪いことをしました』っていう反省放送をさせる」

という趣旨です。

しかし、それだけで理解困難な苛め方をされた場合、

被害者は、

そのような戦略的説明では納得できません。

事実、ザンペリーニ氏を虐待した

渡邊軍曹(当時)は、

「散々虐待した後、夜に捕虜をですね、優しく、『俺の部屋に来いよ』って呼ぶんですよ。それで、ビールをあげたり、お菓子をあげたりするんですよ」(上掲、同人の発言)

というから、

かなり謎な性格をされてます。

「ジキル氏とハイド氏」のような態度を、

なぜ取ったのか、

ザンペリーニ氏が納得するのに要した時間は、

相当なものでしょう。

傷ついた心の傷は癒えるにしたがって、

知りたいと思いますよ。

その点、

これは救いかな

思ったのは、

捕虜に激しい暴力を振るっていた渡邊睦裕氏が

1998年、

CBSテレビのインタビューに出演して

「私はザンペリーニを虐待したことを認めます」

と述べたことです。

下に、

そのときの様子を録画した動画をアップしておきます。



ここまで背景を見ながら思うに、

この映画のテーマは、

「赦し」ですね。

なぜ、日本で放映しないのでしょうか。

過去の歴史と向き合う

勇気がなければ、

また、同じ失敗をすることでしょう。

20年前の1月17日、

もう昨日ですが、

ガス室否定論を載せた『マルコポーロ』1995年2月号の発売日でもあったようです

(能川元一‏@nogawam さんのツイート〔13:14 - 2015年1月17日 〕)。



「『あれはねつ造だ』だという事実の捏造、

『あれはデマだ』だというデマ、

『あいつは反日』という自己紹介等々、

安倍某の真似をして、

白を黒、黒を白と言いくるめるために嘘つくの、

もう本当、いい加減にしてよ」と、

心の底から思います。

最後に、ザンペリーニ氏の生涯を追った

米国のドキュメンタリー番組を紹介します。

この動画の

33:10~は、

是非、見て下さい。

長野オリンピックのとき、

にこにこしながら

聖火ランナーとしては知っている姿が

写ります。

この人が日米の架け橋である証でしょう。

渡邊氏は

最後までザンペリーニに会おうとなさらなかったのですね。

せっかく

自分の罪と向き合ういい機会だったのに、

それを避けたまま

死んで行かれたのは残念なことです。




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