夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

フリーダム・ライターズ

2007年11月08日 | は行の映画
Story
様々な人種が通うウィルソン高校203教室に、新任の国語教師エリン(ヒラリー・スワンク)が赴任した。初登校日、教壇に立ったエリンを完全に無視し、喧嘩を始める生徒たち。これまで、家の中でも外でも危険に晒されて生きて来た生徒たちに、真珠のネックレスをした白人の教師は敵でしかなかった。エリンは、自分の小遣いで生徒全員にノートを買い与え、自分のことを書くように伝える。書く事を覚えた生徒たちは、エリンに少しずつ心を開いていく…(goo映画より)
2007年/アメリカ/リチャード・ラグラヴェネーズ監督作品





評価 ★★★★

2度のアカデミー賞主演女優賞に輝いたヒラリー・スワンクが製作総指揮を執った初めての作品。

オスカー女優のヒラリー・スワンクが主演を務め、更に製作総指揮を執った作品ともなれば、おそらく間違いはないだろうと思って観に行ったのですが、思っていた以上に素晴らしい作品でした。一言で言ってしまえば、学校から見放された非行少年少女たちを熱血教師エリンが救い出す物語ですが、生徒たちが成長していく過程がとても丁寧に描かれているので、爽やかな感動を呼ぶ作品に仕上がっています。

この物語が実話というからまたすごい!こんなエリンのような先生って実在するんですね。教師たちからはすでに見放されているような学校で、ただ一人、しかも何の経験もない新任教師が、203教室の生徒たちに教育の大切さを実感してもらおうと、孤軍奮闘する姿がとても感動的でした。
例えば、エリンは生徒たちに日記帳を書かせるのですが、彼らの貧困や暴力に染まった日々の暮らしを知ることで、生徒一人一人の心の痛みを知ることになります。そこで、本も買えない生徒たちのために、エリンは教材として『アンネの日記』を買い与えたり、本を読んで興味を持った生徒たちのために、ホロコースト博物館へ見学旅行をさせてあげるのです。その他にも、生徒たちをグループごとにディスカッションさせたりと、あらゆる方法を用いて、彼らに学ぶことの楽しさ、大切さを分かってもらおうと努力します。

こんな彼女の様々な努力が実を結び、やがて生徒たちはエリンに心を開いていって、今まで知らなかった知識への欲求を高めていきます。私が何より感動したのは、貧困や暴力で生きる希望を見出せなかった生徒たちにとって、この203教室の存在が、唯一の慰め、憩いの場となったことです。203教室の生徒たちがお互いに辛い現実を分かち合い、机をならべて勉学に励むことで、最初はあんなにバラバラだった彼らに一体感が生まれたんでしょうね。様々な人種の壁を乗り越えて、彼らの間に友情というか、同士のような感情が芽生えていったのを観てると、なんだか感激して目頭が熱くなりました。また、彼らをまとめ上げたエリン先生もすごいです!

ただ、エリンは既婚者なので、仕事に没頭するあまり、家庭の方がおろそかになり、ついには離婚という哀しい現実を迎えてしまいます。女性が仕事と家庭を両立させるのは、やっぱり容易なことではないんですね。どちらも上手くバランスが保てればいいんでしょうけど、仕事の方に肩入れしすぎると、旦那さんによっぽどの理解がない限り、家庭生活は続かないのだなと、この映画を観て改めて考えさせられました。

最後に、エリン先生のおかげで、実在の203教室の生徒たちのほとんどが大学に進学したそうです。また、彼らの卒業までの高校生活を綴った日記が、この映画のタイトルでもある『フリーダム・ライターズ』として出版されて、大きな反響を呼び、ベストセラーになりました。
今、日本でもゆとり教育とか、学級崩壊などの様々な教育問題が提起されていますよね。この映画は、ぜひ教育現場で働く多くの人に観てほしい作品だな、と思いました。エリン先生のように、どんな困難にぶつかっても、諦めないで前に進む勇気があれば、道は開けるということを教えてくれている映画だと思います。





評価 ★★★★

実話を基にして作られた教育映画の感動作!

これからの差別は新しい尺度で行われるのか?というのが映画を観終わったあとの感想でした。
エリンの父親は若い頃公民権運動に携わっていました(スコット・グレンがいい味を出していました)。人々の無知も手伝ってかつては肌の色で人間の優劣を決めつけていましたが、これからは人種を問わず、勝ち組と負け組で線が引かれるのではないか、そんなことを示唆する内容です。
上昇志向の人間は人種を問わず成功して行く一方で、エリンの元を去った夫のスコットのように、たとえ白人であっても脱落するものは出てくるでしょう。彼は今後、ホワイトトラッシュへの道を歩む可能性があります。エリンの生徒のなかに一人だけ白人の少年が混ざっていたのは暗示的で、彼の家族も運が悪かったのかどうか分かりませんが、貧困地区を脱出する機会を逸してしまったのでしょう。先に観た「レッスン!」でもそうでしたが、貧困地区の学校にあらゆる人種の人間が集まるのは(幸い日系人はいないようでしたが)日常風景になっているようで興味深いものがありました。
良き師に巡り会えた少年少女達が、荒んだ生活と縁を切る勇気を与えられて、若者本来の輝きを取り戻していく姿が感動的でしたが、その反面、上に挙げたような状況がこれからますます際立って行くのではないか。そんなことを考えさせられる映画でした。


映画『フリーダム・ライターズ』公式サイト


(「フリーダム・ライターズ」2007年8月 名古屋 伏見ミリオン座にて鑑賞)

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4 コメント

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こんばんは! (アイマック)
2007-11-15 23:52:20
実話というのが説得力あります。
人種差別は根が深いものだとつくづく感じますよ。
辛い現実を乗り越えるのは相当なパワーが必要と思われます。

エリンの誠実な姿、生徒たちがかわっていく姿に感動しました。
これが真の教育なんですね。
旦那さんにもう少し理解があったらと思うけど、ここまでのめり込んでしまうと家庭も疎かになってしまうも無理はないなあ。
彼女も希望に燃えてたし若かったから、縁がなかったということで・・
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コメントありがとう! (nyanco)
2007-11-19 14:58:40
アイマックさん、こんにちは♪
早速、コメントありがとうございます~。

私もこの映画を観て、生徒たちが変わっていく姿には感動しました。
本当に教育の大切さを感じます!
もう少し家庭とのバランスを上手く保てたら良かったんでしょうけど、ここまでのめり込んでしまうと、やはりしょうがないんでしょうね。。
人種差別や貧困などの背景がきちんと描かれていたせいか、とても説得力のある内容になっていて、満足できる作品でした。
返信する
素晴らしい作品ですね (せつら)
2007-11-19 21:16:49
今晩は、TBエコーありがとうございます。

エリンの信念が素晴らしかったですね、あきらめない気持ち
そして行動力これではあの生徒達も信頼するはずですよね
様々な人種で固まった教室を家族にしてしまうなんて素晴らしいです。
印象的だったのはホロコーストの実情を見学に行ったシーンです
返信する
せつらさんへ (nyanco)
2007-11-21 20:11:22
初めまして!nyancoと申します。
こちらこそ、コメントありがとうございました。

本当に、様々な人種で固まった生徒達を家族にしてしまうなんて素晴らしいですね。
エリンの揺るがない信念の強さと、そして行動力にはとても感心させられました。
この物語が実話というからすごいですね!
ホロコースト博物館のシーンは、私もなんだか切なくなりました。。
その見学から実際にアンネをかくまった人を学校に招待するようにまでなって、彼らの成長ぶりがとてもほほえましかったです。
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